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臣桜
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臣桜
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#女主人公
#シークレットベビー
朝永ゆうり
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「百合さんにね、ロビーにいてもらうようお願いしたので、告白するなら今だ!」
「……学生かよ」
冷静に突っ込みを入れた尊さんは、チョンと私の頭をチョップし、そのままクシャクシャと撫でてきた。
「……ま、でもありがとな。勇気出して行ってくる」
「はい!」
私はソファに座ってまた美味しいオリジナルジュースを飲み、ニマニマして尊さんを見守る。
彼は荷物からラッピングされた箱を出すと、折れないようにスーツケースのネットの部分に入れたショッパーを出し、その中に入れる。
「……はぁ……。……やべぇ。緊張する」
「掌に〝百合〟って三回書いて呑んでみたらどうです?」
「……なんか、不敬だろ、それ」
彼はクスクス笑い、「んじゃ、行ってくるわ」と部屋を出て行った。
**
「はぁ……」
俺――、篠宮尊は廊下に出て溜め息をつき、ブラブラとゆっくりとした足取りでロビーへ向かう。
百合さんが今の俺を拒絶していないのは分かる。
春分の日に和解できた時、確かに俺と彼女は歩み寄り、新たに祖母と孫として接していこうと決めた。
後日、俺は改めて百合さんに手紙を送り、受け入れてくれた事への礼を綴った。
もっと沢山の事を書くべきだったかもしれないが、母やあかりの事が混じると色んな感情が噴き出て、酔っ払いが管を巻いたみたいな、みっともない長文になりそうでやめた。
ペンで字を書く際に誤字を減らしたく、最初にパソコンでベースとなる文章を打ったが、呆れるほどの長文になってしまい、データごと消した。
結局、【先日はありがとうございました。色々ありましたが、今後とも宜しくお願いいたします】をもう少し長くしたような、当たり障りのない文章となってしまった。
(結局、二人きりでまともに話をしてないんだよな。……あー……、緊張する)
贈り物も自分なりに色々考えた物だが、気に入ってくれるか分からない。
(……どうかな……)
俺はチラッと手に持っているショッパーを一瞥し、溜め息をつく。
なるべく時間を稼ぐためにゆっくり歩いたが、とうとうロビーに着いてしまった。
中央の通路を挟んで左右にソファがある造りになっていて、そのどちらにいるのか探そうとした時――。
「尊」
名前を呼ぶ声がしてそちらを見ると、髪を下ろし、ゆったりとしたワンピースを身に纏った百合さんがいた。
「……こんばんは」
俺は会釈をし、テーブルを挟んで彼女の向かいに座る。
「……疲れてませんか?」
「いい温泉に入らせてもらったから、かなりスッキリしたわ。まだまだ元気よ。……と言いたいところだけど、東京に帰ったら少しゆっくり休みましょうかしらね」
「そうしてください。正直、俺も疲れてるので」
「ふふっ、さすがに疲れちゃったわよね」
笑い合った時、俺はおずおずとショッパーをテーブルの上に載せた。
「……あの、これ。誕生日の贈り物と言ったらあまりに安価かもしれませんが……」
「あら、ありがとう。値段なんて気にしないわ。見てもいい?」
「はい」
百合さんはショッパーの中から細長い箱と、大きめの箱を出す。
そして一つを開封し、大きめのアコヤ真珠がついたペンダントを見て「まぁ……」と目を見開く。
「素敵だわ。ありがとう。尊と一緒に伊勢へ来た思い出になるわね」
「フォーマル用も考えたのですが、カジュアルなほうが着けられる機会が多いかと思って」
「考えてくれてありがとう。沢山つけるわ」
そう言ったあと、彼女はもう一つの贈り物を開封する。
「凄く立派ね」
百合さんは箱を開けたあと、プチプチの緩衝材を丁寧にとっていく。
そして中から現れた物を見て目を瞠った。
「ベタかもしれませんが……」
俺が贈り物にしたのは、オーダーメイドのグランドピアノ型オルゴールだ。
ピアノタイプの中でも一番櫛歯の数が多い三十本の物で、より複雑なメロディーを奏でられる。
ガラスの中にオルゴール本体があり、余白の部分にはプリザーブドフラワーが入っている。
事前に職人さんに伝えて希望のメロディーで作ってもらい、ピアノの蓋を開けた部分には金属のプレートで【Happy Birthday Yuri】と彼女の誕生日を刻印してもらった。
コメント
1件
第873話、読ませていただきました。尊さんが百合さんにプレゼントを渡すために緊張しながら準備してる姿、めっちゃ可愛かったです!笑 「掌に百合って三回書いて呑む」って提案する主人公も好きだし、それに「不敬だろ」って返す尊さんも尊い…。真珠のペンダントも、オーダーメイドのオルゴールも、百合さんのことをしっかり考えて選んだのが伝わってきて、胸がじんわり温かくなりました。お互いに歩み寄ろうとしてる空気感が本当に素敵です🌙🤍