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「なに、この可愛い吸血鬼……」
涼さんは限界オタクみたいな事を言い、私の頭をヨシヨシと撫でる。
「もっと思いきり歯を立てて、きつく吸わないと痕なんてつかないよ?」
「変なところでスパルタにならないでください」
「俺が満足するキスマークをつけてくれるまで、リトライを要求するからね」
「……やばい。いきなり変なところで本気になった……」
こんな恥ずかしい事を、何回もやらされる訳にいかない。必ず成功させなくては。
「ど、どうやったら付けられるんですか?」
「唇を濡らして」
言われて、私はペロリと唇を舐める。
「唇は『う』の口」
その通りにすると、涼さんはニコッと笑った。
「目を閉じて」
指示を受け、私は唇を尖らせたまま目を閉じる。
すると涼さんが身動きをとった気配がし、カシャッとシャッター音が聞こえた。
「えっ?」
目を開けると、涼さんがデレデレした表情をしている。
「なんですか? なに?」
混乱していると、涼さんは幸せそうな顔でスマホの液晶画面を見て、一つ頷いてからスリープにして横に置いた。
「……何が起こったんですか?」
一体何をされたのか分かっていない私は、不安げに彼を見つめる。
「恵ちゃんのキス待ち顔が可愛くて……。スマホのロック画面にしていい?」
「…………!」
私は目をひん剥き、大きく息を吸うと唇を曲げる。
「ごめんごめん! 可愛くて! もうだまし討ちはしません!」
涼さんは両手を合わせて私にペコペコと頭を下げる。
「もー…………。……仕方ないなぁ…………。ロック画面は却下」
「……分かった」
意外と涼さんはあっさり引き、それから心配そうに私を見つめてきた。
「騙されて怒った?」
一応負い目があるのか、割と気にしているみたいだ。
「……反省してるならいいですけど。……別に私、これぐらいの事で怒りませんし。……でも、変な顔をいきなり撮られるのはやだから、次からは事前に言ってください。……必ずしも許可を出せるとは言えませんが」
「寝顔撮ったら駄目?」
すかさず懲りずに尋ねてくるの、さすが涼さんだな。ある意味感心する。
「駄目に決まってるじゃないですか。……って言っても、寝てる時に撮られたら分からないから、どうしようもないですけど。……起きてる時の記念写真とか、日常の中で許可を得ての写真ならいいですけど、寝室とかでのプライベートなのって怖いです」
「絶対に誰にも見せない。俺が一人で楽しむだけ。誰かが見たら、誘拐して監禁して二度と外に出さないとか、見た事を忘れる、誰にも言わないと誓わせて、破ったら三億ぐらいとか……」
「いやいやいやいやいやいやいやいや」
私は高速で突っ込みを入れ、疲れを覚えて溜め息をつく。
「……別に寝顔ぐらいいいですけど。誰にも見せない、私にも見せない、……の約束を守ってくれるなら」
「了解! ありがとう!」
「朱里も沢山私の寝顔撮ってますしね」
サラッと付け加えると、涼さんは目を見開いて何かがガンギマリしたような顔になった。怖い!
「ちょ……っ、朱里は特別ですからね! 場合によっては涼さんより上位存在なんですから! 何かしたら本気で怒りますし、場合によっては別れますからね!」
「……分かってるよ……」
涼さんは叱られた子供みたいな顔をし、唇を尖らせる。
「……キスマークの話でしょ? ちゃんとしますから、それで満足してくださいよ」
「そうだったね」
涼さんは落ち着きを取り戻し、気持ちを切り替えてから私に向かって首筋を晒す。
「唇を濡らして『う』の口」
おさらいをすると、涼さんが続きを言った。
「肌と唇を密着させて、真空状態にして強く吸う。それだけ。もしつかなかったら、何回かトライするとか、俺みたいに歯を少し立てるとか」
「……やってみます」
私は手首を縛られたまま、涼さんの首に腕を回し彼の首筋に顔を近づける。
(なるべく服に隠れそうな所……)
上のほうは見えやすそうだし、下のほうが面積があってやりやすそうだ。
「ん……」
私は、はぷ、と彼の口筋に唇を当て、思いきり吸ってみた。