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「…。」
「…あの、ありがとうございます!」
父親が、メイドに深々と頭を下げる。
メイドは笑って、少女の方を見た。
「…███さんは、お母様のこと…どう思ってます?」
少女は考える。
顎に手を添え、少しの間目を瞑った。
「うぅん…こわい人、ですかね。」
「…財閥の皇になってからは、私のことを…そこまで見てくれた訳じゃないので、分からないです。」
メイドは優しく笑った。
「…そうですか。」
そう言うと、少女と父親からは背を向けた。
そして裏側で、少し興味深そうな、だが優しそうで、それでも不思議な_薄ら笑いを浮かべた。
まるで何を思っているのかが読めないが_彼女は呟いた。
「…初めてですね…こういった事例は。」
「_実際、こんなことありましたっけね?…あはは。」
_それが、少女と父の耳に届くことはなかった。
メイドは少女達に向き直ると、携帯電話を取り出した。
「…私の連絡先です。」
そう言って携帯電話の画面を見せた。
父親は深々と頭を下げた。
「…どうなるかは、私には分かりません、ですが…この冷酷な財閥をどうか…変えてください。」
少女も、父親に倣ってお辞儀をした。
「よろしくお願いします、メイドさん。」
メイドのロングスカートが微かに揺れた。
「えぇ、 もちろんです。」
「何かあったら_すぐ私に連絡すること。」
「こちらからも何かあったら連絡しますので。」
「はい。」
2人は同時にそう返事し、互いに背を向けあった。
そして3人の間にまるで泡のように発生していた空気から、メイドは出ていった。
驚くほどにクールで、だが寄り添うこともできる_そんなメイドに続き、2人も出ていった。
3人を覆うようにあった泡は弾け、そこには、もぬけの殻となった光差し込む玄関前だけが_残っていた。
__父親は願った。
_スノウ属するこの財閥が、無くなってくれますように…と。
父親と少女は歩いた。
雲から陽が微かに差し込んで、少女の白い髪を照らした。
それはまるで_大雪の日の翌日_溶けかけた雪が、晴れた時の陽に当たるかのようであった。
__少女の髪が、少し青みがかった。
白い肌には、彼女の多少冷酷だが、それ以上の優しさを象徴するようなあたたかさと、やわらかさがあった。
___
「…どうしたのさ、私の顔じっと見て。」
Latteの黒いショートヘアに右側にだけある三つ編みが揺れる。
Latteはその赤い目でじっと八幡宮を見つめていた。
八幡宮は困惑した表情をした、相も変わらず彼女は能天気そうである。
だがLatteは気づいていた。
彼女は、何かを隠している。
「………うーーん。」
「…うーーーん!!」
わざとらしく考える素振りを見せてみるが、八幡宮は察しが悪いのか、隠しているのか、全く自分のことについてを吐こうとしなかった。
「いやー!!なぁんか怪しいなーって!ねぇ?」
「なぁにが!!?わかんないわかんない!!」
いつの間にか敬語は解けていた。
_この様子だと、本当に八幡宮は気がついていないようだ。
隠しているような素振りもない。
…いや隠している気がするのだが_それが全く見えないと言った方がいいのだろうか?
Latteは考えた。
聞くのも失礼な気がしたので聞こうとはしなかった、出来れば自分から吐いてくれないかな、なんて思っていた。
「………」
何かを観察するように、目を細めじっと八幡宮を見つめた。
「…っなにさ!?怖いよ、怖いって!!」
八幡宮はついに目を逸らし始めた。
「じーーーー………」
「もう、流石に怒るよ!?怖いって!」
そう言って少し恥ずかしそうにLatteから目を逸らした。
Latteはしばらくだまりこくった。
(うーん、ダメそうだな…。)
(…ちょっとくらい相談できた方が楽になれる気が…いや、私にも言えるかなこれ…?)
Latteは八幡宮の方から視線を外し前を向く。すると陽が差し込んで、生ぬるい空気が流れ込んだ。
沈黙が続き、崩れた地面の上を歩く音だけが響いた。
もうここには誰もいない、陽と水溜まりだけがそこにはあった。
_人のタヒ体がある、なんてこともなかった。
_まるで滅びた街のように、本当に静かで、何も無い場所だ。
建物は抉り取られたみたいに壊され、そのまま放置されている。
遠くではかすかに灰色の煙が雲と混じりあっていくのが見えるが、それがどれほど遠いのか、2人には分からなかった。
Latteは考えた。
_今聞くには_タイミングが悪いと。
そうしてしばらく歩くうち、八幡宮は空の方を向いて立ち止まる。
八幡宮は一呼吸おいて、話し始める。
「多分、もうすぐでレイラーさんって人のところに着くかな。」
「……出てくれるかは分からないんだけど。」
「多分…大きなヒントにはなると思うよ。」
そう静かに話す八幡宮に、Latteは聞く。
「レイラーさん?…ってどういう人なの?」
八幡宮はいたずらっぽく笑って答えた。
「…驚くと思うけど…財閥の皇だよ。」
Latteは少し考えたのち、この反逆前に見たニュースを思い出す。
遠くの煙を見つめながら呟いた。
「あぁそういえば、テレビに出てたっけ?あの人…。 」
八幡宮は頷いた。
そんな八幡宮を見て、Latteはしばらくかんがえたのち、はっとした顔をする。
「もしかして、八幡宮さんの相方って…レイラーさん?」
八幡宮は親指を静かに上げ、グッドサインを出した。
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