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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

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雫 -SIZUKU- ~星霜夢幻ーー“Emperor the Requiem”~

62 - 第62話 破 似て非なる者② 最悪の相手

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2025年07月12日

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――――同時刻――――



アミとユキは家内にて、今夜の夕食へ向けての準備の真っ最中であった。



「狂座の者が攻めて来たぞぉ!!」



突如、家外にて叫び声が響き渡った。



「アミ!」



まさか白昼堂々攻めて来るとは思っていなかったのか、ユキも思わず声を上げる。



“――嘘!? まさかここまで気付かれずに侵入してくるなんて……”



アミは狂座の者の侵入に対して、自然の警告の声が聴こえなかった事を疑問に思うが、今はそれ処では無い。



再び闘いが始まる。ユキは既に雪一文字を腰へ差していた。



ミオはまだ、帰って来ていない。



「ユキ!」



二人は顔を見合せる。



ミオ一人で狂座の者を相手にするのは、さすがに分が悪い。アミですら、狂座の師団長クラスには及ばないのだから。



「ミオが危ない!」



「急ぎましょう!」



ユキの号令を皮切りに、二人は家を飛び出したのだった。





“――果たして、どれ程の者が?”



家を飛び出し、二人走る最中ユキは攻めて来た狂座に対する戦略思考を施す。



師団長や軍団長クラスなら、彼にとっては全く問題では無い。ただもし、いや十中八九そうだろうーー“当主直属部隊”クラスが相手ならと考える。



勝てるかどうかも難しい上、周りにも多大な犠牲を出しかねない。



出来れば侵入する前に、片付けたかったと。



「ミオちゃんが敵に捕まっている。急いで!」



途中、前方から走ってきた住人に、すれ違い様に二人は声を掛けられる。



「ミオ……」



妹を心配するあまり、アミは表情が蒼白に引きつりながら呟く。



最悪の事態は回避せねばと、二人は走る速度を更に早める。そして、漸く見えてきた。



八間(約18M)程先にへ垂れ込んでいるミオに、それを見下ろしている一際目立つ蒼髪の人物の姿を。



周りには住人達が、恐れおののく様にがやついていた。



「アイツは!!」



ユキはその蒼髪の人物を目視確認するなり、目を見開きながら口を開いていた。



「フフフ、来たなユキヤ」



蒼髪の男はミオから目を離し、ユキを見据えて呟く。



「姉様! ユキ!」



“やっぱりこの人、ユキの知り合い? でも……狂座だよね? でも何か、この二人……”



相変わらず身体が硬直して身動きが出来ないミオだが、何故かこの二人が何処か雰囲気が似ている様な、そんな印象を受けていた。



「おのれ狂座め! 一人で此処に乗り込んで来るとは!!」



一人の男の怒号によって、突如静寂が破られる。一族の戦士が刀を構えて、蒼髪の男に斬り掛からん勢いで詰め寄っていく。



「狂座? 何を勘違いしているか知らんが、五月蝿い虫だな」



蒼髪の男は面倒臭そうに、相手の方を振り向く事無く、右指先を詰め寄って来た男の顔面へと向けた。



“丸腰で何をしてるの、この人?”



間近で見ていたミオが、その動作を不振に思っていたその時。



「そいつに近付かないでください!!」



突如ユキの焦燥した叫び声が、空気を切り裂くが如く辺りに響き渡った。



「目障りだ」



蒼髪の男が鬱陶しそうに呟いたその直後。



“ーーっ!!”



男の首から上が、まるで花火の様に赤く弾け散る。そして、突如本来在るべきものが無くなった首の断面からは、鮮血が噴水の様に吹き上がっていた。



頭部を失った男は糸が切れた人形の様に、ゆっくりと崩れ落ちていく。



『…………』



その刹那の惨劇に、まるで時が止まったかの様に周りは凍りつきーー沈黙。



“――な……何? これ……”



