テラーノベル
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長過ぎた快楽に過呼吸さながら小刻みに呼吸を続けていると、さすがに心配になったのか顔の覗き込んできたレンさんと目が合う。
──キス、したい。
靄がかった意識の中で思ったものの、事前に自分でしないと決めてしまったからには我慢するしかなく、代わりに唇を手の甲で抑えた。
その意図を知らないからこそ俺に配慮してか、そーっと抜かれていく質量の変わったオスの象徴にすら感じてしまって、つい小さく盛れる声と僅かながらに揺れてしまう腰。
それを見て緩く笑みを浮かべた彼は、慣れた手つきでゴムを処理しながら聞いてくる。
「…姫には絶対やらないことやったけどさ、それでも受け止められるのはさすがだって言ったら…『お前』としては褒め言葉になる?」
処理が終わるとさっさと下着を履く彼。そして、切り替えるようにその口から呼ばれなくなった名前。ちくりと胸が痛んだのはきっと行為中、優越感に浸り過ぎていたのだと自覚した。
「、…なる んとちゃう?知らんけど…。でも、レンさんを満足させられたんなら、俺は普通に嬉しいで?」
手渡される数枚のティッシュペーパー。横たわったまま腹にかかった自分の体液を拭うと、レンさんがシーツに吐き出してしまった同じものを拭き取る姿を見て、ノンケに…それも女性相手のプロに抱かせてしまったと徐々に申し訳なさが込み上げてくる。そんな気持ちを持っていることも露知らず、彼はあっけらかんとして言った。
「そう?俺としては噂以上のお前のエロさが分かって結構な収穫だったけどな。セックスだけには正直になる タイプなんだね?」
「!…それ…誰にも言わんといてや?」
くす、と微笑いながら出された『収穫』という単語に、一瞬にして身体が凍りつく。
界隈を跨げば真相も蔑ろにされ、根も葉もなく背鰭と尾鰭だけがついた話だけが独り歩きする…ウリ側としてはハイレベルなあの街で少しでも気を抜いたものなら。あのまま、この人にスカウトされずに立ち続けていたら…今頃俺、どうなってたんやろ。
それに、良く考えてみれば彼はあの街でNo.1の人間だ。一言一言に発信力と影響力がある。もし、レンさんが誰かに俺のことを言おうものなら──緊張で拭き取る手が上手く動かなくなる。
(…もしかしてほんまに手ぇ出したらあかん人に、上手いこと乗せられたんとちゃうか…?)
そう思えば思うほど、どんどん血の気が引いていく。体感的には暫くの間、ぐるぐると回る思考。その中で、歯止めを効かせるようなさっぱりとした声が入ってくる。
「いや、普通に言わないよ?」
ぎこちない動きでレンさんを見上げると、《お前、やること大胆なのに結構保身的だね?》と喉を鳴らして笑っていた。
「お試しとはいえ、お前を買ったのは俺だし。そんなの進んで誰かに言う訳無いじゃん。だから、これは俺たちだけの秘密。だね?」
小首を傾げて柔らかく微笑む彼。金に関しては信用はおけるものの、何かしらの理由もあるだろうが『こちらの界隈』にも足を運んでいる彼に対して、話題性となると疑念や不信を全て払うわけにはいかなくて。
「…ほんまか…?どうせネタとして言いふらすんちゃうん?」
拭き終わると同時に差し伸べられた手。もう1枚を要求して受け取れば、その手を精で汚さないように包んで渡す。
「働いてはいるけど、やっぱりホストってどっか信じきられへんねんな。」
「あはっ、まあよく言われる。でも本当に言わない。…なんなら、指切りでもする?」
「子供扱いしなや。そんな歳離れてへんやろ。」
小言ついでに《あとごめんやけど服、取ってくれへん?》と頼むと、ベッド脇に落ちた下着と借り物の部屋着を適当に投げつけられる。たまたま顔にかかったトップスからする柔軟剤の香り。ついさっきまで身体を重ねた彼の身体から漂った香水と汗との合間で仄かに鼻腔を擽っていたこの芳香に、一瞬にして記憶が巻き戻される。
「にしても…もう1回してもええくらいめっちゃ良かった。最後の方とか、正直ちょっとでも気ぃ抜いたら意識トびそうになったし。」
「そんなに?お前が相手にしてきた今までの奴ら、どんだけ雑魚なの?」
「いや全員ちゃうし。まあ…満足できたんは2割くらいやけど…。」
「百発百中は引っかける時だけか。お気の毒。」
「ゔぅ…どうヤるかは外見じゃ分からんやんか…。」
そこで思い出したようにレンさんが《あっ、》と声をあげる。
「そうだ、金。持ってくるから待ってて。」
「おん、?」
彼が立ち上がるのを見て、一旦下着を履こうと身体を起こした矢先に発せられた言葉。一応返事はしたものの、ふと多少の違和感を感じる。
持ってくる、?…え、今持ってくるって言うた??100万を今?ここに?
「…えっ、振込ちゃ、ぅんっ!?」
「………どうした?」
驚きもあって声を張り上げた瞬間、ずくんと下腹部に激しくも鈍い痛みが走る。思ったより奥をがつがつ責められていた代償だと察するには、声を掛けられた後でも少し時間がかかった。
「腹の下がなんか痛い…こんなん今までで初めてやねんけど…。」
「、良かったね?」
「何がやね、ん、!ったぁ…!」
つい反射でツッコミを入れようにも、やはり大きく声を発しようする度に力が篭もるのか、内側から直接殴られるような痛みが拡がって思わず前屈みに蹲った。
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