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ゆうき あきや
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#心理描写重視
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わあ、もうハロウィン回きたのしみにしてたんです!🎃✨ シロ様の魔女帽子&オッドアイ、尊すぎて卒倒しそうになりました…あのサファイアと琥珀の輝き、小春ちゃんが夜なべで作った衣装って聞いてさらに胸熱です。コン吉とコン次郎のミイラ包帯姿で転がり合うシーン、想像しただけで悶絶ものです🥺💕 アキヤさんの「光学エラー」「生態プロテクター」理論、今回も全開で笑いました。でもね、そうやって言い訳しながらも、モフモフたちと小春ちゃんに囲まれてる姿が本当にあたたかくて、この「バグってる聖域」が大好きです! ゆうき先生、素敵なハロウィン物語をありがとうございます🌙
第161話:初めてのハロウィンと、モフモフの仮装
十勝地方を包み込む秋の空気は日ごとに冷涼さを増し、いよいよ冬の将軍が遠くの山並みからこちらを睨みつける季節となってきた。
黄金色に輝いていた防風林の木々はすっかり葉を落とし、古民家の周囲にはカサカサと乾いた落ち葉の絨毯が広がっている。
だが、そんな寒さを吹き飛ばすかのように、我が家の古民家には今、異様な熱気とカラフルな装飾が溢れ返っていた。
「お兄さん! ほら、こっちの柱にもカボチャのガーランドを飾りましょう! ああ、そこはシロちゃんのジャンプの軌道に入るから、もう少し高くお願いします!」
いつもの割烹着の上に、なんとオレンジ色のカボチャ風エプロンをまとった小春ちゃんが、脚立の上から元気いっぱいに指示を飛ばしてくる。
今日、十勝の限界集落では、村の歴史上初となる一大作戦が敢行されようとしていた。
小春ちゃんの熱烈な提案によって開催が決定した、我が陣地初の『ハロウィンパーティー』である。
「……なるほど。季節イベントを隠れ蓑にした、陣地内の視覚的迷彩(カモフラージュ)および偽装網の構築だな。冬の到来を前に、部隊の士気を向上させるための娯楽施策としては、極めて理にかなっている」
俺――アキヤは、元・陸上自衛隊需品科の戦闘服の袖をまくり、手際よくカボチャの提灯(ジャック・オ・ランタン)を梁に固定していた。
カネならドバイの石油王やハリウッド大女優からの天文学的なスパチャと公金によって、国家予算レベルで余り散らかしている。
だが、俺たちのスローライフの基本はDIYだ。飾られているカボチャの多くは、村のおばあちゃん達が「アキヤ君、これで可愛いお祭りをするんだべ?」と持ってきてくれた、本物の十勝産カボチャを小春ちゃんと一緒にくり抜いたものである。
正式に収穫したカボチャから、中身の種や繊維をスプーンでストイックに削ぎ落とし、完璧な耐久性を持つランタンへと加工する作業。これこそ需品科の真骨頂だ。
そして、室内の設営が完了したところで、本日の最重要ミッション――『防衛戦力(モフモフたち)の偽装作戦』が始まった。
「さあ、みんな! 着替えの時間ですよ! 世界一可愛いモンスターに変身しちゃいましょう!」
小春ちゃんが夜なべして手作りしたという、特製の仮装グッズを広げる。
真っ先に出頭したのは、居間の特等座布団の上で優雅に毛繕いをしていた、我が家の絶対権力者である純白の神獣シロ様だった。
小春ちゃんが恐る恐る、ちいさな紫色のリボンがついた黒い魔女の帽子をシロ様の頭へと乗せる。
『ミャウ(ふふっ、これでお姫様から大魔女にジョブチェンジね)』
シロ様がゆっくりとこちらを振り返った瞬間、その神秘的な『オッドアイ』の瞳が、室内のカボチャ提灯の灯りを受けて怪しく、そして美しく煌めいた。
左目のサファイアブルーは冷徹な夜空のごとく深く輝き、右目の琥珀色は妖艶な炎のごとく温かみを放っている。
純白の毛並みに、ちいさな魔女の帽子。そして妖しく光る左右非対称のオッドアイ。あまりの神聖さと可愛らしさの融合に、小春ちゃんは「かわいすぎますぅぅぅ!」と胸を押さえてその場に卒倒しかけていた。
続いて偽装を施されたのは、庭からトコトコと入ってきたキタキツネの兄弟、コン吉とコン次郎だ。
二匹には、伸縮性のある医療用包帯を全身に優しく巻きつけ、ちっちゃな『ミイラ男』の仮装が適用された。
「キュイン!」「コンッ!」
お互いの包帯姿が珍しいのか、二匹は黄金色の立派な尻尾だけを包帯の外へパタパタと揺らしながら、ミイラ姿のまま部屋をコロコロと転げ回ってじゃれ合っている。その姿は、歩くフワフワの包帯の塊だった。
そして、最後に控えるのは、縁側から顔を覗かせている我が陣地最大の重量級戦力、体長3メートルの巨大ヒグマである。
流石に3メートルサイズの既製品はないため、俺が廃材のウレタンと端材を加工し、需品科の工作技術をフル動員して『特大フランケンシュタインのボルト』を制作した。
ヒグマの頭の両脇に、太いボルトのパーツをカチューシャ仕様で装着する。
「グルォォ……(俺、かっこいいか?)」
ヒグマは、頭にボルトを生やした状態で、大きな両腕をだらりと前に垂らし、のそり、のそりとフランケンシュタインのモノマネ(あくまでただ歩いているだけだが)を披露してくれた。圧倒的な質量と、壊滅的な愛らしさのアンバランスさが極まっている。
「よし。全ユニットの偽装完了。これより、【日常チャンネル】のゲリラ生配信をアクティベートする」
俺はジンバルに固定したiPhone miniの電源を入れ、配信ボタンをプッシュした。
ピコーン! ピコーン! ピコーン!
