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(ほら、まただ……)
私の胸の奥に、澱(おり)のような黒い感情が広がっていく。
今に御子柴さんも、彼女の可愛さに釘付けになるはずだ。
今まで、私を見ていたはずの目は、芽衣が現れた瞬間に、いつも別の色に染まる。
私は、また「おまけの姉」に戻るんだ。
私は、御子柴さんの反応を見たくなくて、逃げるようにうつむいた。
「ねえ、御子柴さん。私、受付やってるんですけど、いつかメイク、教えてもらえたりしませんか?」
芽衣の甘い誘い文句が、耳に刺さる。
彼女は悪気なく、いつだって私の場所を奪っていく。
けれど。
予想に反して、返ってきたのは、ひどく淡白で、落ち着いた声だった。
「……差し入れ、ありがとうございます」
「ですが、今は仕事の最中なんです。関係者以外の方は、立ち入りをご遠慮いただいているんですよ」
「え……?」
芽衣の動きが止まった。
彼女も、自分の魅力が通じない相手がいるとは思っていなかったんだろう。
「白河さんのお仕事の邪魔になってしまいますから。お引き取りいただけますか」
御子柴さんの声には、拒絶の冷たさではなく、プロとしての揺るぎない「線引き」があった。
芽衣は少しだけ顔を赤くして、「……失礼しました」と、逃げるように去っていった。
嵐が去ったような静寂の中で、私は呆然としていた。
あんな風に芽衣をあしらった人は、初めてだった。
「……白河さん。少し、こちらへ」
「え……? 御子柴さん?」
御子柴さんは、私の返事も待たずに、私の手首をそっと掴んだ。