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嬉々
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第六話 完璧という名の仮面
皇城にきた。
とても豪華だが上品で繊細な造りをしている。
うちとは大違いだ。
今回の茶会は第一皇子殿下のご友人である
オパール辺境伯家の長男ノエル様、
シトリン伯爵家の次男カイラス様、
オニキス伯爵家の次男ロベルト様
と第一皇子殿下のお茶会に混ぜていただく。という形で面会する。
普通なら一か月前にはアポイントメントをとってお邪魔するのだが、
私が知らされたのは一週間前だった。
通常皇城に行くときにはどの貴族も舐められないように服を仕立てたり
アクセサリーを購入したりする。
そのためにはやくから予定を立てておく必要がある。
それが子どもであっても同じことだ。
もし高位貴族の子供が既製品などを着ていたら
子どもにさえまともな服を着させられない貧乏な親(貴族)ということになる。
その準備期間がないということは……だ。
急なライバルの出現によって父上も母上もあせって権力をフル活用してねじ込んだのだろう。
わが両親ながら恥ずかしい。
今日会う第一皇子殿下もそうだが三名の令息は帝国の高位貴族の中でもかなり権力のある家の令息だ。
彼らから彼らの父にこのことが伝わるとは思っていないのだろうか。
そんなことを考えていたら皇子たちのいる部屋についたようだ。
隣にいた衛兵が扉をノックして開ける。
「はいってくれ。」
まだ幼いが覇気のある声が響く。
なるほど。
将軍譲りの意志の強そうな顔付き。
女帝譲りの賢そうな金色の瞳。
まだ幼いはずのそのまなざしはまだ7歳だとは思えないほどりりしいものだ。
「お初にお目にかかります。ペリドッド侯爵家のリア・ロルムス・フォン・ペリドッドにございます。」
まずは名乗る。
そして綺麗なカーテシー。
本当に緊張する。
いい大人が何言ってんだって感じだけど
ホントに緊張する。
殿下はこっちを品定めでもするぐらいじっと見つめてくるし
後ろの三人のご令息たちもこっちのほうを冷たい目でみてる。
正直なところこの子たちのことを舐めてた。
いや、なめすぎてた。
この人たち。特に殿下とオパール辺境伯家のノエル様。
普通の子供じゃない。
まだ全員7歳児のはずなのに
大人たちの闇も知ってるしそれの理由も知っている。
きっと私が何でここに来させられたのかもわかっているし
ペリドッド侯爵家のやばさ、異常さもすべて理解したうえでのこの目。
末恐ろしい子供たちだ。
でもずっとこっちを見られていると気まずいし怖い!
そんな私の心の声が顔に出てしまったのだろうか。
オパール辺境伯家のノエル様が声を掛けてくださった。
「殿下。なんでずっとご令嬢をにらみつけてるんですか。」
これを皮切りにシトリン伯爵家のカイラス様、オニキス侯爵家のロベルト様も次々に口を開く。
「そうですよ。殿下、早く座らせてあげてください。」
「いくら侯爵令嬢が美人だからって見とれてちゃダメですよ」
この子たちは何を言っているのだろう。
私は、自分の顔を見て前世と比べて美人だなと思ったけど
この世界の顔面偏差値がそもそもバカ高いし
侯爵家にいて容姿を誉められたことなんてないから
そんな美人などではないはずだし
なにより皇子にこんな口をきいたら不敬ではないのか?
大混乱の私をよそに会話はどんどん進んでいく。
「そうだな。すまなかった。侯爵令嬢。私の向かいの席に座ってくれ。」
「あ、はい。ありがとうございます…」
「挨拶が遅れました。オパール辺境伯家のノエル・イルバス・フォン・オパールと申します。」
「シトリン伯爵家のカイラス・ロレンス・フォン・シトリンと申します。ぜひカイラスと!」
「オニキス伯爵家のロベルト・ヴィル・フォン・オニキスです。ロベルトと呼んでください」
「ノエル様、カイラス様、ロベルト様。リア・ロルムス・フォン・ペリドッドです。リアとお呼びください。」
「あらためて。私はノアリオ帝国第一皇子。テオドール・ノアリオだ。」
「よろしくお願いいたします。テオドール様。」
「テオでいい。」
「わ、わかりました。殿、テオ様…」
この国では名前を教えられたら名前を呼んでもいいという意になる。
もし初めてあったはずの目上の人に愛称を教えられたら
よっぽどいいにくい名前かめちゃくちゃ気に入られたかである。
おかしい。
私はテオドール殿下に初めてあったし、初めて話す。
テオドールという名前はそこまで言いにくい名前でもない。
私が愛称呼びをしていい理由がないのだ。
ダメな理由もないが。
強いて言えばほかの令嬢から恨まれることぐらい。
「テオ。困惑させちゃダメじゃあないか。これじゃ話が出来ない。」
テ…オ…?
