テラーノベル
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夜は、静かだった。
リビングの電気は落としてあって、キッチンの小さな灯りだけがついている。
窓の外では、遠くを走る車の音が、波みたいに行ったり来たりしていた。
らんはソファに座って、膝を抱えている。
テレビはついていない。
音がない方が、今日は楽だった。
いるまはキッチンで湯を沸かしていた。
カップを二つ、並べて置く。
「……ほら」
差し出されたのは、温かいココア。
甘い匂いが、ふわっと広がる。
「覚えてたんだ」
らんが言う。
「前、これ飲んでただろ」
「……うん」
らんは両手でカップを持つ。
少し熱くて、指先がじんとする。
その感覚が、ちゃんと“今ここ”にいる証拠みたいで、少し安心する。
いるまはソファの端に座る。
いつもより近い。
でも、触れない。
「……今日、平気だったか」
「うん。家にいる分には」
正直な返事。
「外は?」
「まだ、ちょっとだけ」
らんが視線を落とす。
「夢も、見るし」
いるまは黙る。
どう声をかけるか、考えている沈黙。
「……無理に忘れなくていい」
ぽつり。
「忘れろって言われる方が、きつい」
らんが顔を上げる。
「……いいの?」
「いい」
短い言葉。
でも、逃げてない。
らんは小さく息を吐いた。
「ありがと」
それだけで、胸が軽くなる。
少し間が空いて、らんが言う。
「ねえ、いるま」
「ん」
「俺さ……前は、“家族”って言葉が怖かった」
いるまは視線を向ける。
「期待して、裏切られるのが嫌で」
声は静か。
でも、ちゃんと震えている。
「でも今は……」
言葉を探す。
「完全に信じきれてるわけじゃないけど」
らんは、少しだけ笑う。
「それでも、一緒にいていいって思えてる」
その言葉は、決意みたいだった。
いるまは一瞬、目を伏せる。
「……俺も」
低い声。
「正直、どう接すりゃいいか分かんねえ」
「うん」
「兄とか弟とか、まだしっくりきてねえ」
「……うん」
「でも」
ここで、少しだけ間。
「いなくなられるのは、無理だ」
はっきりした声。
らんの喉が鳴る。
「……それ、かなり重い」
「知ってる」
でも否定しない。
ソファの上。
二人の間に、手一つ分の距離。
らんが、ほんの少しだけ体を寄せる。
触れない。
でも、温度が伝わる距離。
いるまは動かない。
拒まない。
「今日さ」
らんが小さく言う。
「帰ってきてくれたの、すごく嬉しかった」
「……家だし」
「それでも」
視線が合う。
「俺にとっては、“帰ってきてくれる人がいる”ってことだから」
その言葉に、いるまの胸が静かに鳴る。
「……重いって言っただろ」
「言った」
「でも」
小さく息を吐く。
「嫌じゃねえ」
らんは目を見開いて、それから、ゆっくり笑った。
夜が深くなる。
時計の針が進む音が、静かに響く。
らんはソファにもたれながら、目を閉じかけている。
「寝るか」
「……うん」
立ち上がろうとして、ふらつく。
その瞬間、いるまの手が伸びる。
腕を支える。
ほんの一瞬。
でも、確かに触れている。
「大丈夫」
らんが言う。
「離す」
「……うん」
でも、その声は名残惜しそうだった。
部屋の前。
「おやすみ」
「おやすみ」
ドアが閉まる。
それぞれの部屋。
それぞれの布団。
でも。
壁一枚向こうに、同じ夜を過ごしてる気配がある。
らんは天井を見ながら思う。
(境界線は、まだある)
でも。
(あの線、越えなくても、ちゃんと近い)
いるまも、同じように目を閉じていた。
(守るって、こういうことか)
答えはまだ出ない。
でも、少なくとも――
一人で探す必要は、もうなかった。
さいきん、いるらんにはまりまくってるぬしぃぃぃぃ((おいばかやめろ
はい。では!
コメント
6件
いるらん、神... てぇてぇ...だんだん距離が近くなっていく感覚...いいよねw
いるらんって…いいですよね((おい