配信開始のアラートが世界中に飛んだ瞬間、いつも以上の超現実的な速度で同時接続者数が跳ね上がり、なんと開始わずか「1分」で二千万人を超える世界中のリスナーたちがチャット欄へと怒涛の勢いで雪崩れ込んできた。
そして、画面に映し出されたモフモフたちの尊すぎる仮装姿を目撃した瞬間、チャット欄は未だかつてないレベルの極彩色のスパチャ(MeTubeギフト)の超巨大瀑布によって完全に埋め尽くされた。
『開始1分で世界が滅びるレベルの尊さキタァァァァァ!!!』
『シロ様の魔女帽子とオッドアイの破壊力が国宝級すぎる!!!』
『ミイラキツネが包帯引きずって転がってるww可愛さの暴力だろww』
『フランケンヒグマww3メートルの怪物がボルトつけてドヤ顔すんなww』
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)二百連発』
『”Oh my God!!! Master! My witch King is so beautiful! The blue and amber eyes are piercing my soul! I’ll donate 2 billion yen for her magic candies!“(おお我が神よ!!! 主よ! 我が魔女の王がなんて美しいんだ! ブルーと琥珀の瞳が私の魂を射抜いているぞ! 彼女の魔法のキャンディのために20億円を寄付する!!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)百五十連発』
『”Wow! What a gorgeous Halloween! Frankenstein bear is so cute! Akiya, let me join that party by my helicopter right now!“(ワオ! なんてゴージャスなハロウィンなの! フランケン熊が凄くキュートよ! アキヤ、今すぐヘリでそのパーティーに参加させて!)』
世界中から数え切れないほどの億単位の資本が限界集落へ向けて一斉射撃され、画面が光の粒子で完全にホワイトアウトしかける狂乱のド真ん中で。
俺は一人、静かに折りたたみチェアに座り、おもむろに保冷バッグからいつものタッパーを取り出していた。
中に入っているのは、完璧な水加減で炊き上げられた『冷やし玄米』と、このハロウィンに合わせてストイックに仕込んでおいた『大豆ミートの十勝産パンプキン風味甘辛和え』である。
「……よし。前線陣地における季節的迷彩の完全な成功、および国際的資本の異常流入を確認。これより指揮官は、これからの長期防衛戦(ハロウィン事務処理)に備え、定時エネルギー補給を執行する」
俺は、カボチャ提灯の温かい光に照らされながら、一切の感情を排した元・社畜の顔で、ストイックにオレンジ色のカボチャ風大豆ミートを玄米の上にワンバウンドさせて咀嚼し始めた。
(……ふむ。十勝カボチャのベータカロテンと、大豆の植物性タンパク質。ハロウィンの狂騒をノーミスで乗り切るための兵站(ロジスティクス)としては完璧だな)
脳内で完璧な戦術栄養補給を完了し、淡々と咀嚼を続ける俺。
「お、お兄さぁぁぁん!!! 目の前でシロちゃん達が世界一尊いハロウィン仮装を披露して、開始1分で中東とハリウッドが数十億円の札束で殴り合ってる歴史的な大奇跡の瞬間に、なんで一人だけカボチャ提灯の光を浴びながら真顔で『カボチャ大豆ミート』をストイックにモグモグ咀嚼できるんですか!!」
小春ちゃんが完全に理性を消失させ、お菓子を入れるために物置から出しておいた、樹脂製の頑丈な『特大ジャック・オ・ランタンのカボチャバケツ(肉厚耐衝撃仕様・容量約十リットル)』を両手でハンマーのように振りかぶり、凄まじいジト目でツッコミを入れてくる。
だが、俺は玄米の咀嚼を止めない。
「小春ちゃん、取り乱すな。どれほど国際市場のハイパーインフレが我が家に直撃しようとも、元・陸上自衛隊需品科たるもの、定時給食(エネルギー補給)という基本ルーティンを怠ってはならない。いかなるオカルト現象の前でも己の血糖値を一定に保つ。これが需品科の鉄則だ」
俺は水筒の熱いほうじ茶で喉を潤すと、三千五百万人を突破して全世界のサーバーを物理的に破滅させかけているカメラにキリッとした真顔を向け、いつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。画面の向こうで、動物たちが魔法のハロウィン仮装を楽しみ、神獣の奇跡が起きたと感動されているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『開始1分で20億飛んでるのに、絶対に認めない男!!!』
