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屋 鳥 之 愛

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屋 鳥 之 愛

2 - 🐦‍⬛ 闇 が 咲 い た 夜

♥

2,013

2025年02月16日

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第一章


第二話    闇が咲いた夜






























暗 い




















重 い






























苦 し い 、






























寂 し 、い































冷 、 た い ?


















嗅ぎ慣れた消毒液の匂いが

鼻腔をくすぐる





「  此処、は  」









窓からは月の光が射していて

とても綺麗だと思った









「  医務室ですよ  」





聞き慣れた声なのに、何故か身体が強ばってしまう

濡れたタオルが額からずるりと落ちる

それはもうぬるくなっていて、自分の身体が普段より熱いことを知らせた





「  御気分はどうですか、お嬢様  」


「  最悪よ  」





それなのに私は平気なフリをして笑うの


その時、私と変わらない大きさの手が

額を撫でた





「  熱、未だ有りますね   」

其の手は冷たく、優しい

思わず其れをはらいたくなった






「  弒 す な ら 早 く し て  」





一瞬、時が止まった


底の無い黒が私を見つめる





「  弒 さ な い よ  」





その言葉に何故か泣きたくなる

だって、そんなの可笑しいから





「  どう 、して  」


「  逆に何でこの状況で弒されると思う訳?  」

「  流石の僕も理解不能なんだけど 」





何故、そんなに怒っているのだろう

彼の顔は見るからに不機嫌そうで、年相応の少年に見える

普段の彼からは想像も出来ない





「  だって、可笑しいじゃない  」


「  何が  」


「  医師センセイは、 」

「  森さんあの人は、っ  」

「  私を、弒す為に貴方を 、…  」





しどろもどろに成っている自覚は有った

それでも尚、彼に疑問を投げ掛けずにはいられなかった

この良すぎる頭の中での妄想を

嘘だと言って欲しかったから

永すぎる沈黙を終わらせたのは

彼がついた同じく長すぎた溜息だった





「  君は本当に馬鹿だ  」





そう言いベッドの隅に腰掛け

私の長い髪を耳にかけた





「  僕のこと怖い?  」


「  そ、ゆ訳じゃ  」


「  ふーん  」





あ、今見下された





「  君さ  」

「  本当にタヒにたいわけ?  」

「  は 、 」


「  お嬢様は何方かと云うと 生 に執着してると思うよ  」






凡てお見通し、とでも言いたいのだろうか。


彼の顔を見るのがとても恐ろしい

堪らなくなって目を逸らす






「  ぃ … た ゎよ  」


「  何?  」


「  生きたいわよッ!  」






寝台ベッド敷布シーツに皺が付く


太宰はお嬢様を見つめている






「  でも っ 、  」

「  そんなの、叶わないじゃない  」






”  ポートマフィア首領の孫娘  ”


