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気が付いたら、俺は教室に戻っていた。
「何だったんだ……」
平衡感覚がまだ完全に戻っていない。ふらふらとした足取りで、自分の席に何とか座り、落ち着かせる。
飛び降りようとした瞬間の記憶はある。
ベランダから見下ろしたあのコンクリートが、今も目に焼き付いている。
あそこに叩きつけられて死ぬんだ。
そういう覚悟も、心の中でしてたはずなのに。
「気が付いたら、あそこに居たんだよな……」
物理法則を完全に無視した、あの空間。同じクラスの天野が、なんとあの空間に居たのだ。
最初は混乱して、脳内の情報処理がまともにできなかった。
どうして俺はこの空間に居る? どうして天野も、同じ空間に居る? どうして俺は死んでいない?
疑問符が、これでもかという程浮かび上がっては消えていっていた。
天野が作り出したパラレルワールドの世界。宇宙空間に居る筈だったのに、どうしてか呼吸は出来ていた。
改めて、不思議なことばかりだ。
亡くなった人は星になる。そしていずれ地球に返ってくる。
その御伽噺のような言い伝えは、本当だったのだ。
有り得ない。まだ、その事実が理解できていないのだ、俺には。
増してや、同じクラスの、はっきり言ってあまり目立つ方ではない天野希空が、その仕事?を担っている。
受け入れがたい事実だった。
一体どのような境遇でそうなったのか、まるで理解できない。
……もう、考えるのをやめよう。こればかりはちゃんと本人に聞かないと、さっぱり分からない。
「__自殺未遂、ってとこか」
そう、呟いた。
今日のところは帰ろう。一連の出来事で、どっと疲れてしまった。
本当は死ぬ予定だったが、まだ俺は息をしている。
その事実から目を背けるよう、大げさに口にした。
「あーあ、これじゃあ、もう自殺できねぇや」