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す、すげぇギャラリー….
バスケ部の部内戦を観に、体育館まで来たはいいものの俺が着く頃には既におよそ一学年分の女子がいた。
「まぁギリギリ見えるな….」
あまり近くには行けなかったが、なんとか視界に光を捉えられる場所を確保した。
(頼む…怪我だけはすんなよ….)
雛鳥を見守る親の気持ちがわかった気がした。
試合開始のホイッスルが鳴ると、女子の歓声も体育館中に響き渡った。
「成瀬先輩やっぱかっこいいぃ!!」
「いや私は上野先輩派!!!!」
「てかバスケ部顔面偏差値たっっか」
「2年がやばいよねまじで!!!」
やっぱ顔目当てで来る人が多いんだな…。
うちの男子バスケ部は、校内はもちろん顔面偏差値が高いと他校でも噂されるほどだ。
「……え、まって」
「誰あれ?!?!」
「1年生だよね…?!レベチで顔良い」
急に女子たちの向ける視線が変わったので、同じ方向を向くと、そこには光がいた。
光は170を優に越している。肩幅は広めで細身。
一見するとそれは安心感を覚える男らしい体つきだが、顔に目を向けると一気にイメージが変わるのだ。長い睫毛にくっきりとした二重線。小さい鼻に薄い唇。
「眉目秀麗」という言葉がよく似合う。
(….やっぱ人気出るよなぁ)
と女子の言葉に心の中で共感していると、
先輩チームのディフェンスを颯爽とすり抜け、ゴールを決める光の姿があった。
惹き付けられてしまった。
「「………..おぉおおおぉ!!!!!!」」
2秒ほどの沈黙の後、体育館中が湧いた。
「やっっっべぇ….」
思わず声に出ていた。なんとなく上手いんだろうなとは思っていたが、ここまでとは。
それから光はペースを落とすことなく、円滑にチームにボールを回してはフォローをし、大切なところはきちんと決めて先輩チームに見事勝利した。
(…やばい。本当に凄い。感動どころじゃない。)
試合が終わり、両チームが礼をした。
光は少し周りを見渡したあと俺を見つけ、ミサンガをつけた腕を上に高くあげた。
「想!!見ててくれたか?!?!」
「…当たり前だろ!!!くっそ痺れたわ!!」
「へへっやりぃ!」
子供のように笑いピースをした光は、太陽光に照らされより眩しく見えた。
「「きゃあぁ!!!」」
?!
俺も光も、唐突な歓声に困惑した。
「嘘でしょ1年の西凪コンビじゃん…!」
「凪谷くん一般人なのほんとにおかしいって 」
「いやいやそれいうなら西垣くんもでしょ!?」
「永遠にあの二人の絡み見てたい」
「ギャラリーに凪谷くんいたの気づきたかったあぁ…..」
に、西凪コンビって何…?
てかなんでみんな俺らのこと知って….
「おーい!光!更衣室行くぞ!」
「あ、はい!!想待ってて!!」
「わ、わかった!」
「光!その子もギャラリーに襲われないか心配だから連れてこい!バスケ部で匿う!」
…2年ってこんないい人ばっかなのか…?
俺は光に手を引かれ、バスケ部の更衣室に向かった。
「すみません、部の輪に乱入することになってしまって…助かりましたありがとうございます。」
「いいんだいいんだ!で、想くん?だっけ。すげぇ人気よな!」
「そうなんすよこいつ超イケメンで!俺が1番に声かけたんすよ?!」
「おーよしよし光すげぇなぁ」
先輩に撫でられご満悦な光を見ると、ここでも可愛がられてるんだなぁとほっこりする。
「うちの階でも噂になってるよ。一年に背の高いイケメンがいるって。」
自分で言うのもなんだが、背が高い自覚はある。もう190cmに手が届きそうだ。
「….そんな言われたら照れます」
精一杯の返しだった。
「いやぁ、前まで一番モテるっつったら新田だったのにな!抜かされてんのおもろいからからかってやろっと!」
「…やっぱ新田先輩モテますよねそりゃ..」
光が俯きがちに言う。
「え、光って新田先輩と面識あったの?」
「この前迫られてた時に助けてもらったんだ。てか想も知り合い?」
「この前言った”お礼したい人”だよ!」
「あぁそうだったのか!」
光も面識があったとは。
あの人、人助けすぎじゃね?
「あぁお前ら2人とも新田に助けられたのか!良い奴だよなほんと」
「めちゃくちゃ人望厚いもんなぁ。」
「あとあれだ、瀬波ちゃんもやばい」
「俺たちが汚しちゃいけない。妖精。」
先輩トークが終わりそうにないので、俺と光は先にお暇した。
「いやほんと、光めちゃくちゃかっこよかったわ」
「やったな!!お前のおかげ!」
「まじでうまかった!!!」
「照れるわ〜」
夕焼けが眩しい。
「..なぁてか、新田先輩って恋人いんのかな」
「ん?新田先輩?いないと思うよ。この前部活中青春したいって騒いでたし」
「あの人剣道部なんだ!..ふーんそっか!」
光の顔が晴れやかになる。
….もしかして…へぇ、なるほど?
まぁ光が自覚するまで…そっとしとくか!
「想なににやにやしてんだよー!」
「なんでもねーよ!」
疲れている光に歩幅を合わせつつ、俺は浮つく心を落ち着かせた。