テラーノベル
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アクラから帰った翌日の22日、朝8時30分過ぎ。
冒険者ギルドの面談室で、クリスタさんがミーニャさん、俺、ジョンに『北西部で出来る限り早く解決が望まれる依頼3件』について説明した後。
「ですがジョンさんはC級冒険者対策中ですし、ミーニャも明日から10日間休暇を取ります。また私も業務の都合で、3ヶ月から半年程度の間、ドーソンを留守にすることになると思います」
なんてことを言ってきた。
思わぬ話が出てきた、という訳ではない。
実は昨晩、例によって魚介類の匂いを嗅ぎつけてやってきたミーニャさんに、ある程度のことは聞いている。
「あれでも冒険者ギルドの偉い人ニャので、本部での業務が結構あるのニャ。本人は現場で解決困難ニャ依頼を片付けたり、冒険者の初心者講習で即戦力を拾い上げたりする仕事を好んでいるのニャ。けれどそうも言っていられニャい場合も結構あるのニャ。あとドーソン以外の冒険者ギルドの初心者講習も一通り回ると思うニョで、ドーソンに戻るのは今の初心者講習が終わった頃にニャると思うのニャ」
ミーニャさんがいたおかげで昨晩、カラマロを100匹近く消費してしまったけれど、それは別問題として。
クリスタさんの話は続いている。
「ですので私の代わりになる者を1名、ドーソンへ呼ぶ予定です。攻撃魔法中心のB級冒険者持ちですが、彼女なら私の代役として問題ない実力がありますから」
ミーニャさんの表情が、わかりやすく変化した。
この冒険者を呼び寄せる件は、ミーニャさんの予測の範囲外で、なおかつ望まないものだった様だ。
「でも飛龍が最低で20匹は群れているニャんて依頼で、戦力にニャる魔法使いはそうそういニャいニャ。それもわざわざ西部の稼げニャい場所まで来てくれる冒険者ニャんて、ほとんどいニャいと思うのニャ」
ミーニャさん、抵抗する。
「ええ。ですから冒険者ギルド員で、討伐業務を兼務している者を派遣するつもりです。候補者は先ほど言った通り、攻撃魔法中心のB級冒険者持ち職員です。モリガン関係の依頼と聞けば、彼女なら間違いなく引き受けてくれるでしょう」
ミーニャさんの顔色が更に変わった。
それも悪い方に。
「まさかと思うけれど、アライアかニャ。でも確かアライアは、国の反対側、東南部のフィーギのギルドにいるはずニャ」
「彼女は高速移動魔法も魔力駆動車も使えますから、ドーソンへも一日あれば来ることが可能でしょう。それに住んでいるのもフィーギの冒険者ギルドの住宅です。ここにモリガン関係の依頼を解決したパーティ員がいて、今後も同様の依頼を受ける意思と実力があると知れば、即座に異動願を出してやってくるでしょう。攻撃魔法については、私より上の実力者です。ですので実力的には問題ないと思います」
「……わかったのニャ。とりあえず、今日からの休暇を楽しむのニャ」
これは何かある。
ミーニャさんにアライアさんについて、聞いておいた方がいいようだ。
そう俺は悟った。
◇◇◇
話し合いが一通り終わった後、ミーニャさんとジョンと3人で冒険者ギルドを出る。
ミーニャさんは、今の話し合いが終わった後はそのまま休暇突入だそうだ。
冒険者ギルドから10歩歩いたあたりで、ミーニャさんが口を開いた。
「休暇は今日からで、さっきの話し合いは時間給扱いニャのニャ。話し合いが終われば、あとはホウトン村へ行くだけニャのニャ。ただインガンダ・ルマ以外にも魚は必要ニャ。ニャにせ7日間は、村の外に出ニャい方がいい状態ニャ。ニャので蓄えは充分以上に用意しておいた方がいいのニャ」
なおジョンは既に昨日、ミーニャさんから祭り参加のお誘いを受けていた。
そして俺も参加するという話を聞いて、OKしてしまったそうだ。
『勉強をするにも、少しは気分を変えた方が進みがいいと思うのニャ。祭りと言っても1日飲み食いして騒ぐだけで、あとは6日間、静かに過ごすだけニャのニャ。家も無料で貸せるし、食費も基本的に無料ニャし、ニャんニャら祭り専用下着とシーツも7日分貸し出せるのニャ』
本来のジョンの思考力なら、祭り専用下着とかシーツというあたりで、疑問を感じただろう。
