テラーノベル
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収録の合間の休憩時間。楽屋の喧騒から少し離れ、岩本照は部屋の隅にあるソファに深く沈み込んでいた。
目を閉じ、眉間に少しだけ皺を寄せている。
振付の構成に行き詰まっているのか、それとも単純に糖分が不足しているのか。
「……照」
ふと、穏やかで低い、ベルベットのような声が降ってきた。
岩本が目を開けると、そこには優雅に微笑む宮舘涼太が立っていた。
「……舘さん」
「難しい顔をしてんじゃん…眉間のシワ、深くなってるよ」
宮舘はそう言うと、持っていた小さな紙袋を岩本の膝の上に置いた。
高級洋菓子店のロゴが入っている。
「……これ」
「差し入れ。……と言いたいところだけど、照のために確保しといたの」
「え?」
「限定のチョコカヌレ。食べたがってじゃん?」
岩本の目がパチクリと瞬く。
確かに数日前、何気なくスマホを見ながら「これ美味そう」と呟いた覚えがあるが、まさかそれを覚えていて、わざわざ手に入れてくるとは。
「……マジで? いいの?」
「もちろん。仲間の願いじゃん?」
「ふっ、なんだそれ、貴族かよ!」
「そういうことにしといて」
岩本の表情が一気に緩む。
早速箱を開け、カヌレを一つ摘むと、嬉しそうに口に放り込んだ。
カリッとした外側と、濃厚なチョコの甘さが口いっぱいに広がる。
「……んー! うまっ……」
「それは良かった」
岩本がとろけそうな顔で咀嚼するのを、宮舘は満足そうに見下ろしている。
そして、自然な動作で隣に座ると、岩本の肩にポンと手を置いた。
「……無理しすぎないでよね、リーダー」
「……ん」
「背負うものが多いなら、いつでも俺によこしてよね」
キザな台詞だが、宮舘が言うと不思議と頼もしい事実に聞こえる。
岩本は口元のチョコを指で拭いながら、隣に座る幼馴染の相棒(ゆり組)とはまた違う、ドシッとした安定感を持つ男を見た。
「……ありがとな、涼太」
「当然でしょ?」
岩本は少しだけ体を傾け、宮舘の肩に自分の肩を預けた。
ベタベタするわけではない。ただ、隣にある熱を感じるだけ。
それでも、岩本にとってはこの上ない安らぎだった。
「……もう一個、食っていい?」
「いいよ。もちろん」
甘いカヌレと、甘い言葉。
最強のリーダーを陰で支えるロイヤルな気遣いは、今日も完璧に機能しているのだった。
コメント
1件
やっぱ舘様は優雅だねー 先回りしてなんでもやっちゃう 続き待ってます