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#一次創作
ruruha
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眠狂四郎
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ruruha
793
きゆう
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「お疲れ様でぇ~す」
「お疲れ様でぇ~す」
ラジオ収録が終わった控室前のロビーには、先ほど登壇した声優や関係者で賑わっていた、壁には『あの虹の彼方へ』のポスターが何枚も貼られ、その前をスタッフがケーブルの束を抱えて小走りに行き交っている
収録の熱がまだ余韻に残っていて誰もが誰かと楽しそうに歓談していた
ワイワイ・・・「でさ!六本木に新しく出来たラーメン屋がさ―」
「ああ~!知ってる!知ってる!」
先ほど司会を務めたお笑い芸人「ミルフィーユ弁当」の二人と、声優の桐島蓮達が楽しそうに雑談している、それを取り囲むようにマネージャーたちが立っていたり
少し離れた場所でディレクターが名刺を差し出して、霧島に着いてきた若手声優達に愛想よく頷いていた
―みんな楽しそうだな・・・―
一人部屋の控室に戻っても一人なので、桜子もホールに残ってその輪に近づいた
「あの・・・お疲れ様です・・・」
「うぃ~す!」
「お疲れ様でぇ~す・・・でさっ、それで・・・」
みんなの視線は桜子を通り越して、そのまま次の話題へ流れていった、無視されたというより、それぞれの話に夢中でそこには最初から桜子の入る隙間が空いていように思えた
声優達にとって大事なのは、次の仕事の種になるディレクターにコネを売ることであり、お笑い芸人の推薦で何か仕事をもらえるかもしれないという縁だった
彼らはしょっちゅう、色んな現場で顔を合わせてきた者同士の、言葉にしなくても通じ合う仲間意識が漂っているし、他府県から来た桜子はどこまでもよそ者扱いだった
その時、ロビーの入口からひときわ明るい声が響いた、女性声優の白咲澪がマネージャーと二人で、両手に大きな紙袋を提げて現れたのだ
「みなさぁ~ん!差し入れですよぉ~」
「うお~」
「待ってました!」
「俺、腹ペコ」
「さすが白咲さん!」
ワッと歓声が上がり、人の輪がほどけて白咲のまわりに集まっていく、彼女は一人一人の顔を見ながら手際良くドーナツ箱を回していった、みる所、誰がどの味を好きかもう全部把握しているような手つきだった
―私も・・・何か大阪から持って来ればよかったかも・・・―
桜子は、すっかり白咲に感心して呆然とその様子を眺めていた、今まで孤独に作家人生を歩んできて、人との仕事といえば工場勤務だけ、それに対し、いつも大勢の人と一緒に仕事をしていて、人との繋がりが大切な芸能人達の振る舞いには、とてもついていけない
「はい、美木先生もどうぞ!原宿で今日発売の新作ドーナツです」
白咲が笑顔で桜子の前にも小さな箱を差し出した
「あ・・・ありがとうございます」
桜子は両手で受け取った、蓋を開けると粉砂糖が薄く積もった、まだほんのりと温かいドーナツが入っていた、思わずその場で一口かじる
―わぁ・・・おいしい~東京って、こんなおいしいドーナツが売ってるんだぁ~―
外はクリスピーで中はふわりと柔らかい・・・甘さの奥にバニラの香りが静かに広がって思わず「美味しいです」と声に出して感想を言いたくなる
けれど振り向いた先では、もう誰もが元の輪に戻って笑い合っていて、その話の流れに桜子の一言を差し込む隙間はどこにもなかった、
当然、その輪に入っていくこともできず、何の面白味もなく、その場にいても誰も気にかけてくれない、自分一人が透明人間のよう
桜子は典型的な「電信柱女」だった(※ただその場に突っ立っているだけの女)
手の中のドーナツの半分が急に重くなる、ふと今の自分の体重が頭をよぎり、桜子は残りの半分をそっと箱に戻して自分の控室へ下がった
.:・.。. .。.:・
コメント
2件
疎外感…つまるところ、盗作した後ろめたさから来てるんだろうな
第37話、読みました。イベント後の賑わいの中で、桜子だけが輪に入れずに透明人間のように佇む描写がとても切なかったです。白咲さんの差し入れの手際の良さが、逆に桜子の孤独を浮き彫りにしていて…。ドーナツの甘さが、後半で重くなっていく心理描写が本当に丁寧で、思わず息を呑みました。タグに「盗作」「ミステリー」とあるので、この孤独感が今後の鍵になるのかな、と想像しながら続きが気になります。