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#高校生
第49話 「届かなかった頂点」2021年8月。
夏の甲子園。
柳城高校は準々決勝で関東の強豪を破った。
準決勝。
延長戦の末に勝利した。
気付けば全国ベスト4。
柳城史上最高成績だった。
福岡では大騒ぎになっていた。
おっちゃんの店も連日満席。
テレビの前には近所の人たちが集まる。
「柳城がここまで来るとはなあ」
「福間監督、すごかね」
おっちゃんは嬉しそうだった。
そして決勝。
相手は大阪の名門・帝都学院。
全国屈指の強豪。
試合前。
柴田が円陣の中心に立つ。
「最後や」
三年生にとって。
本当に最後だった。
決勝戦は柳城らしく戦った。
守る。
走る。
つなぐ。
だが相手は一枚上だった。
終盤まで食らいつく。
しかし八回。
帝都学院の四番が放った一打が試合を決めた。
柳城 2―4 帝都学院。
ゲームセット。
全国制覇はならなかった。
甲子園準優勝。
立派な成績だった。
だが。
選手たちは泣いていた。
柴田も。
ベンチの三年生たちも。
塁も。
史陽も。
舞も。
誰も満足していなかった。
優勝を目指していたからだ。
閉会式。
準優勝旗を受け取る。
アルプスから大きな拍手が送られる。
福間監督は選手たちを見つめていた。
宿舎へ戻るバス。
誰も話さない。
静かだった。
その時。
柴田が立ち上がる。
「俺たちは終わりや」
三年生たちが顔を上げる。
「でも柳城は終わらん」
塁を見る。
史陽を見る。
そして仲間たちを見る。
「次はお前たちの番や」
静かな言葉だった。
しかし、その言葉は深く残った。
数日後。
柳城高校へ戻る。
校門には大勢の生徒が集まっていた。
準優勝。
胸を張れる結果だった。
それでも。
グラウンドへ戻った福間監督は言う。
「明日から新チームや」
選手たちが驚く。
監督は続けた。
「悔しかったやろ」
誰も答えない。
答える必要がなかった。
「なら忘れるな」
全国準優勝。
それは誇りだった。
同時に。
届かなかった頂点でもあった。
甲子園の優勝旗。
あと一歩。
その一歩が、どれだけ遠いのか。
柳城高校は知った。
そして秋。
新しい挑戦が始まる。
塁と史陽の時代が、ゆっくりと幕を開けようとしていた。
第49話 終
コメント
1件
いや、もう…準優勝おめでとう、と言いたい気持ちと、でも悔しいよなっていう気持ちが混ざって泣きそうになりました。柴田が「柳城は終わらん」って後輩に託すシーン、グッときたなあ…。福間監督の「忘れるな」って言葉も、優勝旗の重さを感じさせる。塁と史陽の時代が始まるってラスト、次の物語が楽しみです。お疲れ様でした。