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#一次創作
ruruha
618
眠狂四郎
1,113
ruruha
793
きゆう
148
.:・.。. .。.:・
「では次の公式Xからの質問、千葉の『夜更かしの虹』さんからです、読みますね~」
司会者の芸人が読み上げる
「『原作を読んで毎晩夜更かしをしてしまいました、結婚詐欺師に騙された三人の女の子たちが、本当にそこで息をしているみたいで読み終えた後も、しばらく現実に戻れませんでした・・・美木先生は、どうやってあんなに生き生きとした人物を書けるのですか?どこから着想を得ていますか?』」
ヒヤリ・・・―来たわ・・・―
冷たい恐怖の悪寒が桜子の背筋を襲う・・・カクンッと一段自分が地面にめり込んだ感覚がし、手先まで冷たい感覚に広がる、桜子が柚原希実の作品(※タイトルを「あの虹の彼方へ」に変更して)を盗作してからは、度々悩まされているこの症状にも今はおなじみだ、病院では「自律神経失調症」と診断され薬を処方されたが効きやしない
客席から「わぁ」という柔らかな声が上がった、期待の目で大勢から見つめられる
「これは僕も聞きたいですね」
「うんうん」
声優達も頷く、桜子はニッコリ笑って空咳をし、マイクに向かって話し出した、この「どこから着想を得ているのか?」という質問が来ることはわかっていた、むしろ二年間初めてインタビューを受けた日からこの質問しかされていないような気がする、その度に用意してきた答えを、今では100通りのパターンで語れる
「私達・・・作家という生き物は常に空想しています、むしろ空想しない作家など一人もいません・・・だからといって物語で実際に起こるような出来事など経験しませんのよ、当然皆さんと同じ作家でも普通の生活をしております・・・」
「なるほど」
「そうですよね」
司会者達もうんうんと頷く
「普通の人なら自分の身に起きたこと以外想像するのは難しいかもしれませんが、そこが作家という生き物なのです、例えば銀行の窓口に出向いた時に作家の頭は「今ここに銀行強盗が入ってきたらどうするだろう?」そして電車に乗れば目の前の乗客のサラリーマンを見て「この人の人生には何があるだろう?」と・・・このサラリーマンの人生が自分に起きたら私はどうするだろう?自分が暮らしている世界と全く違う世界に異世界転生したら?サラリーマン気質の主人公はどんな行動をとるだろう?そこでも上司の言う事しか聞かない?・・・などなど」
桜子いかにも余裕があるように続ける
「そうすれば可能性は無限に広がります、自分の住む世界も、その途中で出会える人物も、学べることも・・・実際、私は長年小説教室を運営してきましたから、こんな風に生徒にいつも教えていたんですよ」
「でもそんな空想の中で「リアリティ」を生み出すのって難しいですよね、作中の20代初めの女の子達の会話は本当に桜子先生が見聞きしてきた感じで私達も演じてて笑っちゃいましたよ」
―余計な口出ししないでよ―
桜子はそう心の中に思いながら、突っ込んできた声優の「白咲澪」に微笑んだ、いつもこんな対談をする時に感じる感覚・・・彼女の目を探る・・・「本当にお前が思いついたのか?」という問いかけをされているような気がする
しかし「白咲澪」には純粋な好奇心だけが浮かんでいた、彼女はろくに物を知らないようだし、彼女の質問には何か猜疑心のようなものは何一つない、質問は単なる質問に過ぎない
「そうですね・・・実は私が無駄に歳をくっているだけで、精神的には実に幼いの」
「そんなことないですよ!幼くてアレは書けないですわ」
「少女のような心をお持ちだということですよ」
フフ・・・「嬉しいわ、誉め言葉として頂いておきますね」
「いやいや、本当に!」
今桜子に求められているものは、大勢の人に見つめられながらも、実にゆったりと構えて落ち着き払っている、才能ある原作者の姿だ
収録が進むにつれ、ファンからの質問に答えながら声優達の裏話に笑い、台本通りの感動的なエピソードを披露する・・・しかしマイクの前で語られる桜子の言葉は、どれも、どこか薄い膜を一枚隔てたところから聞こえてくるようだった
ステージの向こうに広がる数百人の笑顔・・・
その中のどこかに、あのピンク色の車椅子の影がひそんでいるような気がして、桜子は最後まで、客席の暗がりをまっすぐに見ることができなかった
コメント
2件
さぞかし夢見が悪かろうね😔
うわ、第36話、すごく好きな回でした。特に桜子が盗作の罪悪感と戦いながら、表向きは完璧な作家を演じきる緊張感がひりひり伝わってきました。あの「冷たい恐怖の悪寒」って表現、盗作の重みが身体症状として出てる感じがリアルで…。それに「ピンク色の車椅子」という具体的なイメージが、彼女の内面の脅威として最後までちらつくのも巧いなと。インタビューでの手慣れた受け答えの裏にある震え、すごく引き込まれました。星キラリさんの心理描写、相変わらず繊細で素敵です。続きが待ち遠しい!