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黒羽-kuroha-
39
風花🎧🫧🥀@中学受験生
498
ちょこ
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文化祭当日。
校内は朝からざわめきと笑い声で満ちていた。
生徒会室では、最終確認が行われている。
ひよりはチェックリストを見ながら、一つずつ指 差し確認をしていた。
「来場動線、問題なし」 「展示トラブル、対応済み」 「予備プラン、共有完了」
その声は小さいけれど、迷いがなかった。
「…..完璧だな」
朝比奈が感心したように息を吐く。 書記も笑う。
「小鳥遊さんがいなかったら、絶対回ってません でした」
ひよりは少しだけ慌てて首を振った。
「みんなが動いてくれたからで…..」
「それをまとめたのが君だ」
一ノ瀬の声だった。
会長はひよりの横に立ち、自然に同じ資料をのぞき込む。
「最終判断、任せる」
その一言で、全員が動いた。
文化祭は、成功だった。
大きなトラブルもなく、来場者の流れはスムーズ。
他のクラスや先生からも、生徒会の運営を褒めら れる。
「中心は、小鳥遊さんですよ」
ひよりは、少し照れながら笑った。
夕方。
片付けが終わり、生徒会室に静けさが戻る。
「お疲れさま」
一ノ瀬が言うと、全員が同時に息を吐いた。
「…… あの」
ひよりが、少し勇気を出して口を開く。
「私、最初は….. ここにいていいのか、分からなくて」
誰も遮らなかった。
「でも、今は」
ひよりは顔を上げる。
「ここが、好きです」
朝比奈が、照れたように笑う。
「今さらだろ」
書記がうなずく。
「もう追い出す理由がありません」
一ノ瀬は、ひよりを見て、はっきりと言った。
「小鳥遊ひより」
名前を呼ばれる。
「これからも、生徒会にいてほしい」
それは確認であり、願いだった。
ひよりは、少しだけ考えてから、うなずいた。
「…..はい」
その瞬間、拍手が起きた。
大げさじゃない、でも確かな歓迎。
帰り道。
夕焼けの廊下で、一ノ瀬が並んで歩く。
「最初、君は自分を“地味”って思ってたよね」
「…..はい」
「でも、それは違う」
一ノ瀬は前を見たまま言う。
「静かで、強くて、必要な人だ」
ひよりは、胸の奥があたたかくなるのを感じた。
地味子じゃない。 誰かの影でもない。
小鳥遊ひよりは、生徒会の一員で–
放課後の生徒会室は、以前よりずっと静かだっ た。
文化祭が終わり、忙しさがひと段落したせいだ。
ひよりは窓際の席で、次年度用の引き継ぎ資料を まとめている。
キーボードを打つ音だけが、規則正しく響いてい た。
「相変わらず丁寧だな」
声をかけてきたのは、一ノ瀬だった。
「癖みたいなものです」
ひよりがそう答えると、一ノ瀬は向かいの椅子に座る。
「癖で、ここまでできるのは才能だよ」
以前なら、この言葉に戸惑っていた。
でも、今は少しだけ笑って受け取れる。
「….. ありがとうございます」
ドアが開いて、朝比奈が顔を出す。
「お、二人だけ?」
「作業中だ」
「邪魔なら帰るけど?」
そう言いながら、結局ソファに座る。
「小鳥遊、これ差し入れ」
机に置かれたのは、ひよりの好きな味の飲み物だった。
何も言わなくても、もう把握されている。
「覚えててくれたんですね」
「当たり前」
即答だった。
しばらくして、書記と会計も顔を出し、いつもの メンバーがそろう。
特別なことは何も起きない。
ただ、自然に笑い声が増える。
夕方。
片付けを終えて、ひよりが鞄を持つ。
「先、帰りますね」
「送る」
一ノ瀬が立ち上がる。
廊下を並んで歩きながら、ひよりがぽつりと言っ た。
「私、最初….. ここに入るの、怖かったです」
「知ってる」
「でも今は」
ひよりは少し考えてから続ける。
「ここが、帰ってくる場所みたいです」
一ノ瀬は足を止め、ひよりを見る。
「それなら」
静かに、でもはっきりと。
「俺たちは、ずっとここにいる」
校舎の外に出ると、空は薄い夕焼け色だった。
ひよりは一度振り返り、生徒会室のある窓を見上 げる。
そこは、もう“特別な場所”じゃない。
日常で、当たり前の居場所。
小鳥遊ひよりは、今日もそこへ戻ってくる。
守られながら、必要とされながら。
そして–
静かに、溺愛され続けている。
コメント
3件
わあ、最終話、読ませていただきました……! 文化祭の成功、そして何より、ひよりが自分の居場所を「好きです」って言えるまでになったのが本当に嬉しかったです。一ノ瀬くんの「静かで、強くて、必要な人だ」という言葉、じんわり心に沁みました。最後の「静かに、溺愛され続けている」という一文に、全ての温かさが詰まっているようで、読後感がとても優しかったです。素敵な物語をありがとうございました🌷