テラーノベル
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「――お疲れ様です。一旦、30分休憩にしましょう」
私の声で、スタジオの空気がふっと緩んだ。
スタッフたちが機材を置き、飲み物を求めて動き出す。
私も自分のデスクに戻ろうとしたけれど、すぐ後ろから足音が聞こえて、背筋が伸びた。
「白河さん。お疲れ様」
御子柴さんだ。
振り返ると、彼は清潔感のある白シャツの袖をまくり、額の汗を軽く拭いながら、私に歩み寄ってきた。
「……お疲れ様です、御子柴さん。順調ですね」
「ええ。あなたが用意してくれたカラーチャートが完璧だったおかげです」
御子柴さんは私の隣に立つと、ふわりと、清潔感のあるシトラスの香りがした。
「……私は、当たり前のことをしただけですから」
私が素っ気なく返すと、彼は少しだけ楽しそうに目を細めた。
「その『当たり前』が一番難しいんですよ」
その真っ直ぐな言葉に、私はどう返していいか分からず、咄嗟に手元の資料へ視線を逃がした。
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