今日は9人での撮影の日だ
少し撮影が押したから、早くサウナに行きたくて、みんなよりもちょっと早くスタジオから楽屋に戻った
楽屋の扉が少し開いてて、おかしいなとは思いつつ、早く帰ることしか頭になく、深く考えず楽屋に入った
人が入ってきた気配に気づいたのか、清掃員らしき服装の男が振り返った
「あ、お疲れ様です。すみません、清掃してて」
ちょうど俺の荷物の近くにいたので、返事をしながら近づいていく
「あ、いえ、ご苦労様です。ちょっと荷物だけ取らせてもらえます?」
清掃員の手元が見える距離まで近づいてから、俺の私服のパーカーを持っていることに気づく
「え、それ、僕の…」
そこまで言ったところで急に抱きつかれた
「え、ちょっと!何するんですか?!」
振り解こうとするのに、びくともしない
「ちょっ!離してくださ…っん!」
大声を出して抵抗していると、男に手で口を塞がれた
「んんー!」
「やっぱり華奢ですよね。渡辺さん。肌も綺麗だし」
男の声が耳元でする
褒められてるようだけど嫌悪感しかない
とにかく暴れて、手近な椅子を蹴り飛ばす
楽屋の扉は開いてるから誰かに気づいてもらえることを祈るしかない
「しょっぴーどうしたの?…ちょっ!?」
「おい!お前誰だよ!」
「何してんだ!」
大きな音が聞こえたのか、慌てて楽屋に入ってきた佐久間、照、目黒が声を上げる
男は我に返ってビビったのか、俺を突き飛ばして逃げようとしたが、多勢に無勢では流石に敵わず、照に取り押さえられた
「照、警備員さん連れてきた」
「あ、館さん、ありがとう」
「大丈夫ですか?!」
「警察にお願いします」
涼太が連れてきた警備員に照が男を引き渡すのが見える
男が連れて行かれたことに安堵しつつも、嫌悪感が止まらず、しゃがみこんだまま自分を抱きしめる
「はぁ、はぁ、、、」
(なんだいまの…気持ち悪い…怖い…)
もう大丈夫とわかってても呼吸が落ち着かない
「翔太、大丈夫か?」
心配して伸ばしてくれた幼馴染の腕でさえ、反射でふり払ってしまう
「あっ…、っ!、りょ、た、ごめ…」
「いや、大丈夫だよ。こっちこそごめん、怖いよね、配慮が足りなかった」
「ごめ…、ふっ、うっ」
びくりと体が震えてしまうのが止められなくて、4人とも俺に近寄れずに困惑している
メンバーなんだから、大丈夫だって頭では分かってるのに
「「翔太…!!」」
「「しょっぴー!!」」
バタバタと足音が聞こえて、騒ぎを聞きつけた残りのメンバーが楽屋に駆け込んでくる
「…っふ、ごめっ…!」
「…翔太」
「…しょっぴー…」
謝りながら泣く俺と、近くで立ちすくむ4人を見て、あべちゃんが声をかける
「ちょ、大丈夫なの?どうしたの?」
「翔太、不審者に抱きつかれてて…。男はすぐに捕まえて連れて行かれたんだけど…」
「まだ混乱してるのか俺たちのことも怖いみたいで…」
聞いていたふっかが1歩前に出た
「あ、ちょっ!ふっか…!」
照が出した腕をふっかがやんわりと下ろす
「大丈夫だから」
コメント
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かっこいい!💜!