しかし『C級冒険者試験対策を2週間で合格する』ノルマで毎日がっちり勉強をしていた結果、ジョンの思考能力は大分落ちていたらしい。
なおジョンが商業ギルドで借りた家は、俺の家やミーニャさんの家から冒険者ギルドへ向かって200mくらい歩いたところ。
なのでミーニャさんが朝夕、試験勉強の進み具合を確認したり、わからない部分を教えたりで立ち寄っていたらしい。
ミーニャさん、こういう面は親切なんだよなというのはともかくとして……
「ホウトン村の祭りはともかくとして、アライアさんってどういう方なんですか。一緒にお仕事をしたことがあるとか」
気になった部分を、率直に聞いてみる。
「アライアは基本的に東部か東南部担当ニャので、私は会ったことがニャいのニャ。でも冒険者の間では、絶対逆らってはいけニャい1人として有名ニャのニャ。通称『公開処刑』とか『不毛地帯』、『ハゲらった』とも呼ばれているのニャ」
今ひとつ通称の意味がわからないので、聞いてみる。
「何なんですか、その二つ名は」
ミーニャさんは、ふうっと息をついて、そして口を開く。
「アライアはダークエルフで、その中でも成長が遅い方ニャのニャ。ニャので人間ニャらとっくに成人している年齢でも、普人の10歳くらいに見えるらしいのニャ。ニャので冒険者ギルド内にいたら目立つのニャ」
ここまで聞いて、俺は話の結末が予想出来た。
でもそれが正しいかどうかはわからないので、ミーニャさんの話の続きに耳を傾ける。
「そしてアライアは基本的には、東南部のフィーギという街の冒険者ギルドにいるニャ。フィーギは砂漠と遺跡の街で、腕前は今ひとつだけれど態度が悪い冒険者も多いらしいのニャ。そんニャ駄目ニャ冒険者の1人が、冒険者ギルドで、憂さ晴らしにアライアに暴力を振るおうとしたらしいのニャ」
ああ、やっぱり。
何というか、よくある話だ。
「当然、アライアはきっちりとやり返したのニャ。正当防衛の名の下に相手の攻撃を避けると同時に、これ以上不法に攻撃をすることを防ぐためという名目で、装備全解除魔法を起動したのニャ。その魔法で装備だけでニャく、衣服も髪も髭も体毛も解除されたのニャ。それでもニャお攻撃してこようとしたその冒険者は、股間の急所を打撃魔法で攻撃され、悶絶して丸見え状態で倒れたらしいのニャ」
それは……
「かなり酷い絵面ですね、それは。自業自得ですけれど」
「半日の間、罰として仰向きのまま路上に放り出されて放置されたそうニャ。毛がニャい子供状態の股間を晒されたあげくハゲにニャったその冒険者は、翌日、街から姿を消したそうニャ。以上が『ハゲらった事案』で、『外見で人を判断してはいけニャい』という教訓として、冒険者の間でかれこれ十年近く語り継がれているのニャ。ニャお消息によると、その冒険者は今は南西部のゴウトにいるそうニャ。髪も眉毛も生えていニャいままらしいのニャ」
なるほど、なかなかエグい処罰だ。
どう考えても冒険者側が悪いから、同情はしないけれど。
ただ疑問があるので、確認しておこう。
「普通の装備解除の魔法なら、服が解除されることはたまにありますけれど、体毛までなくなることはないですよね」
「私は魔法使いではニャいから、その辺はよくわからニャいのニャ。でもこの事案そのものはギルドの記録に残っているから、事実ニャのニャ」
あともうひとつ、気になる魔道具が出てきたから聞いておこう。
「魔力駆動車というのは初めて聞きましたけれど、どのような物でしょうか」
前世にも一応、魔力車という魔道具は存在していた。
魔力で動かすことが出来る荷車、という感じの代物だ。
しかし収納魔法持ちが高速移動魔法を使用して移動する方が速いので、ほとんど使用されなかった。
この世界の魔力駆動車は、俺の知っている魔力車とは違うのだろうか。
「私も実際に見たことは無いのニャ。でも遺跡の中でも重量物を運べる、ニャかニャか便利ニャものと聞いているのニャ。普通の収納魔法よりも多くの物を運べるから、現地では重宝しているらしいのニャ」
ミーニャさんも見たことがないけれど、遺跡の中でも使用できる運搬具か。
俺の知っている魔力車とはちょっと違う様だ。
あれは平らな石畳の上でないと実用にならない代物だったから。
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