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いぶの兄貴とたつもとの兄貴もう尊い❣️(◜¬◝ )
んぎぃ…( ᷄ᾥ ᷅ )
日光の心地よい午後だった。
そんな風景とは裏腹に、分かりやすく気持ちが慌ただしい俺がいる。
龍本「大丈夫か?伊武」
伊武「…はぁ…はぁ…」
今現在、季節の変わり目だったこともあってか、舎弟であり俺の恋人である伊武が熱でダウンしてしまっている。風邪の一つも滅多に引かないこいつのことだから、俺は一層心配だった。
伊武「すみません、兄貴…俺が風邪なんか引いたせいで、苦労ばっかりかけて」
龍本「何言ってんだ、熱出した奴を看病するのなんざ当たり前だろうが」
そう言って、俺はコップに飲料を注ぎ、伊武のところへ持って行った。
龍本「体…起こせるか?」
伊武「…はい」
俺にそう言われ、力なく体を起こそうとする伊武。が―。
伊武「っ…」
龍本「!…どうした?」
伊武「さ、寒い…」
そうだった。こいつは体調を崩すのも風邪を引くのも久しぶりだ。こういう時の『寒い』なんて知らなかったのかもしれない。
龍本「それは分かるが、これ飲まねぇと治るもんも治らねぇから…」
伊武「うぅ…」
何とか説得して、やっとコップは持ってくれている。けど、寒さからか、体調が悪いせいか、震えたその手からコップが落ちてしまった。
伊武「あっ!」
コップの中の液体が飛沫を上げる。床がフローリングだったのがせめてもの救いだった。
伊武「…すみません…」
人間ってのは不思議なもんで、気持ちさえあればこんな小さな謝罪の声でも伝わるらしい。
伊武「俺が…拭きます…零したの、俺ですし」
龍本「馬鹿言ってんじゃねぇ、俺がやっとくから安静にしてろ」
しんどいくせに無理して起き上がろうとする伊武を制して、俺は床を拭き始めた。
龍本「…さて、今度こそ飲んでもらおうか」
伊武「ご、ごめんなさい…兄貴…まだ、手が震えてて…コップが持てそうにないんです…」
こいつはこう言ってるが、飲ませねぇと完治することはおろか、熱が下がることもねぇ。この調子だと俺が飲ませようにも無謀かもしれない。
龍本(…しょうがねぇか…)
俺はコップの中の飲料を少し口に含むと、伊武の唇に無理矢理口付けた。
伊武「んぅ…っ?!」
跳ね上がりそうになる体を力で押さえつけて、飲料を口移す。
一口目が終わり、二口目を口にしようとすると、伊武が口を開いた。
伊武「だ、駄目…!兄貴にも、移っちゃ…!!」
俺はそれを無視して、もう一度その唇に口付けた。
それを何度か繰り返し、市販の風邪薬を飲んでから口移しした一口を最後に、コップは空になった。
伊武「っはぁ、っはぁ…」
飲み終えてコップを持って行こうとした時にふと伊武を見ると、顔を赤くして苦しげに息を荒らげていた。目には涙を浮かべ、上下する胸を手で必死に押さえつけている。
龍本(悪いことしちまったかな…でも、何だ…色気が…)
俺がその光景に反省しつつも見とれていると、伊武は不満げにこっちを見た。
龍本「…悪かったよ」
伊武「薬を飲ませてくれたのは嬉しかったんですよ…でも、仕方ないとはいえ、俺は…俺の唇がこうも簡単に奪われてしまったことが、すごく悔しいんです」
ああ、確かこいつには負けず嫌いなとこもあったんだっけ。
伊武「…ずるいです…けど、俺の『初めて』が、…兄貴で良かった」
それだけ言うと、また布団に潜ってしまった。
―やがて静かな寝息が聞こえ始めた頃、俺は自分の中に残った気持ちを振り払うように頭を掻き乱した。
龍本(…また、馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ…)
最後にそんなことだけ言って寝るなんて、お前の方が100倍ずるいじゃねぇか。
完治したら、沢山相手をしてもらうとしよう。
そんなことを考えて、俺の口角は自然に上がった。