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ギィっと重い扉を恐る恐る開け、電気がついてないことを確認する。

無機質の部屋の中に自分の「ただいま」と言う声が響く。

「あー!おかえり!ちょっと見てよこれ!漫才!面白くない!?」

母はソファに座ってテレビを見ていた。何やらM−1グランプリなるものがやっているらしい。

それを見て爆笑していた。

僕はその光景を横目で見て、「よかったね」と小さく呟いた。

その興味を一切示さない態度が気に食わなかったのか母はつまらなさそうな顔をしてテレビに向き直った。

母は僕に興味がない。昔から僕のことに関して、関心がないのだ。

父は僕がまだ幼い頃に出ていった。だから父の記憶はあまりない。



無言で階段を上がって自分の部屋に向かう。

バタンと扉を閉めると、自分の部屋に灯りを灯す。

すると、机に置いてあったスマホが点滅した。充電が満タンになりましたという文字が表示される。

「そういえば、今日学校に持って行くの忘れてたな」

うちの学校ではスマホを持っていくことを全面的に容認している。高校受験の対策で学校の帰りに真っ直ぐ塾に行く人が多いからだ。

僕は塾とかには行ってないが、それとない理由できまぐれに持って行ったりする。

無意識にテレビのリモコンを手に取ると、電源を入れた。

パッと真っ黒な画面からチャンネルを変えると、様々な番組や騒がしい音が映し出される。

僕はそれを呆然と眺めながらソファに体を預けた。

色々チャンネルを変えていると、天気予報が流れてきた。

明日は雨が降る確率が60%と比較的高かった。

思えば、今日の午後くらいから雲が多かった気がする。

明日は雨が降るんだろうか。

雨が嫌いな人はたくさんいると思うが、不思議と僕は嫌いじゃない。


スマホに手を伸ばすと、ピロンと通知音が鳴った。

「ん?なんだこれ」

画面に知らない連絡先が表示してあった。なんだか気味が悪いので、そのまま放置することにした。

その下にクラスメイトからのメールが来ていた。それは一応目を通しておくことにする。

いつもしつこく話かけてくる彼からだ。

『事件の詳細が知りたいんだろ?オレがばばーんと教えてやるよ』という謎のメッセージと共に、サイトのリンクが貼り付けてあった。

「別にそんな興味なんてないんだけどな…」

呟いた言葉とは裏腹に、僕はリンクをタップした。

思えば、ここで彼のメールを無視していれば。

彼女とまた会うことがなければ。

こうなる未来はなかったかもしれない。


でも、タップしても反応はなかった。

そこから何分か放置してみたが、シーンとしたままだった。

しょうがなくページを戻って再びメールの画面を開き、彼へメッセージを送り返すことにした。

『なんで僕に事件の詳細なんか送りつけてくるの。知りたいとか言ってないでしょ』

タッタッタと手際よく打って、送る。

するとすぐに既読がついた。

『朝も言ったけど、お前普段興味のないことに見向きもしないだろ。だから少しは興味あるのかと思って』

彼は僕のことをよく見てるな。

確かに僕は常に他人に興味というものがないし、どこまでも自分主義だ。

でも正直、少し気になるところではある。

朝の学校近くでのテロ。

自らをテロリストだと言い張る彼女。

気にならないわけがないだろう。

いくら自分のことではなかったとしても、なんともむず痒い衝動に駆られる。

気になってしまう。

興味を持ってしまう。

今までそんなことはなかったのに…と自分の興味を否定したくなる。

でも、彼にテロを起こしたと言っている少女と会ったなどと言ったらおそらく頭のおかしい奴だと思われるだろう。

結局『そうかもしれないな』という曖昧なことを返して、スマホの電源を落とした。




「はあ〜、今日は疲れた」

僕はスマホをベットの脇に置くと、そのまま布団に潜り、眠ってしまった。


僕と彼女の、テロ物語。

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