テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
すかいお~あ@投稿頻度上昇⤴︎
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夜。
シェアハウスのリビングは静かだった。
みんなそれぞれの部屋に戻っていて、物音もほとんどない。
「……」
ソファに座ったまま、もふくんは何もしていなかった。
テレビもついていない。
スマホも見ていない。
ただ、ぼんやりと一点を見つめている。
「……来るの、早かったな」
小さく呟く。
誰に聞かせるでもない声。
昨日の気配。
あの視線。
あの男の言葉。
——全部、分かっていた。
「……隠しきれないか」
軽く目を閉じる。
思い出すのは、昔のこと。
消したはずの記憶。
関わらないと決めたはずの世界。
「……」
でも。
完全には、消えていない。
「……はぁ」
小さく息を吐く。
その時。
「珍しいね」
後ろから声。
「……」
振り返らなくても分かる。
「うり」
「何してんの、こんなとこで」
軽い口調。
でも、足音は静かだった。
「別に」
もふくんは短く答える。
「ちょっと考え事」
「だろうな」
うりは隣に座る。
「……」
少しの沈黙。
「……来たな」
先に言ったのは、うりだった。
「……うん」
否定しない。
「どうする?」
同じ質問。
何度目か分からない。
「……」
少し考えてから。
「まだ、何もしない」
同じ答え。
でも。
「……いつまで?」
うりが聞く。
「……」
言葉に詰まる。
「向こうはやる気満々だぞ?」
「……分かってる」
もふくんの声が、少し低くなる。
「でも」
顔を上げる。
「巻き込みたくない」
その一言。
「……」
うりは少しだけ目を細める。
「仲間のこと?」
「……うん」
迷いのない答え。
「だから」
小さく続ける。
「できるだけ、普通でいたい」
静かな決意。
「……」
うりは少し考える。
そして。
「無理だろ」
あっさりと言う。
「……」
「もう見られてる」
「狙われてる」
「関わってる」
一つ一つ、はっきりと言う。
「それでも?」
問いかける。
「……」
もふくんは、目を伏せる。
「……それでも」
小さく答える。
「守りたい」
その言葉。
「……」
うりは、少しだけ笑った。
「相変わらずだな」
呆れたように。
でも、どこか嬉しそうに。
「……」
もふくんは何も言わない。
ただ、少しだけ視線を逸らす。
―――
その時。
「……」
廊下の奥。
「(やっぱり……)」
ヒロくんが、静かに立っていた。
(全部は聞こえなかったけど)
(“守る”って言った)
その一言だけで、十分だった。
「(この人たち……)」
ただ強いだけじゃない。
何かを背負っている。
「(だから隠してるのか)」
少しだけ、考えが変わる。
でも。
「……」
それでも。
「(知りたい)」
その気持ちは、消えなかった。
―――
リビングに戻って。
「……」
もふくんは、静かに立ち上がる。
「……とりあえず」
小さく呟く。
「まだ、大丈夫」
そう言い聞かせるように。
でも。
その“まだ”は——
いつまで続くか、分からなかった。