テラーノベル
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「佐伯さん、髪型変えた?」 朝倉くんが、いつものように話しかけてきたかと思ったら、不意にそんな事を言ってきた。
いや、変えるも何も、変えようが無いんですけど。
私の髪型は、どうやっても変わらない。目隠れモブのおかっぱ頭から、どんなに変えようとしても、この世界が許してくれない。
切っても、留めても、硬めても、数分で元通り。だから変えようがない。
「いえ、何も変えておりませんよ」
「そうなんだ……」
朝倉くんは、明らかに納得してない顔の声色で呟いた。
何が納得出来ないんだろう。変えようがない髪型が、変わるはずが無いのに。
「なんですか、その腑に落ちないという顔は」
問われた朝倉くんは、言おうか言うまいか、少し悩んだ様子を見せてから、言葉を選びながら話し始めた。
「いやさ……、前は佐伯さんの目が、髪で隠れて見えなかったんだけど、今は見えてるから、髪型を変えたのかなって思んだ」
「左様ですか。ま、私としては、何も変えておりませんので」
何も変えてないのに、変えられもしないのに、髪型が変わったように見える?
なんだろう、朝倉くんの、私に対する感情の変化的な? 心持ちが変わったから、見え方が変わった的な。
いや、もしかしたら実際変わってるのか? この世界が、私を情報屋キャラとして認め始めたから、モブ要素が減ったとか。
ああ、今ものすごく、鏡が見たい。
モブ娘の私は髪型も変わらないし、お化粧しても意味ないから、鏡を見る習慣が無くなっちゃったんだよね。
「そうかぁ……、変な事聞いてゴメン」
「いえいえ、お気になさらず。あ、そうそう、相手によっては失礼になりますので、その点だけはお気をつけて」
「佐伯さんには、敵わないなあ」
朝倉くんは、照れ笑いのような苦笑いのような表情で、自分の席に戻っていった。
気になる、自分の髪がどうなってるのか、ものすごく気になる。
確認したいけど、今ここでお手洗いに走って鏡を確認するのは、情報屋・佐伯佳奈のキャラが崩れるような気がする。
何事にも動じない、飄々として、的確に情報をくれる、そういうキャラで居なければ。……ヒロインちゃん達に振り回されて、既にキャラ崩壊してる気がしないでもないけども。
確認するのは、家に帰ってからにしよう。
********
「お……おお………?」
見える、確かに左目が見える。すだれ越しって感じだけど、確かに見える。今まで、両目とも完全に隠れていたのに、目が視認出来るようになってる。
視界は前と同じ、というか前から障害物を全く感じないレベルで、クリアな視界が確保されていた。
そういう、この世界が『お前はモブだ』と私に突きつけるためだけに存在した前髪に、どういう訳か隙間が出来ている。
その隙間を、無理矢理閉じてみる。この前髪を取り払うために買ったアレコレで、隙間を閉じてみると、数分で元通り。挙動自体は前と変わらないけど、今は、髪で隠した目が現れる。
こっ……これはもしかして、モブじゃなくなりつつあるのでは!?
私の、情報屋というキャラ付けが、この世界に認められたのか、攻略対象じゃないけど、ネームドキャラくらいの立ち位置を得られた、という事?
え、もしかしたらもしかしたら、ヒロイン昇格の可能性………は、考えないでおこう。ミジメな気持ちになるだけだ。
あ〜〜〜〜んな可愛いヒロインが何人も居るのに、こんな準モブにアタックする主人公なんて居ないよ。
誠実な朝倉くんでも、どこぞのクズ系主人公でも、こっちに来るのはむしろ変。制作会社のTONAMieだって、それを許しはしないだろう。
だからまあ、あくまで期待するのは、描画範囲外に出たヒロインを、普通に視認できる程度の格上げまでにしておこう。
朝倉くんとくっつけるヒロインは、最終的に一人しか居ない。その候補に、私は入れないけど、選ばれなかったヒロインと、私が仲良くなったって、罰は当たらないだろう。
私がするべき事、それは、モブからの完全脱却を目指して、みんなの恋のキューピットを果たす事、そして、ヒロインちゃん達を、みんな幸せにすること。
さあ、次のヒロインの恋を叶えるために、攻略方法を考えてあげましょうか。
#R15
(株)姫神V
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16
コメント
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続きが楽しみ〜!