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その夜——
シェアハウスの外。
「……ここか」
低い声が、静かに響く。
フードを被った男が、建物を見上げていた。
その目は、確信している。
「間違いねぇな」
ポケットに手を入れたまま、ゆっくりと歩き出す。
「やっと見つけた」
口元が、わずかに歪む。
―――
「……」
その気配に。
もふくんは、ふと顔を上げた。
自分の部屋の中。
何もないはずなのに。
「……来てる」
小さく呟く。
窓の外を見る。
カーテン越しに、うっすらと人影。
「……」
一瞬で、空気が変わる。
さっきまでの穏やかさが消える。
静かで、冷たい目。
「……はぁ」
小さくため息。
「ほんとに来た」
―――
コンコン。
ドアがノックされる。
「もふ?」
うりの声。
「起きてる?」
「……入って」
ドアが開く。
「……やっぱ気づいたか」
うりが、軽く笑う。
「外だろ?」
「……うん」
短く頷く。
「どうする?」
少しだけ、真剣な空気。
「……何もしない」
もふくんは、静かに言う。
「まだ、ね」
その一言。
「……“まだ”ね」
うりが繰り返す。
ニヤッと笑う。
「いいね、それ」
どこか楽しそうに。
―――
その頃。
外では——
「……静かだな」
男が、建物の周りをゆっくり歩いていた。
「気づいてるか?」
小さく呟く。
「気づいてるよなぁ」
クク、と笑う。
「じゃないと面白くねぇし」
足を止める。
そして。
「……出てこいよ」
誰もいないはずの空間に向かって言う。
もちろん、返事はない。
でも。
「……まぁいい」
肩をすくめる。
「今日は顔見に来ただけだ」
そう言って、背を向ける。
「逃げんなよ」
小さく残して。
闇の中に消えていく。
―――
翌朝。
「おはよー!」
ゆあんくんの元気な声。
「おはようございます」
ヒロくんも軽く頭を下げる。
「……おはよ」
もふくんも、いつも通りの声で返す。
「昨日よく寝れた?」
のあさんが優しく聞く。
「うん」
迷いなく答える。
でも。
「……」
ヒロくんは、その顔を見ていた。
(嘘ではないけど)
(全部本当でもない)
そんな感じがする。
「……」
そして。
うりも、何も言わない。
ただ、少しだけ笑っている。
「……」
2人の間にある“何か”。
それが、確実に存在している。
そして——
それはもう。
外からも、見られている。