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Secret Lovers

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Secret Lovers

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2023年04月17日

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Side黄


彼が指定した店は、飲み屋街のはずれにあるバーだった。

普通の居酒屋を想像していた俺は、着いてみて驚いた。隠れ家的な場所で、詳しく聞いていないとわからないようなところだ。

ドアをくぐると、間接照明がお洒落な店内を見渡す。

カウンターの奥のほうの席で、大我は座っていた。

「お待たせ。合ってるかわかんなくてビビったよ」

そっか、と笑う。

「ここは親父と何回か来たことがある店でさ。お酒も料理も美味いんだよ」

なるほど、と理解した。確かに京本家なら御用達でもおかしくない。

「でも…なんで俺と?」

ずっと訊きたかったことを口にした。期待はしないでおこうと思った。

「何となく。だって樹とかジェシーはダメだったもん。仕事らしくて。高地なら空いてそうだし」

やっぱりか、と肩を落とす。

「樹とは家上がらせてもらって飲んでるし」

その言葉に衝撃を受ける。いや、関係性を考えれば妥当だろう。

「ほんとに? 適当に俺って決めたの?」

「うん。なんか誰かと飲みたい気分でさ。めっちゃ久しぶりだわ」

その「誰か」で俺を選んでくれたことだけでも嬉しかった。

「何にする?」

大我に問われ、「俺は…じゃあジンライム。大我は?」

「リキュールにしようかな。カシスとか」

それぞれバーテンダーに注文する。

あまり意識しすぎたらまた心拍数が上がりそうで、うつむいた。なるべくメンバーとして接しよう。

それでも少しだけ見たくて、左の大我にちらりと顔を向ける。

薄暗い中、頭上のライトに照らされて綺麗な色白の肌と茶髪が浮かび上がる。

目の前でボトルを振るバーテンダーを見つめているからか、俺の視線には気づかない。

しかしいつの間にか見とれていた。大我がふとこちらを向き、「ん?」と眉を上げる。

何でもない、とつぶやく。耳が赤くなるのが自分でもわかった。

やがて、俺のジンライムと大我のカシスソーダがカウンターに置かれる。一口含むと、爽やかで軽い柑橘の香りが広がった。

隣の彼の表情も緩む。「どう?」

美味しい、と答えた。率直な感想だった。

「良かった。また樹も連れてこよう」

その言葉にドキリとなる。大我は何気なく言ってるだろうけど、また心が痛んだ。その痛みで胸が張り裂けそうだ。

それを無理やりお酒で流す。

そのあと運ばれてきた、彼がおすすめした料理もまた美味しくて、純粋にこの場を楽しんでいた。



「なあ高地ー、一緒に来てくんね?」

午後11時を過ぎて店を出て、タクシーに2人で乗り込んだときのことだった。

酔って少し間延びした口調で、大我は言った。その言葉の俺にとっての重大性をたぶん考えずに。

「っ……。わかった」

その瞬間から、落ち着いていた心拍がまた暴れだす。

しかし冷静に考える。「家に入って」なんて一言もいっていない。玄関先で見送る、ただそれだけだ。

大我に俺の気持ちを伝えていないということを思い出したのは、彼の家に着く直前だった。


続く

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