『いや、あたしはてっきりさ、あんたがまたあの屑ママに何か言われたのかなって心配していたんだ。なのにまさか…単なる恋愛相談だったなんてね…幸せな相談で安心した。』
「………は?」
思わず携帯を落としそうになる。
レン…アイ……れんあい…恋愛…?
「誰の…恋愛…?」
『は?美里亜のでしょ?どう考えてもその店長に惚れてんじゃん。』
当然のようにしれっと言う。その瞬間私の思考は停止した。
何…言ってるの?
『結局美里亜は、自分よりも店長がその女を庇う発言をしたのがショックだったんじゃん?それってやきもちでしょ。』
やきもち…。私が店長に?それって私が店長のことをす…
「は…はあぁぁ?」
ようやく思考回路が通常に戻ってきた。溜まっていた声が一気に押し寄せてくる。
予想外の返答に、未だに思考が追い付かない。
店長のことを私が?いやいやいや、それだけは天地がひっくり返ってもあり得ない。
はず…なのに何だろう、この心臓のうるささは。まるで図星をつかれて焦っているような…
「な…ないない!!あんな情けなくてダサい人…第一、おじさんだよ?あり得ないし…」
「え、だってあんた援交してたじゃん?おっさんとヤれるんでしょ?」
「そ、それは…恋愛感情は全くなかったし…ああっ…もう…!!」
自分でも取り乱してるのが分かる。受話器越しに、姫菜の楽しそうな笑い声が聞こえてきて、それが更に私の羞恥心を煽った。
「くっくく…そんなあんた…初めて見た……くすくす…」
「……姫菜…からかうのは止めて。」
少し声のトーンを低くして言うと、笑い声はぴたりと止む。
「ごめんごめん。…ま、ここからは真面目に答えるけどさ。恋愛感情かはさておき、美里亜がそこまでもやもやしているのは、きっとその店長のことを想ってるからだとあたしは思う。どうでもいい人にはそんな感情、抱けないよ。やきもちだった…って、認めてみなよ?したら、少し楽になれんじゃん?」
「やき…もち。」
目を閉じて思い返してみる。蘇ってくるのは、店長の言葉と笑顔。
……そう言えば、私が変わる時にはいつも店長の言葉がきっかけだった。
援交を止めたのも、姫菜と普通の友達になれたことも。
初めはこんな私に何で絡んでくるのかなって。厄介なやつに援交を見つかったって、すぐ仕事を辞めるつもりだったのに。
いつの間にか店長をからかうのが面白くなっていた。
そんなにいい事は言わなかったのに、何故か店長と接していると変わろうって思えていて…
そんな店長が私の中で他の人とは違う存在になっていたんだ。
だから私以外の人と話していると、面白くなくて…
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