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時は××××年


人間を「食料」として口にすることが、貴族の中でも上級者の間でのみ暗黙の了解として許されていた時代があった。


生きた人間の肉を味わうなど、常人にとっては恐怖でしかないが、貴族の間ではそれが高級食材とされ、味わう者こそが真に上の者とされた。



その中でも、名家の頂点に立つ男「フランシス・ボヌフォワ」は、誰よりもその禁断の味に溺れていた。



一度それは舌に触れたが最後、他のどんな料理も意味を持たなくなる。


彼は今日もまた、市場の奥に足を踏み入れる。



「また、行かれるのですか?」



そう声をかけたのは、彼に長年仕えてきた召使い、マシューだった。


金髪で、眼鏡をかけた彼は、どこか怯えるように、しかし主人を止めたい一心で手を握りしめている。



「もちろんさ、マシュー。あれほどの美味、忘れられると思うかい?」


「ですが…前回も、仕入れの方が…あの、えっと……」


「やめろ」



言葉を遮られ、マシューは密かに唇を噛んだ。


その会話を、厨房の隅で聞いていたのが、フランシス付きの専属シェフ、フェリシアーノであった。


調理器具を握る手が小刻みに震えている。



「ヴェ……ま、また行くの? もう、やめようよ。俺、調理するの…やだよ」



フランシスはちらりと振り向き、優雅に笑みを浮かべる。



「怖がることはないさ…安心しろ、今回は若いのを頼んである。」



その言葉に、マシューの肩がピクリと震えた。


屋敷の扉が音を立てて閉まる。



それが、その行為が、考えが、どれほど人の道を外れているかなど、本人はとうに気づいていない。




すっかり日が落ちた頃、フランシスはコートを羽織り、ひとり馬車に乗った。


運転手に行き先を告げる声は、やけに穏やかで、しかしその奥には甘い狂気が潜んでいる。



「例の市場だ…いつもの裏路地まで。」



街の中心から外れた場所に、ひっそりと灯る赤い提灯。それが、権力者や上級貴族だけが入れる市場の目印だった。



扉をくぐると、鼻を刺すような血と香辛料の匂いが入り混じる。中には商品が並び、それぞれが怯えた瞳でこちらを見ている。



「おや…今日もお越しで、フランシス様」



老商人が、にやりと口角を上げた。



「上等品が入っております。貴族様方の間で、特に人気の若い血です」


「ふーん」



フランシスは腕を組みながら、彼について行った。


鎖の鳴る音、すすり泣く声。どれもが彼の耳には、旋律のように心地よかった。



「こちらなどいかがでしょう?」



老商人が指したのは、鉄格子の奥に座り込んだひとりの少年。


髪はボサボサ、細い手足が震えている。年の頃は十五ほどだろう。怯えた瞳でフランシスを見上げた。



「……悪くない」



フランシスは低く呟き、しゃがみ込む。


少年の頬を持ち上げると、目を細めた。



「綺麗な顔しているじゃない…お兄さんにピッタリ」



少年が喉を詰まらせたように震え、声にならない叫びをあげた。


老商人はそれを見て満足げに笑う。



「さすが、お目が高い。」



フランシスは立ち上がり、金貨の袋を取り出した。



「すぐに屋敷へ運べ」



そう言い残して背を向けた。




一方、遠く離れた屋敷の厨房では、マシューとフェリシアーノが、不安そうに窓の外を見つめていた。



「行っちゃいました」


「もう、止められないのかな、ヴェ…」



その声は、夜風に溶けて消えていった。



屋敷へ向かう馬車の中では、フランシスが静かに微笑んでいた。


まるで恋人に再会するような顔で ー







プリ小説では、この物語をひと足早く更新中‼️

まだ始めたてですが、是非、はやく読みたい方、興味がある方はプリ小説へ💨


活動名:むめい

プロフィールにもリンクが貼ってあります。


https://novel.prcm.jp/user/7DsBEW1jkfMjr5zf8aA6c2HPyQr1

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