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冷凍してあった野菜スープを鍋に投入し、火にかける。あとはそれにトマトピューレや何やらで調味して、スープパスタにすることにした。
冷凍庫をのぞき込み、いつのものかはっきりしない溶けるチーズを見つけ、それも使ってしまおうと取り出す。
一人の晩ご飯はいつもこんな感じだった。本気でやる気のない日は、コンビニのカット野菜を入れたインスタントラーメンで済ますときもある。
それを誰にも咎められないから気楽なものだった。
朝使った食器を洗っている間に野菜スープが沸騰してきて、簡単な夕食の準備が整った。
短時間でできた料理を短時間で胃に収め、今日届いた荷物をソファに運ぶ。
平べったい段ボールを、気が急くままに力任せに開封すると――中に入っていたのは、透明なセロハンに包まれた、カラフルなチャームだった。
親指の先ほどの大きさのチープな石が、ごてごてとしたデザインの装飾に包まれている。
とても大人の女性が身につけるタイプのものではない。
部屋の照明を跳ね返してチカチカと輝く。
雪緒はそれを取り出して手のひらに乗せると、うっとりと眺めた。
「……可愛い……想像通りだった……」
メルカリで見つけたものだった。
ちょっと古びたデザインの、女児が喜ぶであろう賑やかなデザイン。
――多分、心理学的には何らかの名付けがされる行為なのだと思う。
子供の頃に満たされなかった気持ちを、大人になってから埋める行為。
例えば、子供のころに厳格にジャンクフードを禁止されていた人が大人になって食べまくるように。ゲームを禁止されていた人が、寝食を忘れてゲームにのめり込むように。
雪緒にとっては、「可愛いもの」「小さいもの」「キラキラしたもの」、それらへの渇望が同じようなものだった。
そういうものは全て妹のものだった。