お久しぶり
今回はショタ(世間知らず)の日本×陸海空を書きます
もうこれがマジ好き!っていうことなので、書きます
どうぞ
トン……トン……。
白い壁に吸い込まれるような、小さな小さなノックの音。
その音に目を開けると、いつものように白い天井があった。
窓はない。時計の針の音も、外の風の音も聞こえない。
ただ淡く光る照明だけが、この世界の太陽のように天井で瞬いていた。
「……だぁれ?」
日本は、弱々しい声でそうつぶやいた。
カチャリ、と鍵の外れる音。ゆっくりと扉が開く。
そこから入ってきたのは、深緑の制服を纏った日本の兄—陸だった。
「俺だ、日本。入ってもいいか?」
「うん……」
扉が閉じる音が、やけに重たく響く。
陸は静かに歩み寄り、白いシーツに座る小さな日本をゆっくりと見下ろした。
「顔色が悪いな。まだ熱があるだろう」
「昨日よりは……ましだよ」
「そうか。無理をするな。お前の体は、ほんの少しの風でも倒れてしまうんだ」
陸の手が日本の顔に触れる。厚い掌が、やさしく頭を撫でた。
その動きは穏やかでありながら、どこか決して外に出すまいとするような硬さがあった。
「……ねえ、陸兄様。窓、開けたいな。風の匂い、忘れちゃいそうで…」
陸は少しの間、黙り込んだ。
白い光が、二人の影を床に落とす。
「忘れていいさ。ここが、お前の世界だ」
その瞬間、扉の外から明るい声が響いた。
「おーい、日本、起きてる? 陸、また怖い顔してない?」
音もなく扉が開き、空が顔を覗かせた。
彼はいつもながら柔らかな笑みを浮かべていて、日本の前では一番優しい兄だった。
「ほら、日本、今日ね、プリン作ったんだ。食べられそう?」
「……空兄様のプリン、好き」
「ふふっ、そう言うと思った。あとで一緒に食べようね」
空が手を振るように笑うと、廊下の向こうから新たな足音が近づいてきた。
「入る」
低く穏やかな声。海だった。銀の盆を片手に持ち、静かに部屋へ入ってくる。
「日本、薬を持ってきたぞ」
「また……薬?」
「そう。これを飲めば楽になる。眠くなって、悪い夢も見なくなる」
海は柔らかく微笑んだ。
日本はしばらく小さな瓶を見つめ、ためらうように呟く。
「夢、見てもいいのに……」
「夢は、現実を壊すこともあるからね。」
海の声はまるで子守唄のようだった。
コトン、と瓶の音。
日本は黙って薬を飲み込んだ。喉が静かに動く。
陸が膝を折り、日本の目線に合わせた。
「日本、外は危険だ。お前の体じゃ生きていけない」
「……お外って、そんなに怖いんですか?」
空が笑って答える。
「うん。外の人は、優しくない。日本みたいに綺麗じゃないんだよ?」
「……それなら、ぼくはここにいるね」
その言葉に、三人は同時に微笑んだ。
けれど、陸の笑みだけがどこか痛みを帯びていた。
「そうだ。それでいい。ここにいれば、ずっと守ってやれる」
白い部屋の中で、無いはずの時計の音だけがやけに大きく響いた。
日本は、ぼんやりと天井を見上げた。
その瞳の奥に、微かな影が差す。
「……ねえ、陸兄様」
「なんだ?」
「ぼく、昨日、夢を見たんだ。赤色の水とか……黒い服の人たちとか。なんでかな?」
その瞬間、海と空の表情が止まる。
陸の手が、ピクリと動いた。
「……夢だ。気にするな」
「でも、あれ……ぼくが———」
「日本!」
空が慌てて手を伸ばし、日本の口を塞ぐように抱き寄せた。
「怖い夢だよ。そんなこと、君がするわけない」
海がそっと日本の手を取る。
「思い出す必要はない。……あの頃のことは」
陸が二人の肩越しに日本を見つめ、静かに囁く。
「お前は、俺たちの弟だ。外の泥に触れる必要なんかない」
その言葉に、日本の瞳がゆっくりと閉じた。
コトリ――と薬瓶の音。
眠りに落ちた小さな胸が、かすかに上下する。
しばらくして、陸が立ち上がった。
「……寝たか。」
「うん。薬、強めにしてある。」海が低く答える。
「また夢を見たら、どうする?」空の声がかすれる。
「手を打つ。……あいつが“外”を思い出す前にな。」
三人の視線が、白い扉に向けられる。
その向こうでは、日本が静かに眠っていた。
白い光の中、息の音だけがやさしく響く。
まるで――檻の中で咲く、一輪の花のように。
え?今回上手くない?
感想プリーズね!
コメント
5件
神ですね! サイコーです。 本当に助かります
oh