『主の限界言い訳タイム・限界ハロウィン編ww』
『さあ、この世界一可愛いモンスターたちをどうやって現実科学で論破するつもりだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは可愛い仮装でも、ハロウィンの奇跡でもありません。先ほど発生した現象は、我が陣地(古民家)の冬期迷彩の実験の一環であり、動物たちに着用させているのは、特定の紫外線や赤外線を遮断するための『高分子樹脂製・生態プロテクター(魔女の帽子)』および『関節固定用サポーター(包帯)』です。シロのオッドアイが怪しく発光して見えるのも魔法ではなく、カボチャ提灯の内部から発生した『特定波長のLED光』が、彼女の左右の眼球の虹彩の異なるメラニン色素密度によって、変則的に全反射しているという、純粋な光学的なエラーに過ぎません。20億円という金額も、海外の過激な『迷彩プロテクター開発コンソーシアム』からの、単なる実証実験に伴う『過剰なデポジット(預け金)』が口座に反映されているだけです。ええ、すべてはただの『生態プロテクターの実験』と『虹彩による光学エラー』、そして『会計上の過剰な着金バグ』ですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
バコォォォォォンッ!!!!
小春ちゃんが、持っていた特大のプラスチック製カボチャバケツを全力で振りかぶり、俺の背中に向かってパーフェクトな満塁ホームラン級・カボチャバケツスマッシュを見舞った。
肉厚のプラスチックバケツが肉体に激突した、鈍くも凄まじい大爆音が、古民家の高い天井へと虚しく響き渡る。
「光学エラーで、シロちゃんのあの綺麗なサファイアと琥珀の瞳がこんなに優しく輝くわけないでしょうが!! 実験じゃなくて、小春たちが夜なべして作った可愛い衣装を、シロちゃんたちが嬉しそうに着て世界中を癒やしてくれてるんでしょうが!! 自分の家のモフモフたちが、世界一ハロウィンが似合う最強のアイドル家族だってことを素直に認めなさいよ!!」
『小春ちゃんのカボチャバケツスマッシュ炸裂www(いい音)』
『高分子樹脂製・生態プロテクター(ただの可愛い魔女の帽子)』
『会計上の過剰な着金バグ(石油王からのガチの20億円)』
『適応力バグおじさん、ついにハロウィンの仮装まで軍事プロテクターと光学エラーと言い張るww』
『言い訳が無理矢理すぎて、世界中のイベント企画会社から怒られるレベルww今日も腹痛いわww』
俺の理不尽極まりない光学的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレのカボチャバケツツッコミに、部屋の中で転げ回っていたミイラ姿のコン吉とコン次郎は「キュイン!」と楽しそうに鳴き、三千五百万人を超えるチャット欄のリスナーたちも、腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ほんと、相変わらず言い訳だけは特大サイズの屁理屈な下僕ね)』
シロ様が、魔女の帽子をちょこんと揺らしながら、満足げにその美しいオッドアイの瞳を細めてゴロゴロと喉を鳴らした。
フランケンシュタインのボルトをつけた巨大ヒグマも、小春ちゃんのツッコミのリズムに合わせて「グゥ……」と楽しそうに鼻息を漏らし、おばあちゃん達が持ってきてくれた十勝産の蒸しカボチャを大きな手で美味しそうに口へと運んでいた。
「……まぁ、理由はどうあれ。陣地の冬期偽装の有用性が確認され、村の公金口座が外貨で天文学的に潤い、これからの厳しい冬に向けた完璧な暖房燃料と物資(ロジスティクス)が完全に確保されたなら、作戦としては完全勝利だ」
俺は背中のプラスチックの衝撃を少しだけさすりながら苦笑し、シロ様の純白の背中を撫で、水筒の熱いほうじ茶をゆっくりと飲み干した。
激務に潰されて逃げ込んできた、この限界集落。
最初は一人で静かに暮らすつもりだったが、今では世界一尊いオッドアイの神獣と、最強のフランケンヒグマ、ミイラ化したキツネ兄弟、世界一キレのある女子高生、そして世界中から見守る熱狂的なリスナーたちに囲まれた、世界一バグっていて温かい『絶対の聖域』になってしまった。
神獣の放つハロウィンの奇跡と、元需品科のブレない大豆ミート咀嚼。
限界集落初のハロウィンパーティーは、カボチャ提灯の温かい光と大爆笑に包まれながら、さらに規格外の幻想的な夜へと、どこまでも力強く加速していくのだった。