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目が覚めた。
周囲が暗いのでまだ夜かと思ったが、よく考えると明るくなる訳はない。
穴の中なのだから。
時間確認魔法を起動。朝4時ちょっと前。
最近は毎朝、夜明け前に砂浜で舌平目拾いをするのが日課だ。
だからこの時間に起きてしまったのだろう。
起きるのは5時予定だから、まだ早過ぎる。
なのでここは邪道だが、前世でお世話になった短時間睡眠魔法を使おう。
疲れすぎているときは、往々にして眠れなくなる。
それでも眠った場合、時間通り起きる事が出来なくなる。
そんな時に便利な魔法がこれだ。
やっと修理が終わった現場の機械室の隙間のような空間でも、報告書を書き終わった後の事務所の硬い床でも、この魔法を使えばきっちり設定時間だけ寝ることが可能だ。
しかも眠った事により、疲れが完全に取れた気になる事が出来る。
実際に身体がどれくらい消耗しているかは別として。
さて、5時起床ならちょうど1時間寝ればいいだろう。
という事で魔法を起動。
◇◇◇
意識が戻ったところで、時間確認魔法を起動。
朝5時ちょっと前。起床していいだろう。
ただ、ついでだから身支度もベッドの上で済ませておこう。
身体洗浄魔法を起動する。
これはどんな場所にいようと、どんな姿勢であろうと、風呂&歯磨き&整髪が出来てしまうという便利魔法だ。
ただ、これを使いすぎるのは問題だったりする。
たとえウン十連勤で、かつここ数週間家に帰っていなくても、先程の短時間睡眠魔法とあわせれば、朝はすっきりさっぱりしてしまう。
だから周りに、ボロボロ状態だと理解して貰えないのだ。
結果、ある日ばったりと……
いや、この世界にはもう関係ないことだ。
だから気にする必要はない。
ささっとベッドで服を着替えて準備はOK。
そう思ったところで、カーテンの向こうが明るくなった。
クリスタさんが起床して、照明魔法を起動したのだろう。
梯子を下りて、仕切っているカーテンに触れないようにして、テーブルがある方へ移動する。
それでは朝食を出すとしよう。
冒険者ギルドの用意した朝食は、
○ 分厚いベーコンエッグ
○ レタス、トマト、キュウリ、マッシュポテトのサラダ
○ 野菜スープ
○ パン
という、過不足ない食事。
しかしミーニャさんは魚を欲しがるだろう。
だから小魚のフライも出しておく。
「魚の匂いニャあ~」
ミーニャさんが起きたようだ。
◇◇◇
重野営セットを魔法収納に入れたら、今日も探索開始だ。
昨日と同じ隊列で歩き始めて30分程度経過し、第10採掘坑との分岐直前まで来たところで、
俺の魔力探知と透視魔法が、今までと違う状態を捉えた。
「この先、第11採掘坑との分岐を過ぎた辺りから、一気に周囲の魔素の様子が変わっているようです。
また、その地点からスケルトンがいます。取り敢えず第11採掘坑分岐のすぐ向こう側に2体、その80m先にも2体。更に第12採掘坑分岐に3体。その先は今確認中です」
「スケルトンだけなら、そう怖くはないのニャ。でもダンジョンでも遺跡でもないのに、スケルトンが出てくるのは変なのニャ」
確かにミーニャさんの言う通りだ。
「ええ。おそらく奥に何かあります。洞窟の外に流れている水にアンデッド系の汚染が見られたのと、同じ原因でしょう。
一度ここで止まりましょう。エイダンさん、見える範囲ぎりぎりまで先を確認していただけますか」
「わかりました」
俺の透視魔法は、その気になれば余裕で数キロ先まで見ることが出来る。
そこまで行くと、透視魔法というより遠視魔法になるけれど。
この2つの魔法は、どちらも空間を短絡して先を見るという意味では同じ魔法だ。
だから名称以外の違いは、それほど無かったりする。
少なくとも俺の認識では。
本当はこういった探索ではなく、水中のどの辺に魚がいるかを探すのに使いたい魔法だ。
でもまあ、今は仕方ないから先を確認。
「第11採掘坑分岐の先から、概ね80mおきに2体か3体ずつスケルトンがいるのは、さっき報告した通りです。
第11採掘坑には魔物なし。第12採掘坑にはゾンビバットが30匹程度。
第12採掘坑分岐から先、80mのところでこの坑道は終わっています。略図より少しだけ長くなっていますが、他は略図の通りです」
そこまでは、魔力探知と透視魔法で問題無く見えている。
問題はその先だ。
「その先、本来なら坑道が終わるはずの所に穴が開いています。そこから先に進めるようですが、魔素濃度が一気に濃くなっていて、よく見えません」
そう、魔素が濃すぎて見えないのだ。
こんな反応は、俺にとって前世あわせても初めてだ。
ただ、他にわかる事はひとつだけある。
「見えないですが、その先にかなり大きな魔力反応があるように感じます」
神殿の超大型自動祈祷装置並か、それ以上。
そう言いそうになって、まずいと思って俺は口をつぐむ。
この世界では、俺はあくまで冒険者としてやっていくつもりだ。
だからそういった事は、言わない方がいい。
「大きい魔力反応って、スケルトンが一杯いるという感じかニャ」
いや違う、ミーニャさん。
「スケルトンでは、何体集まってもこんな反応にはならないと思います。遙かに強力な魔物か、もしくは魔素を発するような魔法的、魔術的な装置か。俺では、それ以上はわかりません」
そう、俺の知識では何があるのかわからない。
ただ言えるのは、近づきたくないという事だ。
はっきり言って、ここまでの魔力反応は、もう俺には危険としか感じられない。