すっかり冬の装いとなったロスサントスには毎日のように雪が降り、クリスマスの飾りで彩られている。
「やりますよキャップ、これは真剣勝負す。」
「あぁもちろん。ズルは無しだ、フリじゃないからな。」
「じゃあここに背中合わせに立って…3歩数えながら進んだ後ローリングして勝負と。キャップが数えて良いすよ。」
「良いのか?じゃあいくぞ……1…2…3!」
静寂の中、掛け声と同時に地面に転がってお互い振り返る。つぼ浦が投げた雪玉はキャップの顔面にクリーンヒット、一瞬遅れてキャップが投げた玉はつぼ浦の肩に当たった。
「…ぐ…ぐあああぁぁ!!」
「…フッ、俺の勝ちっすね。」
「流石つぼつぼ、特殊刑事課に相応しい実力だ。」
雪の上に倒れたキャップに近づき手を差し伸べていると一部始終を見ていた署員達が集まって来た。
「雪遊びしてるんですかー?私もやりたーい!」
「みれいちゃんこれは遊びじゃない、男と男の真剣勝負だ。」
「なずぴも遊ぶー!キモセンもやろ!」
「おーじゃあ雪合戦やるか!署長もやるすか!?」
「雪合戦か、たまには童心に返るのも悪くないな。」
2チームに分かれて駐車場で遊び始める。銀世界の中ワイワイ騒ぐ声が一層大きく聞こえた気がした。
「いくっすよ署長、おりゃ!」
「甘いぞつぼつぼ!」
馬ウアーに向かって投げた玉はヒョイと避けられたがペシャッと音がしたと思ったら、ちょうど扉から出てきて後ろにいた青井の頭に当たった。
「…あ、やっべ…」
「つぼ浦くーん?何してるのかな?」
「すまんアオセン!違うって、わざとじゃない!」
「やって良いのはやられる覚悟があるやつだけだよなぁ?」
「待て待てその笑顔怖いって!雪玉もなんかデケェし!皆助けてくれ!!」
追いかけっこが始まり署員達はその2人に向かって雪玉を投げ、もうチームなんて関係無い大乱闘が繰り広げられた。ギャーギャー言いながらひとしきり暴れ終えると全員息が上がっている。
「ハァー、ハァ…つっっかれたぁー!」
「ハァ、ハァ、アオセンこえーって。」
「もう動けなーい…」
「皆雪の上寝てみなよ、これ気持ち良い。」
「本当だ、きもちー!」
「つめてー!」
「今日は正に冬の空だな、澄んでて綺麗だ。」
キーモットに言われ大の字に寝っ転がる一同。全員が空をじっと見上げているので気付かれないだろう、と青井はこっそりつぼ浦の手を握ってみると緩く握り返してきた。
「なずぴふっかーつ!雪だるま作りたい!オッサン達は動けないか、みれい先輩作ろう!」
「いいねぇ作ろう!」
「それなら正面の入り口前が良いんじゃないか?警察署が可愛くなるぞ。」
女子署員2人が走り出そうとした時、小型事件の通知が連続で鳴ったと同時に全員立ち上がった。
「西高速フリーカ行ってきまーす!」
「発砲通知連続で鳴ってる所あるな、ここも行ったほうが良いか。」
「砂漠のフリーカ俺行くよ。」
「つぼ浦店舗強盗行きまーす。」
つぼ浦も後に続いてさぁ行くぞと車を出そうとした所を青井に引き止められた。
「待ったつぼ浦、お前は先に身体暖めろ。」
「ん?大丈夫すよ、車ん中で暖まるぜ。」
「いやダメ、風邪引くぞ。」
耳に鼻、手や足の先が真っ赤になっているつぼ浦を休憩室まで連れて来てソファに座らせた。置いてあったブランケットを肩に掛ける。
「暖かいもん何飲む?コーヒー、紅茶、ココア、スープもある。」
「アオセンは過保護だなー…んー…スープが良い。」
「はいよー……はい、俺も入れて。」
2人でブランケットを被り身を寄せあってストーブに手を向けているとつぼ浦の鼻をすする音が聞こえた。
「お前服をもっと冬仕様にする気は無いの?」
「これが冬服だぜ、裏起毛だからな。」
「無いのね、じゃあもっと暖めなきゃな。」
「あっちょいそこまではダメだ!もう充分だから!」
制止しようとするつぼ浦を無視して抱き締めた。全身が冷えきってるのがより分かると更に力が込められる。
「ほらこんなに冷たいじゃん、くっついたら早く暖まるでしょ。」
「ぅぅ…誰か来たらどうすんだよ…」
そう言いながらも青井に包まれるのが嬉しくて拒否しきれないつぼ浦は青井の首元に顔を埋めた。
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