テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
魂......魂!? 死んだってこと......?
おはよーございます
今眠いのに頑張って書きました…
文字間違ってたらすいません
― 完結編 ―
空は曇天。
まるで、ふたりのために幕が下りたみたいな、灰色の朝だった。
「ねぇ、りうら。そろそろ、限界だと思うんだ」
「……何が?」
「この生活も、俺たちの愛も。もう、“出口”に近い気がする」
俺――ないこは、もうかつての“優等生”でも“常識人”でもなかった。
あの地下の部屋で、時間も記憶も涙も、全部捨てた。
代わりに、りうらを選んだ。
この狂った愛を、選んだ。
「そっか……うん、わかってた」
りうらは静かに笑った。
前よりも少し痩せた横顔。目の下には疲労の影。
でも、その笑顔だけは――やっぱり世界でいちばん綺麗だった。
「じゃあさ、ないこ。最後の地獄、見せに行こうか」
◆
標的は、かつての“友達”。
無関心なクラスメイトたち。
俺たちが壊れていく間、誰ひとり助けようとしなかった人間たち。
りうらは笑いながら、ひとりずつ呼び出した。
俺は静かに、手を汚した。
「これが、俺たちの愛。――わかる?」
誰もわかろうとしなかった。
悲鳴も涙も命乞いも、どれも全部、薄っぺらくて。
結局、最後まで誰ひとり“俺たちの地獄”に入ってこれなかった。
◆
「ねぇ、ないこ」
「ん」
「最後さ、ふたりで死のう?」
それはもう、自然な提案だった。
誰もいない教室。夜の静けさに包まれた、あの日の屋上。
俺たちは制服姿のまま、肩を寄せて座っていた。
ポケットの中には、白い錠剤。
用意したのはりうら。選んだのは俺。
「後悔してない?」
「あるわけないじゃん。俺、りうらと一緒に死ねるなら、本望だよ」
「……バカだなぁ、お前」
「バカでいい。お前とバカになれてよかった」
りうらが、小さく笑う。
「じゃあ……せーので飲もっか」
「うん」
「――せーの」
二人同時に、錠剤を口に放る。
喉を通った瞬間、世界が遠ざかっていく。
「ねぇ、ないこ」
「……ん?」
「最後に、言わせて。
俺、お前のこと……世界でいちばん、好きだった」
「俺もだよ。りうら。
ずっと、お前しかいなかった。
最初から、最後まで」
――手をつないだまま、意識が闇に落ちていく。
その瞬間、不思議なほど、心が軽かった。
◆
翌朝のニュースは、それほど騒がしくなかった。
ひとつの事件と、ふたつの遺体と、ひとつの手紙。
「本当の地獄は、愛が壊れた世界だった。
でも、俺たちは、壊れたままで愛し続けた。
だから、大丈夫。ふたりで地獄に落ちたなら、それはもう地獄じゃない」
誰も理解できなかった。
でも、それでいい。
理解されなくても、もう誰の声も届かない。
この地獄は、俺たちふたりのためだけに存在していたんだから。
そして今、
世界のどこかで――
白く乾いた風が吹く夜、
ふたりの魂は、笑いながら手を取り合って堕ちていく。
これが、ふたりの“永遠”。
「本当の地獄を、見せてあげる♡」