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自分はめっちゃにやけ止まらん
れつご!
静かな部屋――
時計の針が進む音だけが響く
知枝「……」(そっと手を見る)
握られている自分の手
愛空は眠っている
知枝「……そろそろ、帰るか……」(小さく呟く)
ゆっくりと、手を抜こうとする
その瞬間――
愛空「……ん……」
ギュッ
知枝「……っ、」(わずかに目を見開く)
愛空「……いかないで……」(寝ぼけた声)
知枝「……」
(……寝言、か)
もう一度、ゆっくり手を抜こうとする
だが――
愛空「……ちとせ……さん……」
知枝「……起きていますね?」
愛空「……半分……っす……」(目を少し開ける)
ぼんやりした視線
でも、確かに知枝を見ている
愛空「……帰るんすか……」
知枝「……長居はよくありませんから」
愛空「……」
少しだけ沈黙
愛空「……やだ……っす……」(小さく)
知枝「……」
愛空「……もうちょい……いてほしい……っす……」
知枝「……愛空さん」(少し低い声)
知枝「それは……」
言いかけて止まる
愛空「……迷惑……っすか……」(弱く笑う)
知枝「……そういうわけではありません」
愛空「……じゃあ……」
愛空は少しだけ体を起こす
まだ距離が近い
愛空「……なんで帰るんすか……」
知枝「……」
(答えは簡単だ)
(ここにいてはいけないからだ)
だが――
言葉にできない
愛空「……俺……」
愛空「……一人、嫌いなんすよ……」(ぽつり)
知枝「……」
愛空「……別に、普段は平気なんすけど……」
愛空「……今は……ちょっと……無理っす……」
(弱ってるせいで、余計に本音出てる……)
愛空「……だから……」
愛空「……いてほしい……っす……」
静寂
知枝「……」(目を伏せる)
(ずるいな……)
(その言い方は……)
知枝「……少しだけ、ですよ」
愛空「……ほんとっすか……」(少し安心した顔)
知枝「ええ」
愛空「……よかった……」
力が抜けるように、再びベッドに沈む
それでも
手は離さない
知枝「……手は、離してもらえますか」
愛空「……やだっす……」(即答)
知枝「……即答ですね」
愛空「……だって……」
愛空「……ちとせさん、すぐいなくなりそうなんで……」
知枝「……」
知枝「……そんなことは――」
言いかけて、止まる
(否定できないな……)
知枝「……離れませんよ、今は」
愛空「……今は、っすか……」
知枝「……」
愛空「……じゃあ……今だけでいいっす……」
知枝「……」
再び静かな時間
愛空「……ちとせさん……」
知枝「はい」
愛空「……さっきより……近いっすね……」
知枝「……あなたが引いたんでしょう」
愛空「……あー……そうかもっす……」(少し笑う)
知枝「……全く……」
でも、離れない
愛空「……」(じっと見つめる)
知枝「……そんなに見ないでください」
愛空「……無理っす……」
知枝「……なぜですか」
愛空「……かっこいいから……」(素直)
知枝「……」(完全に黙る)
愛空「……あ、また黙った……」
知枝「……寝てください」(少しだけ顔を逸らす)
愛空「……はーい……」
それでも
愛空「……ちとせさん……」
知枝「……なんですか」
愛空「……逃げないでくださいね……」(目を閉じながら)
知枝「……」
返事はしない
ただ――
知枝「……」(握られた手を、ほんの少しだけ握り返す)
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