まさかの呼び捨て…?
ノエル様はそれほど殿下と仲がよいのか?
これなら母上の心配ももっともではないか。
ノエル様が殿下に妹をアピールすれば殿下は聞くだろう。
オパール辺境伯家は家格としても申し分ない。
だが…これは私にとっては好機だ。
今彼らと仲良くなって
婚約阻止せめて円満な婚約破棄をしてやろうじゃないか。
……?
なぜこの人たちは笑っているのだ?
「ノエル。お前は彼女がそんなやわなご令嬢に見えているのか?彼女、気づいてるぞ」
「ああ、分かっているよ。気づいたその上で完璧な所作を見せたこともね。」
「もう!テオ殿下もノエル様もまわりくどいな!」
「仕方がないだろう?この人たちはこういう人たちだ。」
「だからそうプリプリするなカイラス。すみませんね。この人ら悪気はないので安心してください。」
「はは!すまんすまん。リア…。あ~…と呼んでもいいか?」
「ええ、構いませんわ。皆様。」
「単刀直入に聞こう。ペリドッド侯爵家はリアから見てどんなところだ?」
「ある程度は調べているから隠さないでね。」
マジかー。
この子供怖い。
人間不信になりそう。
「そうですね…ごみの掃き溜めみたいなところです。」
ブフッ
あ。全員お茶吹いた。
すました顔で飲むからだよ。
いい茶葉なのに。勿体ない。
「ゲホッゲホッ…ご…ごみ?」
おお、一番に復活したのはカイラス様か。
「まさか君の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったよ…」
ショックを受けているのは殿下。
「こういうのが聞きたかったのではないのですか?」
「いや、まあそうなんだけど…」
言葉を濁してるのはノエル様。
それにしてもこの殿下とノエル様の組み合わせ本当に絵になるわね…
薄い本が5冊は書ける。
需要もありそう。
ちょっとチャラ男か愛されっ子の片鱗があるカイラス様と少し堅物そうなロベルト様もいいかもしれない。
ぐ腐腐…
「…い。おい。聞いてるのか?」
「リア様ー?侯爵家の野望について聞いてるんですよ。」
「え、ええ…すみません…」
「でも殿、…テオ様たちの心配しているようなことではないと思いますよ?」
「侯爵家は称賛の声が聞けるのかと自分たちが贅沢をできるかどうかしか興味がありませんから…」
「「「「…」」」」
解せぬって顔で固まっちゃった…。
「じゃ、じゃあリア様は?その、国母になりたいとか…」
「ありませんね。」
別に二十歳以上年下に興奮する変態でもないし。
「「「「…」」」」
解せぬって顔で黙っちゃった…。
「すみません…もう少しあくどいのかと思ってました…」
「あくどいはあくどいのですけれど。そこまで侯爵家に頭が回る人がいるとお思いですか?」
「「「「あ~…」」」」
そこで納得するのね…
「その…私との婚約に興味などないリアには申し訳ないのだがこれからも茶会に来てくれないか」
「構いませんわ。私にとっても利になりますし。ですがなぜ…?」
母上とか父上にどやされなくて済むからね!!
「その…私たちの会話についてこれる子供が少ないのだ。」
「レオや私たちが異常なのだけれどね。」
「いろいろ考えるときに女性の声があるとうれしいんですけど…」
カイラス様、上目遣いが上手だな…。
「なるほど。そういうことなら喜んで協力させていただきますわ。」
「ありがとうございます!」
「それでは○○についてなのだが……」
「ええそれについて私は……」
…
…
コンコン
「!入れ。」
誰だろう…?
「お時間でございます」
もうそんな時間なのか
とても良い茶会だった。
「皆様。本日は大変良い時間を過ごせました。私はこれにて失礼いたしますわ」
「ああ、今日はありがとう。」
…
馬車のドアしまったわね…
ようやく終わったぁ…
もうとにかく疲れた。
家に帰ってすぐに寝たい。
この後母上と父上に報告しないといけないのめんどい!
もうヤダぁ…
この後私は母上と父上にすごい褒められた。
でも、やっぱり心がこもってないと感じてしまう。
いつか完全に認めさせてみせる。
ともあれ、私の初めての顔合わせ大成功ですよ…
にゃむにゃむ……
ぐぅ……
コメント
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第6話、めっちゃ面白かった!リアが完璧なカーテシーを決めてる横で内心「緊張する!」ってパニクってるギャップに毎回やられるわ。テオ殿下たちもただのガキじゃなくて、ちゃんとリアの本質見抜いてる感じがすごい。特に「ごみの掃き溜め」発言で全員お茶吹き出すシーン、めっちゃツボった。リアの頭の中で「薄い本5冊書ける」って妄想してるのも最高すぎる🔥 次回も楽しみ!