ミオは間近で起きたその惨劇に、状況が掴め無い。



飛び散った肉片、その鮮血の一部がミオの顔に降り注ぐ様に架かり、雫がその頬を伝う。



「ヒッ! ヒィィィィィィ!!」



静寂を破る誰かの悲鳴を皮切りに、凍りついた時が動き出す。



「ひっ……人殺しぃぃ!!」



「だっーー誰かぁぁぁ!!」



まるで雪崩式に次々と悲鳴が飛び交っていき、その場の群衆はパニックに陥っていくのであった。



「な、何……今の?」



アミは悲鳴が飛び交う中、その惨劇に吐き気を堪える様、口を掌で抑える。その現状に今一つ考えが纏まらない。



一つだけ確かな事は、今まで奇跡的に出なかった“遂に犠牲者が出てしまった”という事。



「今のは……過度の血液膨張による、体積の限界破裂です」



横でその現状を、ユキは何時もの冷静さを欠いた口調で解説する。



アミはそれが如何なる事かを想像し、思わず身震いをした。



「全く最悪ですね。狂座より厄介な事になるかもしれません……」



ユキの横顔を見て、アミは思わず目を疑った。



“――ユキがそこまで言うなんて……”



彼の額からは、一筋の冷汗が流れ落ちていたのだから。



彼女は少なくとも、ここまで焦るユキをそうそう見た事は無い。



思い起こせば、それはアザミとの闘い以来の事。



アミにとっても、あの蒼髪の人物がとてつもなく危険で在ろう事は、一見しただけで理解出来た。



“――でも、さっきユキの言ってた“狂座より厄介゛な事って?”



そう、間違いなくこの二人は、お互いがお互いを知っている。アミがそう考えあぐねていた時、突如ユキが声を張り上げた。



「死にたくなければ全員、今すぐ此処から離れてください!!」



それは何時もの冷静な彼とは思えない程の、焦りにも似た叫び声だった。



それでも腰を抜かしている者、恐れ怯える者多数で中々その場は収まらない。



「ミオ! 何をしているんです!? 早く其処から離れるんです!!」



ユキは急ぎミオへ発破を掛ける。とはいえ、ミオも恐怖と目の前で起きた惨劇により、腰を抜かして身体が思う様に動かせない。



そんなユキの言葉を嘲笑うかの様に、蒼髪の男はミオの肩へと手を伸ばす。



「やめてぇ!!」



訪れようとする惨劇。響き渡るアミの悲鳴。



だがーー



「ご苦労だったね、お嬢ちゃん。さあ向こうに戻りな」



蒼髪の男はミオの肩を掴んで立たせ、彼等の下へ戻るよう促す。



「アミ! 今です!」



ユキの言葉にアミは瞬時にミオの下へ駆け寄り、妹を抱き寄せたまま即座にその場から離れる。



その間、蒼髪の男は特に二人に手出しする素振りも無く、ただユキのみを見据えていた。



「姉様……ユキ……」



二人の下に戻ったミオは、アミの胸の中で小刻みに震え続け、その表情は恐怖の余り蒼白に引きつっていた。



「ミオ……良かった」



アミは無事だったミオを、きつく抱きしめ安堵する。



「ユキ、あの人は一体何者なの? 狂座……じゃないよね? それにあの力……」



血液を意図的に膨張させるなんて、ただ事では無い。一つだけ分かるのは、それはとてもおぞましく、恐るべき力だという事。



アミの疑問にユキは蒼髪の男を見据えたまま、そっと口を開く。



「奴は狂座の者ではありませんよ。それにあの力は、奴の能力のほんの一部に過ぎません……」



相手の血液を膨張させるだけでも、恐るべき力であろう。それでも恐るべきはそれだけではないと言わんばかりに、彼は衝撃の事実を口にする。



「奴は血液は疎か、あらゆる水分を意のままに操る特異能ーー“獄水”を持つ特異点が一人……」



「特異能? 特異点! じゃあ、あの人は……ユキと同じ?」



アミも言われて気付いた。ユキと何処か雰囲気が似ている事に。



「久しいなぁ、ユキヤよ」



蒼髪の男が感慨深そうに、ユキへ向けて口を開く。



「久し振りですね。二度と会いたくないと思っていましたが、何しに来たんですか?」



ユキも前に歩みながら、蒼髪の男へ向けて口を開いた。



場の雰囲気は凍りつき、空気が張り詰めていく。



「ーー特異点。“血痕゛のシグレ……」

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