「えっ…今度は盗難騒ぎなの?」
誕生日の2日前…
渡辺が、急に【会いたいと】連絡して来て迎えに行くと…車の中で聞かされた
「うん。例のあの人の衣装に付いてたカフスボタンが無くなったらしい…。今回のドラマの為に彼が作った一点物で…それが今朝から見当たらなくてもう大騒ぎ…」
何と、はた迷惑な人だろうか…
岩本は大きくため息を吐いて、渡辺にソッと目線を向ける
「………」
なんだか顔色が悪いのは、気のせいだろうか?
胃の辺りをギュッと握って、痛みに耐えている様子も伺えた
「それで。まだ何かあるでしょ?」
恋人の勘が働いて、岩本は渡辺を問い正す
「俺が…何処かに隠したんじゃ無いかって…」
「はぁ?翔太が、何でそんな事…」
呆れ返って言葉も出ない…
何処をどう解釈したら、翔太が犯人だなんて言うのだろうか?
「俺が昨日最後に衣装室を出たから…その時、取ったんじゃないかって…。本人が大きな声で言うもんだから…周りの視線が痛くって…」
辛そうな顔をして渡辺が言う
「ごめん…何か、苦しくて…。俺、どうしても照に会いたくなった…」
謝って来る渡辺を今すぐ抱きしめてやりたいが、今…自分は運転中…
『あぁ!もう!』
何とか自宅に辿り着き、部屋に入ると我慢出来ずに抱き締めた…
「それで翔太は、最後に衣装部屋に何しに行ったの?」
「昨日の最後の撮影で…皆んなでロケしに橋に行ったんだけど…」
「橋?あぁ…ロケで良く使われる、あの場所ね…」
渡辺に、その時撮った集合写真を見せてもらい
すぐに場所の特定をする事が出来た…
「あっ…これが、例のカフスボタンか…」
拡大して見ると、確かに気難しそうな若い俳優のスーツの袖口に
目立つ作りの薔薇を模したカフスボタンが…左右に一つずつ付いていた
「………」
岩本が何か考えている…
「ねぇ照、聞いてる?」
「あぁ…ごめん。それで、翔太は何で衣装室に?」
「俺は…ロケは乾燥するから、リップクリーム持って行って。衣装のポケットに入れてたんだけど…それを取り出し忘れて、取りに行ってた…」
渡辺は日頃からリップクリームを持ち歩いており…
頻繁に塗り直しているらしく、それが今回仇となった様だ
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