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志穂と別れると家へ向かった。
今日も夜になったら出かけるないと。
まだ日が差す道を歩いていると、家の前にある空き地に学生服を着た男が一人立っている。
私が通う学校の生徒かな?
近付いてくるとオールバックに髭、片手には真っ赤な薔薇の花束を持っていた。
誰かと思えば祐と一緒にいるクラスメイトだ。
大きな声で私に声かける人。
なにしてんのかしら?
「由利奈ちゃーん!!」
私を見つけると満面の笑みで花束を振った。
夕方とはいってもまだ日も高い。
家の中でやるかな。
そう決めると笑顔を作って小さく手を振った。
「由利奈ちゃんおかえりなさい!」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと話しがあって」
私が近付くとガチガチに緊張してるのがわかった。
「なに?その花束」
「こ、これは…プレゼントです!!どうぞ!!」
「私に?いいの!?」
「どうぞ!!」
まっすぐ差し伸ばされた花束を受け取った。
薔薇の香りが鼻腔をくすぐる。
「綺麗…ありがとう……」
あっ……
しまった。
「あの…」
「はい」
「名前を……なんていったっけ……?」
祐の仲間。
それしか認識してなかった。
「俺は清助」
「そうだった!清助君ね…ごめんなさい!」
前に志穂が言っていたのを思い出した。
これが清助か。
「ああ~いいって、いいって!」
私が頭を下げると慌てて手を振った。
「まだ転校してきて日も経ってないしさ、仕方ないよ」
笑いながら言うのを聞いて、頭をあげて微笑んだ。
「ありがとう」
「そんな!礼なんて言われる程じゃないって」
照れたように頭を掻きながら言う。
「清助君って優しいんだね」
「それほどでも…ハハッ、参ったな」
そうだ……
一人なのかな?
聞いてみないと。
あとから人が来るとか面倒になる。
「ねえ?今日は一人なの?」
「ああ」
「いつも一緒にいる人達は?」
「ああ~、あいつらとは今日は別行動ね」
「そうなんだ…!」
なんだ……
祐は来ないのか……
えっ!
なにを落胆してんの?
スムーズに採取できるんだから願ったりなのに。
「よお」
「圭人(ケイト)!」
緊張している清助の後ろから兄の圭人が私に声をかけてきた。
「えっ?誰…?」
長身の圭人を見上げる清助。
「由利奈、学校の友達か?」
清助には目もくれずに圭人は聞いてきた。
「うん」
「こんなとこで話してないで、上がってもらえよ」
「そうね」
圭人の視線が花束に落ちた。
「綺麗な花だな」
一言言って微笑むと家に帰っていった。
「あの……誰?」
「ああ!ごめんなさい!兄なの」
「お兄さん!?しまった!挨拶するんだった!!」
「フフッ…大丈夫だよ。今から家に上がるんだから」
「えっ」
「私に話しがあるんでしょう?こんなとこより、私の部屋で話しましょう」
清助の顔を見つめ微笑むと、彼の腕に手を添えた。
「行こう」
そのまま手を引くように誘う。
「いや、でもいきなり部屋はなあ」
だらしなくニヤケながらついてくる清助。
その清助の後ろに裕の顔が浮かんだ。
もし清助が私と関係したらどう思うだろう?
他の人間のように意識不明になったら……
「あっ……」
「ん?どうしたの?」
「ごめんなさい!今日は家に父がいるの忘れてた!」
「えっ、お父さんが?」
「うん。うちの父はとっても厳しいの」
怯えたように眉根を寄せた。
「男の人を部屋に入れたなんて知れたら殺される」
「せんな大袈裟な」
「それくらい折檻されるってこと」
チラッと家の方を見る。
まさか、圭人はいちいち聞き耳を立ててはいないだろう。
とにかく、この清助を早く家の側から遠ざけたかった。
「少し歩きましょう。私に話なら歩きながら聞くから」
私は清助の手を引くと家とは逆方向に歩き出した。
「すぐ側に公園があるし、そこ行こう」
「う、うん」
戸惑いながらもついてくる清助。
家から後ろにあたる方向に、小さな丘を利用した公園がある。
私はそこに清助を連れて行った。
斜面に沿って作られた階段を上がって行くと遊具やベンチがある広場へ出た。
木々が生い茂ってるおかげで西日もキツくない。
「話しってなに?」
「ゆ、由利奈さん!俺の女になってください!」
女でない私に女になれ?
ちょっと吹き出しそうになった。
「女って?どういう意味?」
「つまり~…俺と付き合って欲しいなと」
「付き合う?付き合うとどうなるの?」
付き合ったことなんてない。
会ったらやってお終いだから。
「恋人同士になるんだけど」
「恋人同士に?恋人同士はなにをするの?」
私の問に清助は困り果てたように天を仰ぎ見た。
「まあ、キスしたりなんか、いろいろ…かな」
「他の人とは?」
「えっ?」
「他の人とはそういうことしない?しちゃダメ?」
「まあ、そうだよね」
他の人とはダメか……
私は生気を採取するためにキスでも何でもするからな……
いつもならこんな会話もそこそこに誘惑して搾り取るんだけど、清助は裕の仲間だし、何故かいつものようには扱えなかった。
「どうして私なんかと付き合いたいとか言ってくれたの?」
「それは……由利奈ちゃんのことが好きだから」
「それはどんな気持ち?ドキドキしたり、胸が苦しかったり、ため息でたりする?」
清助の言っている「好き」は私が本から知った「好き」と同じものか気になった。
「まあ……そんな感じかな」
同じだ。
てことは、私が裕に抱いている感情は間違いなく「好き」で、私は今「恋」をしているんだ!!
裕に……
これって初恋?
「あの、由利奈ちゃん」
恋について思いを巡らせている中、清助に呼ばれて我に返った。
「あ、ああ…ごめんなさい、なんだっけ?」
「その、返事を……俺と付き合ってくれる?」
……
……
私は清助の目を見た。
清助がゴクッと唾を飲む。
「ごめんなさい」
体を折って謝り、顔を上げると清助はこの世の終わりのような顔をしていた。
「ごめんなさい、その、あなたが嫌いとかそういうのじゃないの……」
その後に裕が気になるからって言えなかった。
それに私は……
「あなたのことよく知らないし……」
あ~!なんて言えばいいんだろう?
「そ、そうだよね!知らないもんね!お互いに!」
「そうそう!それ!」
わかってくれたみたい!
「だからこれからお互いを知ろう!」
「うん!」
ん?なんだこの流れは?
「友達からお願いします!」
清助は頭を下げながら右手を差し出してきた。
……
……
「よろしくお願いします」
私はなんだか同調して、お辞儀しながら差し出された右手をとっていた。
清助はひどく喜んで帰って行った。
残ったのは花束。
家に帰ると机の上に花束を置いた。
そういえば映画やドラマでも好きな女性に男性は花束をプレゼントしてたっけ。
夕日が差し込む部屋のなかでしばらく花束を眺めていた。
もう少し暗くなったら男を漁りに行かないと……
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