視界の中に、突如として現れた赤色。その香りを嗅ぐよりも先に耳に入ってきた声。
「ずっと、ずっと前から好きだったんです、フランス」
それは1000年以上前から関わってきた隣国の飽きるほど聞いた声だった。突き出されたそれは三本の赤い薔薇。意味を理解するよりも先にその言葉と表情が全てを物語っている。その頬は林檎みたいに赤く染まっているくせに、2つの目がこちらを刺すほど真っ直ぐ見つめていて、思わず心臓がきゅっとする。
まるでドラマのワンシーンかのような雰囲気に誘われて、頬が緩む。自然にふわりと言葉が出てくる。
でも、何故か聞こえない。
辺りが白く濁って、感覚が薄れていく。
気がついた時には―
先程とは打って変わって、暗い天井が目に入った。ぼやけた意識のまま、自分のさっきまでを確認する。
「、、、、、、夢かよ、、」
しばらくの間、半目開きで天井を眺める。
言われた言葉、相手の表情、2人を包み込む香りと暖かさを思い出していた。
、、、いや、いやいやいやいや
「なんッッでアイツなんかに告白される夢見なきゃいけないんだよ!!!!!!!」
(そりゃもうご近所さんどころか隣のエセ紳士島国まで届くような大声がフランス宅に響き渡った。なお、その事に気がついて焦る余裕もない。)
「はあ!?いやいやいや待て待て落ち着け僕、アイツはあのイギリスだぞ?あのブリカsだぞ?メシマズ国家だぞ?栄光ある孤立(笑)とか言っておきながら全然友達出来ないぼっちなだけのあのイギリスだぞ!?!?!(酷い)
なんでそんな奴に告白される夢見るんだよ!!そしてなにちゃっかり僕もOKな雰囲気出してんの!?!?意味わかんないんだけど!!!!」
(ここまで一息である)
声を荒らげたせいか上がったり下がったりする肩を抑えながら、混乱する頭を落ち着かせる。
嘘だろ。いつにも増して身体が火照っているような気がしたのは、早口でまくし立てた言葉のせいだけじゃない。そんなことはフランス自身もとうに分かっていた。
、、、たしかに夢の中の自分は、あのイギリスにときめいた。でも現実は違う。違うと思いたい。
僕とアイツはただの隣国で、敵国で、協商相手で、喧嘩ばっかりする仲じゃないか。そんな感情を持つような関係じゃない。
「、、、そう思ってたんだけどなぁ、、、、、」
頬に集まる熱がいたたまれない。
今やイギリスの事を考えると胸が高鳴る自分がいる。いやまあアイツもそこまで悪くはない方かなと思ってる自分もいる。
そうだ。僕は今、男同士で、国同士で、あのイギリスで、そんな超超ハードモードな恋に気がついてしまったんだ。
「、、、いや、、、とりあえずなんか飲も、、、、、、、、、」
とにかく今すぐにでも気持ちを和らげたかった。一旦そう無理やり結論付けた事にして、僕はゆっくりとベットから身を乗り出した。
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