テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「もしお疲れでなかったら、お風呂上がりに尊さんと話してあげてください」
「ええ、ありがとう」
百合さんにお礼を言われ、私はニコッと笑う。
「朱里さんは、尊に優しくしてもらえているの?」
逆に彼女に尋ねられ、私は満面の笑顔で答えた。
「はい! 尊さんいわく、ふくふくの猫にしてもらえてます」
その言葉を聞き、全員が笑う。
「……私、ちょっと前まで、周りすべてが嫌いでツンツンしていたんですが……。まぁー……、気がついたら尊さんに手懐けられて、餌付けもされて、幸せでふくふくにされましたね……」
小牧さんが言った。
「ちょっと前までの尊くんも似たようなものだったし、人って大切なものができると『幸せにしてあげたい』って思うものだから。そのベクトルがお互いに向いたなら最高じゃない? 朱里さんだけふくふくにされたんじゃなくて、尊くんも確実に幸せになってる。……ちょっと前までうちの店に来ていた彼、あの歳で疲れ果てて夢も希望もないって感じだったけど……。最近はすごーく幸せそうなのよね」
私は照れ笑いする。
「それなら……、いいんですが……」
「私が店を開いたのが二十五歳の時でね、最初にお母さんから尊くんを紹介されたのが、高校卒業前かしら。亡くなったさゆり伯母さんの話はたまに聞いていて、その子供……従兄なんだと聞いた時は、他の従兄弟みたいに子供の頃からの付き合いじゃなかったから、違和感はあったわね。……でも凄く痩せていて不幸そうで、『優しくしてあげたいな』って思ったの」
今まで知らなかった尊さんのエピソードを聞け、私は興味津々だ。
「お祖母ちゃんの家にはすぐ連れて行けなくても、東雲家は別だからね。お母さんが尊くんに連絡をつけて連れてきたけど、んまー……、すごーくよそよそしくて、遠慮していて。『自分なんてここにいちゃいけない』って感じだったから、私たち、徹底的に懐かせようとしたわね」
「尊さんこそ野良猫でしたか」
私が「あはは!」と笑うと、みんなも笑う。
「でも何回か会っていくうちに、少しずつ慣れてくれたわ。私が飲食店をやりたいって話をしたら、篠宮ホールディングスに勤めている観点から、色々アドバイスしてくれて。私がお店を出す頃には部長さんになってたわね。その頃から何もかもを諦めた雰囲気があったけれど、朱里さんと付き合い始める直前まで『気にしてる部下がいる』って楽しそうに言ってて」
(わぁ……)
尊さんに惚気(?)られていたと知り、私はニマニマする。
「その時、『いつかそいつを彼女として紹介できたらいいな』ってお酒を飲みながら言ってたの。決して名前は口にしなかったけど、今なら朱里さんの事だって分かるわ」
皆さんに微笑ましい目を向けられ、私は「えへへ……」と照れ笑いする。
ちえりさんが言った。
「朱里さんも今まで色々あったでしょうけど、尊くんと支え合って幸せにね。これから結婚式を控えているでしょうけど、速水家も東雲家も、全力で応援するから。……あっ、もしも着物の事で困ったら、ぜひ『しののめ』に相談して」
「はい!」
「も~! お母さんったら商売上手なんだから」
弥生さんが呆れたように言い、私は「餅は餅屋ですから」と笑う。お餅食べたい。
少しの沈黙のあと、百合さんは肩にお湯をかけて言った。
「みんな、進んでいたのね。停滞していたのは私だけ。……でも、今はもうみんなのお陰で前に進めるわ」
「きっと尊さんも待ってます。みんなで進みましょう」
「ええ」
お風呂上がり、小牧さんと弥生さんに「魅惑のボディ」とキャーキャー言われてしまった。
「すっごいメリハリボディ! 素敵~! 秘訣は!?」
「えっと……、沢山食べる?」
「それじゃあ、私ならハリハリボディになっちゃう。メリもほしい!」
「これこれ、人様の裸を見て、あれこれ言うんじゃありません」
ちえりさんに注意され、彼女たちはしぶしぶと離れていく。
(でも、裸の付き合いができて良かったな)
着替えた私は百合さんにロビーにいてもらうよう頼み、ステテテテ……と尊さんを呼びに行った。
「尊さん! ミコアタックのお時間です!」
「お? ……おう」
ソファに座ってテレビを見ていた彼は、うろたえつつも頷く。
臣桜
352
臣桜
48,287
#女主人公
#シークレットベビー
朝永ゆうり
2,216
コメント
1件
わああ第872話読んだよ〜!!🌸✨ お風呂で女子会&尊さんの過去エピソード、尊さんが昔は「野良猫」みたいだったって聞いて胸がギュッとしたよ😭💔 でも今は朱里さんと出会ってふくふく幸せそうで、そのギャップがエモすぎる…!! 「ミコアタックのお時間です!」のとこで思わずニヤニヤしちゃった♡ 尊さんの照れ顔が目に浮かぶ〜!! 裸の付き合いってまさに信頼の証だよね、尊さんと朱里さんの関係がじんわり温かくて、このエピソード好きすぎる😭💕