テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
ふーっと細く長い息を吐いて、俺は手から力を抜いた。
左手の注射器がカツンと音を立てて床に落ちる。
右腕の中のないこは支えを失ってずるりと滑り落ちた。
そのままドサッと、細い体がラグの上に崩れる。
天を向いた目は完全に瞳孔が開いていて、もう既に事切れていることが分かった。
「…マジで即効性あるやん」
呟いて、俺はその目に手を伸ばす。
もう何物をも映さないその瞳を、せめてもの気持ちで瞼を下ろし閉じてやった。
あの表情がクルクルと変わる、楽しそうに細められた目はもう開くことがない。
急速に体温を失っていくその体を抱えあげ、俺は再び車のキーを取り上げる。
最低限の荷物と武器だけを持って、玄関へ向かった。
車内はまだしょにだの血で大変なことになっているだろうけど、そんなことに構っている場合でもない。
玄関のドアに手をかけ、勢いよく外に出ようとした…その時だった。
俺が「そう」するよりも早く、扉が引き開かれる。
思わず目を見開くのと、外から中へと一つの影が飛び込んでくるのが同時だった。
途端に鮮やかな水色が視界に広がる。
「え、いふくん…」
ほとけの方も俺とぶつかりかけて驚いたのか、一瞬目を丸くした。
だけどそのすぐ後で、俺の肩でうなだれるように担がれたないこを目に止める。
水色の瞳が驚愕に見開かれ、それから俺を振り返った。
「ないちゃん…? いふくん、ないちゃんどうしたの!?」
この距離だ。一瞥しただけでももうないこが呼吸すらしてないことが分かったんだろう。
思わず「はぁ」と面倒臭そうにため息を漏らすと、返事をしない俺のその反応から「誰が」ないこを殺したのか瞬時に理解したようだった。
「いふくん…ないちゃんに何したの!?」
「……何で戻ってきたん、お前」
だる、そう付け足しながら俺は担いでいたないこの体を下ろす。
小さめの玄関ラグの上にその体を横たえると、ほとけは信じられないというような目で追った。
「僕…ないちゃんに謝らなきゃって…」
絞り出すような声は掠れている。
「ひどいこと言っちゃったから…。もししょうちゃんが今起きて、僕がないちゃんに言ったこと知ったら絶対怒るだろうな、って…」
「……」
「だから、しょうちゃんが起きるより前にないちゃんにちゃんと謝らなきゃって…」
グス、と鼻をすすりながらも、キッと目線を上げてきた。
「何でないちゃんにこんなことしたの?」
まっすぐに睨みつけてくるその目は、今までに見たことがない怒りを湛えている。
「ないちゃんじゃなくて…いふくんがボクたちを裏切ってたの!?」
ないこから手を離し、俺はほとけに正面から対峙した。
手を伸ばせば届きそうな距離でまっすぐ見据えると、あいつは少し怯んだように半歩だけ後ろに下がる。
「俺の殺しのターゲットはないこだけやねん。お前はなんも関係ない」
言葉を切って、俺はほとけが下がった分だけ前に躙り寄った。
「お前が今そこどいてくれたら、余計な手間かからんで済むんやけど」
ジリ、と更に後ろに下がったほとけの背が、玄関ドアに当たる。
「…!」
横目でそれを確認してから、あいつは悔しそうに唇を噛んだ。
「いふくん…何か事情があるんだよね…?」
自分の中で葛藤する「何か」と戦っているのか、ほとけの声はまるで自分の気持ちをなだめたいかのようだった。
自身に言い聞かせるみたいに重く響く。
「事情があったら、ないこを殺しても許してくれるん?」
唇に薄く意地悪い笑みを浮かべて言うと、ほとけは目を剝いた。
怒りに満ちた眼差しがこちらを射抜くようだ。
「何で…何で!? いふくん、ないちゃんのこと好きだったんじゃないの!?」
こちらを責めるような問いに、俺はもう一度大きくため息を吐き出した。
「…だる」最近口癖になりかけているそんな言葉が、それでも本音を表すように漏れる。
「あにきもそんなようなこと言うとったけどさぁ…」
後頭部の辺りを掻きながら、大げさに肩を竦めてみせた。
「俺が一回でも、そう言うたことがあった?」
「!!…っ」