そんなくだらない肩書きを今迄も、これからも一生背負って生きていく







「  この境遇に生まれてしまった私は  」

「  生きる事を望まれない  」






お祖父様の部下、敵対組織は勿論

私の存在を利用しようとする者は必ず現れる

外に出ようものなら、命を狙われるのは当たり前、誘拐だってありふれた話し






「  生きた心地がしないのよ  」

「  何処にいても、何をしていても  」






漠然とした恐怖と不安に押し潰されそうになる

そんな日々を過ごしていくぐらいなら






「  だから誰かに弒される前に、タヒんでしまおうと思った  」






唯 其れだけだった






「  痛いのも、怖いのも、苦しいのも  」

「  全部大っ嫌い  」






本当に、其れだけ

私が タヒ に執着する理由なんて、他に無い






「  其れだけ?  」






太宰は首を傾げた

表情はさっきと変わっていない

私の凡てを見透かしているような

そんな顔






「  其れだけよ  」


「  本当に?  」


「  執拗い  」


「  本当の事言ってくれたらもう聞かないよ  」






何時からこの男はこんなに執拗い奴になったのか





「 ねぇ、知ってる? 」





氷のような手が私の頬に触れた

息の仕方を忘れる

此処だけ刻が止まっているのだろうか





「 君は僕が手を伸ばすと、何時も救われたような顔をするんだよ 」

彼の云った言葉が理解できなかった






「 何を云っているのか理解できないという顔だね  」





じゃあ、教えてあげよう。


寝台がギジリと聲をあげる

気づけば太宰の顔は自分の顔の数センチ先

驚いて身を引くと、そのまま寝台へと押し倒される



彼の背景が淡い光で照らされた








「  っ 、ぁ  」


嗚呼、本当に君は酷い








「  君さ、入水する時  」

「  何時も仰向けで飛び込むよね  」

「  どうしてか、わかる?  」







仰向けに沈めば君が手を伸ばすあの瞬間を

この目に焼きつけることが出来るから


なんて、


馬 鹿 馬 鹿 し い







「  生きてていいと云われてる様な気がしたの 」




だって君は、何時も助けてくれるから


例えそれが

お祖父様のめいであっても

唯の同情だったとしても


も う ど う で も 良 か っ た の


ね ぇ 、 誰 か






「  生きて良いって云って  」






頬を伝う雫と共に

叶うはずのないそんな夢を口にした







































太宰 side














最初の頃は其れはもう面倒だった






ある町の闇医者森さんに拾われ

ポートマフィア首領孫娘の護衛役なんて

大層な役目を与えられた日には

今日中に自弒してやると心に誓った






それなのに

その孫娘とやらはどうも自弒が好きらしく

少し目を離せば部屋で首吊りをするわ、薬を大量摂取するわで其れはもう大変だった

いっその事そのまま放置しようかと思った日もあったが

そんな事があれば自分の首が飛ぶ

タヒねるのは本望だが、痛いのは嫌だ


嫌気が差して初めて文句を云った日には

自殺愛好家に云われたくはないと即答された

隣で笑う森さんに下剤を盛ったのは確かその日だ








自弒をしていない日は

何処をどう見てもそこら辺にいる”普通の女の子”だった

彼女は人当たりが良く、何時でも感謝と礼儀を忘れなかった

森さんにも手当をしてもらった後は必ず一言御礼を云う

それどころか自分の世話役である広津さんにまで敬語を使う始末

よくあの首領からこんな娘が生まれたと森さんが感心していた


学校に行けない分、勉強は自主的に行っているらしく、部屋には参考書や単語帳が綺麗に整頓されて並べられていた











お嬢様は

不思議なくらい優しく、タヒに急ぐ人だった















其れがお嬢様でないと知ったのは

九月上旬

まだ夏の暑さが残る季節の事




何を思ったのか

散歩をしている途中で川に仰向けで飛び込んだ

お嬢様が入水自弒を試みたのはこれが初めてだった


溜め息をついて仕方なく川に飛び込んだ


水中は冷たく透き通っている

水を吸った服が酷く重くて邪魔くさい

目の前で沈んでいくお嬢様の手を掴もうと

手を伸ばした








その瞳は美しかった




硝子のように透き通ったソレは

確かに僕を見つめている

そして安堵したように笑った、

でも、 泣き出しそうな笑顔だと思った














「  け ゛ホ ッ  、ゴ ほ ッ  」








お嬢様を川岸に運んで

その場にしゃがみ込んだ

身体が酸素を求めているのが分かる

そして人ひとり運べる体力が自分にあったのかと感心する






「  ケ ホ ッ 、 …   はは、 」

「  又失敗かぁ  」






今にも泣き出しそうな顔をして

お嬢様は呟いた



彼女の頬を伝うのは

あの透き通った川水か

それとも _



































































「  生きて良いって云って  」




















_ 嗚呼、又泣いた



本当に苛つく。



あの日、お嬢様が本当は タヒにたがり ではなく生きたがり だと知った



生きたいけど自分にはその資格はないと諦め、誰かに弑されるぐらいなら自弒してしまおうと云う



哀 れ な 女 の 子

そ ん な 彼 女 が 僕 は 大 嫌 い だ



でも

 にしがみつくお嬢様は

唯々美しいと思った












「  良いよ  」












あの日

白黒モノクロの世界に

ほんの少しだけ光を見た


たった其れだけの事


























































それでも初めて

この酸化する世界の中で

君だけが唯一

美しいと想えたから



















































「  お嬢様がタヒぬのは嫌だから  」


歪んだ嗚咽も、震える肩も、溢れ落ちる涙も、 か弱い心も、ぬるい体温も


全部僕だけが知ってればいいよ
































寶もう


僕が大嫌いな君に成らないで






































































𝐍𝐞𝐱𝐭


第三話

然して、人は生きて

この作品はいかがでしたか?

2,013

コメント

6

ユーザー

最初のどんどん現実が見えてくる様な表現が大好物で好きです

ユーザー

生きてたよこんばんわ

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