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「悪いな、そういうわけだから、一度顔合わせをしてほしいんだが」
苦笑を浮かべて話す父に、(他人事だと思って……)と、閉口してしまう。
「それじゃあ一回は会うけれど、もし私の方が気に入らなかったとしても、ムリ強いはしないでよ?」
あくまで”私の方が──”を強調して、しぶしぶといった顔つきで受け入れた。
「ああ、わかっている。久我はうちと同じで奥さんを早くに亡くしているんで、会うのはあくまで貴仁君と二人でということになっているから。おまえと年もあまり変わらないだろうし、そんなに堅苦しく思わずに会ってみたらいい」
こっちが承諾をしたことで、にわかに冗舌になる父に、
「でも会うだけだからね、本当に」
父親同士の口約束で、結婚まで決められてはたまったもんではないからと、あらかじめ言いおいた。
「ああ、わかってる、わかってる。おまえのそういう我が強いところは、やっぱり母さん譲りだな」
父は、そう話して、口角をわずかに上げて笑うと、
「会う日取りは、二人で決めていいから。これが貴仁君の写真と、連絡先だ」
一枚の写真と携帯の電話番号が書かれたメモを、私に手渡した──。