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「……いただきます」
誰かの声。
朝ごはんの時間。
テーブルには、なつ、らん、いるま、他のメンバー。
そして、
こさめ。
「……」
箸を持つ手が、震える。
視線が、怖い。
全員じゃない。
でも、
一人だけ――
らんが、ずっと見ている。
冷たい目で。
「……」
目が合った瞬間、
こさめは反射的に視線を落とした。
その反応を見て、
らんは小さく鼻で笑った。
「……なにそれ」
「……っ」
ビクッと肩が跳ねる。
「怯えてるフリ?」
「……ちが」
「そういうの、うざいんだけど」
空気が、
凍る。
「らん」
なつが、低く言う。
「やめろ」
「……」
らんは、箸を置いた。
カタン
わざと大きな音。
「なつはさ」
静かな声。
「なんでこいつ入れたの」
「……」
「こんな壊れそうなやつ」
心臓が、
痛い。
「すぐ消えるよ、こういうの」
「……」
「前もいたじゃん」
その言葉で、
なつの目が細くなる。
「……らん」
「なに」
「それ以上言うな」
「なんで」
らんは、
まっすぐ、こさめを見た。
「ここ、遊びじゃないんだけど」
「……」
「弱いやつがいる場所じゃない」
――弱い
その言葉が、
頭の奥で、何度も響く。
弱い
弱い
弱い
『お前は弱い』
『役立たず』
『なんで生きてるの』
「……っ」
呼吸が、
浅くなる。
視界が、
揺れる。
「……こさめ?」
いるまの声。
遠い。
「……ごめ」
言葉が、
うまく出ない。
椅子が倒れる音。
ガタン
立ち上がって、
そのまま、
逃げた。
廊下。
息が、
できない。
「はっ……は……っ」
苦しい。
怖い。
同じだ。
同じだ。
ここも、
同じ。
「……いや……」
足が、
震える。
壁に手をつく。
でも、
力が入らない。
そのまま、
床に崩れた。
「……こさめ」
声。
顔を上げる。
いるま。
「……」
怒ってない。
でも、
優しくもない。
ただ、
見ている。
「……ごめ……なさ」
「……」
「ごめ……」
謝らなきゃ。
怒られる前に。
捨てられる前に。
「……なんで謝るの」
「……え」
いるまが、
しゃがむ。
「……らんが言ったこと」
「……」
「間違ってると思う」
「……」
その言葉が、
理解できない。
「……でも」
いるまは続ける。
「正しい部分もある」
「……っ」
心臓が、
止まりそうになる。
「ここは」
静かな声。
「壊れたまま、いられる場所じゃない」
「……」
「壊れるなら」
少しだけ、
目を伏せて、
「ちゃんと壊れて」
「……」
「ちゃんと戻ってきて」
「……」
「中途半端が、一番困る」
残酷だと思った。
でも、
嘘じゃないとも思った。
「……こさめ」
名前を呼ばれる。
「逃げる?」
「……」
「それとも」
手が、
少しだけ差し出される。
「いる?」
選ばせてくれる。
追い出さない。
でも、
守りもしない。
「……」
こさめの目から、
涙が落ちた。
「……いる」
消えそうな声。
「……ここに」
その瞬間、
いるまの指が、
少しだけ、
こさめの手に触れた。
一瞬だけ。
すぐ離れたけど。
「……そ」
それだけ言って、
立ち上がる。
「……戻ろ」
でも、
こさめは知ってしまった。
ここは、
優しい場所じゃない。
守ってくれる場所じゃない。
それでも、
ここにいたいと、
思ってしまった。