「お前らが勝手に勘違いしただけやん」
冷たく言い放って、俺は更に一歩ほとけに近づく。
もう手を伸ばさなくても、動かすだけでそれが触れ合いそうな距離。
グッと息を詰めるあいつに、俺は「そこどけよ」と低く凄んだ。
「…どかないよ」
言いながらほとけは、ポケットからダガーナイフを取り出す。
パチンと開いて、くるりと手の中で一回転させた。
「お前が俺に勝てると思う?」
は、と鼻で笑って言ったが、あいつは今度は怯むことなくナイフを俺の目の前に突きつけてくる。
「仲間を殺されて、黙ってられるわけないよ」
そう言った次の瞬間、ほとけがナイフを振りかざすのと俺が一歩後ろに飛び下がるのが同時だった。
ビュッと風を切る音がする。
顔のすぐ横を掠めたそれは、目標物を失って空を掻く。
「…っ」
その隙に足を振り上げたが、あいつは軽い身のこなしで横に飛んで避けた。
それと同時に第二撃を繰り出してくる。
組織に身を置いて実力は伸びたのだろうけど、ほとけの思考回路なら手に取るように分かる。
次は右から、その後は下から…攻撃の出る位置が読める以上、それが俺に当たることはほぼ皆無だ。
「っ」
全然当たらないナイフに苛立ちが募ったんだろう。
舌打ちまじりに、大振りになった隙ができた。
その小さな綻びを逃すことなく、俺はほとけの細い首を掴み、そのままドアに押しつける。
ガン!と、予想よりも大きな音がした。
「…は…っ」
息が苦しいのだろう。
声にならない声を上げて、もがくような手からはナイフが落ちる。
玄関にカツンと硬質な音が響いた。
「安心しろ。苦しいんは一瞬やで」
言いながら、俺はポケットからもう一本の注射器を取り出す。
目を見開くほとけの前で、それを振りかぶった。
「『あっち』でないこに謝るんやな」
水色の瞳が、絶望に色を染める。
冷徹に呟き、俺は2本目の注射器をほとけの首筋に突き刺した。
ないこと同じ。
目を瞠って数秒もすれば、そこから光が急速に小さくなっていく。
「2本しか持たされてないねんから、手間かけさせんなよ…」
もう答えるはずもないほとけにそう呟いて、俺は2人の遺体を車に運んだ。
しょにだの血が広がるそこには、詰んであったシートを敷く。
その上に2人を横たえると、ピンクと水色が混じるように髪が触れ合った。
「……」
途端に押し寄せる徒労感。
それでも休んでいる暇はなくて、音を立てて後部ドアを乱暴に閉めた。
そのまま運転席に乗り込もうとして…だけどそこで不意に手を止める。
思い出したように自分の首元に手をやった。
そこから、いつも服の内側に入れたままになっていたゴールドのネックレスを取り出す。
「かっこいいね」そう言ってこれに触れたときのないこの表情を思い出す。
ズキンと胸が一度痛んだ気がしたけれど、今更どうすることもできないのは自分が一番よく分かっている。
あの時、ないこは「もう戻れないんだ」と言った。
でもそれは……きっと、俺の方だ。
ネックレスの先にある、厚めのプレートチャームに唇を寄せる。
触れそうな距離で俺は「…おい」とそれに低い声で呼びかけた。
「どうせ全部聞いとるんやろ。…今からそっち行く」
首洗って待っとけ、そう付け足して、俺は怒り任せにネックレスを乱暴に外す。
その場に叩きつけるように落として、ブーツの踵で踏みつけた。
パキンと音を立てたプレートの中から小さな機械が顔を出す。
そしてそれは、二度と使えない金属の残骸になった。
コメント
5件
青さんが裏切り者だったんか... 桃さんに加えて水さんも、、 瞳孔が開いているって書いてあるからこその その場の雰囲気?が伝わってくる感じがするの凄すぎる 最後のネックレス、、が発信機みたいになってんのかな?
これどうなっちゃうんだろ!? 桃ちゃんだけかと思ったら水くんもやられてしまった、、、 ハッピーエンドで終わって欲しいけどどうなるんだろう、、
びっくりしました。桃さんの体の害になることを何かしたんだろうなとは思っていましたがまさか桃さんにくわえて水さんもやってしまうとは…。 そして青さんが水さんの攻撃パターンが手に取るように分かるというのがさすがですごい好きてす…!