テラーノベル
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…ざぁ…ざぁ…と降る雨の中。
水たまりをびちゃびちゃと蹴散らしながら。
俺は濡れながら必死に走る。
「はぁっ…はぁっ…」
息を荒げながら、転ばないように。
胸が張り裂けそうに痛い。
実は…。
さっき、振られてしまったのだ。
15年間…ずっと想っていた。
なのに…相手は“ごめんなさい。好きな人が居るの“。
そう言って去ってしまった。
俺の心情が天に届いたのか。
振られた瞬間雨が酷く降り始めた。
「なんでぇ…だよぉ““」
声が裏返り、それに加え酷く掠れた声。
上を見ず、下ばっかり見ながら走った為か。
ドカッっと誰かとぶつかってしまった。
誰かの傘がガタッと音を立て床に落ちる。
痛っと思い、足を見ようとした所、
水たまりに視線が向いてしまった。
水たまりに映った自分の顔。
酷く目が赤く腫れ、鼻水ダラダラ。
そしてシャワーを浴びたかのような髪。
「っ…あのっ…大丈夫ですか?」
誰かは俺に手を差し出してきた。
ゆっくりとその人に視線を向ける。
俺は驚き、大きく目を開く。
丁寧に手入れされた漆黒色のナチュラルマッシュ。
切れ長で涼しげなつり目。
スーツの上からでも分かる筋肉質。
どこか儚く人を惹きつける雰囲気を纏った男性。
手を取れば彼によって立ち上がる。
俺はしどろもどろになりながら感謝を伝える。
「えあっ…、そ…、あ、ありがとございます。」
「いえいえっ…それより大丈夫ですか?前を見ていなかったようですが?」
「突然すみません。知らない男がなに親切にって思いますよね。せっかくですからバーに行きませんか?」
彼は俺に向けてニコッと微笑めばハンカチを渡す。
俺は感謝しながらハンカチを受け取る。
すると彼の手が俺の背中を支える。
そのまま俺は彼に導かれバーへと向かう。
バーに行った後の記憶はない。
だが…彼と一夜過ごした事だけ言える。
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