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全てはあの日。
1年前にさかのぼる。
私、夢城明希は、いつものように友達と下校中だった。
同じクラスの山浦天音と、推しのDVDの鑑賞会をいつにしようかと話をしているところだった。
隣のクラスの塚本育が、「あれっ」と声を出した。
「育、どーした?」「あれ、猫が。」
育が指さした先には、猫がいた。
グレーの毛はふわふわしてて、結構大きめの体。
「ほんとだ。」
そう声を出したのは同じクラスの原道波瑠。ここだけの話だが、実は天音とカレカノ関係なんだよね…(ちなみに育はそのこと知らない。)
みんなで猫のもとへ駆け寄ると、育がスパッと言った。
「捨て猫だなー…かわいそーに…病気とかではなさそうだな。」
そう言って猫をじーっと見つめる。
「こんな可愛いのに捨て猫だなんてありえないよー。」
天音が下がり眉で言った。
その時だった。
「明希?」
散歩中のおばあちゃんに会った。
「おばあちゃん!」「あ、明希ちゃんのおばあちゃんだ!こんにちは〜!」
天音が明るくあいさつすると、おばあちゃんはふわふわした顔で「こんにちは、天音ちゃん。」と返すと、猫のほうに視線を向けた。
「あらまあ、捨て猫ねぇ。かわいそうに…」
そう言って猫の頭を優しくなでる。
猫はなぜかすぐにおばあちゃんに懐いた。
「うわっ、おめーのばあちゃんすげーな。」「おばあちゃん馴染みやすい性格だけどねー、動物にも馴染みやすいのかなー?」「あらあら明希、わからないの?おばあちゃんが動物と仲良くしてきたのは明希も見たじゃない。元動物病院の副院長だからね。」「いや、それは関係ない、断じて。」
私がきっぱりと断っていると、おばあちゃんはするりと猫をかかえた。
「ちょっとおばあちゃん、何するの?」「何って…家に連れて行くのよ?」
「「「「は?」」」」
4人でぽかんとしていると、おばあちゃんはゆうゆうと手を降って、家に戻っていった。
「おめーのおばあちゃん、やばいな。」「さっきと全然言ってること違うよ、育。」「手のひら返しってやつ?天音。」「いや私に聞かれても…」
家に帰ると、真っ先に夕飯を作っているお母さんのところへ行った。
「母さん、おばあちゃんは!?」「母さんなら、今部屋にいるわよ。さっきまで猫を連れてきてお風呂場にいたけど。何をするつもりなのかしら…」
お肉を手でこねながら、母さんは顔にはてなマークを浮かべる。多分今日の夕飯はハンバーグだ。
おばあちゃんとおじいちゃんの部屋に入ると、おじいちゃんはいつもの顔で新聞を読んでいた。おばあちゃんは猫を優しく抱いていて、色々猫に語りかけている。
「あ、明希おかえりなさい。どうかしたの?」「どうかしたの?じゃないんだよ…なんで猫を家に入れたの?」「かわいそうだったし、かわいかったから、保護したのよ。これからこの子は家のペットだわ〜!」
またわけのわからないことを……
「勝手に決めないでよ。母さんとにいにとおじいちゃんの承諾は得たの?」「おじいちゃんは大丈夫よ。ね?」「まぁ…大丈夫だ。癒しが増えるのはいいことだしな。」「…まぁ私は全然いいし、もしこの子を飼うとなったらおばあちゃんが世話してよ!?私絶対やんないからね!?」「はいはい。」
こうして、おばあちゃんの強引さで、謎の猫との生活が始まったのだった。
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