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いいぞ桜ちゃん✊️ 偽装婚なんぞ蹴散らして必ずやジンをモノにするのよ〜🚩 でも飲み過ぎ心配過だわ😣
.:・.。. .。.:・
桜はドスドスと庭園の小道を抜け、胸に渦巻くモヤモヤを抱えたまま山田旅館の大広間へと戻った
母・フネとの言い争いが頭の中で反響し、怒りと悲しみで涙の跡が頬を冷やす
何年も距離を置いても母親とは平行線のまま、なんて頑固な母親なんだろう!そしてその頑固さは自分の中にもはっきりDNAとなって流れている
深呼吸をして大広間の引き戸を開けた瞬間、その喧騒が彼女の重い心を一気に押し流した
「ヨーイヤサー!」
「オーイ! さっちゃん、遅かったやないか!」
「ほら、クラちゃん、こっちこっち!」
「親戚の正次郎伯父貴が来たぞ!」
「あの賑やか師が来たらもう止まらん!」
広間はまるで夏祭りの夜市のような熱気に包まれていた、畳の上には鯛の姿造りや淡路牛のすき焼き鍋が並ぶお膳が乱雑に散らばり、空になったビール瓶が転がっている
中央では、桜の父・松吉と叔父の正次郎が親戚達と輪になって盆踊りを踊っていた、松吉の浴衣の裾がはだけ、正次郎の頭には誰かが巻いた手ぬぐいがずり落ちそうになりながら、二人とも大はしゃぎで踊っている
「ヨーイヤサー!」
「次は『炭坑節』や! 婿殿も入れ!」
「婿殿! 楽しんどるか!」
米吉がジンに向かって手を振る、ジンは上座の隅に座り、松吉達を見て楽しそうに笑って手拍子を打っていた
父達に淡路島焼酎を飲まされたのだろう、笑っている彼は頬も耳もピンクに染まっている・・・
桜は入口でそんな楽しそうなジンを見つめて一瞬立ち尽くした・・・
母の「責任から逃げてるだけ」という言葉が耳に残って胸が締め付けられる、だが、目の前の楽しそうな親族達の笑顔と、ジンのリラックスした姿に彼女の心は少しだけ軽くなった、じっとジンを見つめると途端に愛しさが込み上げて来る
―ああ・・・私はこの人に恋をしている、誰がなんと言おうとこの偽装婚は成功させて見せる―
「さっちゃん! ほらほら、飲んで、飲んで、さっちゃんもお酒いける口でしょ!」
「わぁ!ありがとう!おばちゃん」
叔母の一人が桜に淡路島焼酎を押し付け、ドボドボと注ぐ、桜は笑いながら受け取り、モヤモヤを振り払うように一気に飲み干した、ゴクゴクと喉を鳴らしてグラスを置くと、親戚達が「うおー! さすがクラちゃん!」と拍手で迎える
「もう一杯! ほら、婿殿と一緒に!」
「よーし、久しぶりに今夜は飲むぞー!」
別の親戚が新しいグラスを差し出し、やけくそ気味な桜の酒がどんどん進む、意外と酒が強い桜を見てジンが驚いている
「お帰り桜、トイレずいぶん遅かったね、(大)だったのかい?」
(↑ジンさんは酔ってるので失礼な事を言っているのがわからない)
頬と鎖骨を真っ赤に染めたジンが桜に微笑む、彼もずいぶん松吉達に飲まされてたのだろう、普段の「堅物CEO」らしい鋭い眼差しはどこへやら、目尻が下がって髪もなんだかボサボサで少年の様に可愛らしい