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浩二はまた街宣演説の旅に出てしまった、今回は関東のZ党の重鎮の応援演説もするらしく東京に行ったまま、一週間は戻ってこないそうだ




しかたがないとはいえ鈴子の毎日は火が消えたような寂しさを味わった




こんな孤独感は生まれて初めてだった・・・定正の時はいつでも一緒にいたし、彼の愛人だった時でさえ、一人の時間は楽しくやっていたのでこんな寂しさを味わうのは初めてだった




この歳になって初めて会社よりも子供よりも大切なものが出来た




いつでも、どこでも、商談中でも浩二の事を考えしまう・・・すると、ますます孤独を感じながらも鈴子の胸は蕩けた、一人になると彼に抱かれていたことばかり考えてしまう




最近では初めて会った事よりも、もっと浩二を求める様になっていた、もちろん浩二には名声をますます高めてもらいたいと思っている・・・と同時に、彼を自分のそばに置いて独り占めにしたい、それが鈴子の本音だった




広いコンドミニアムの広いソファーにポツンと一人座る・・・鈴子には別に六麓荘町の頂に彼女が生まれ育った邸宅、「葦翠館しすいかん」を持っている



このコンドミニアムは浩二のために買ったもの・・・彼と二人っきりで過ごすための場所・・・それなのに肝心な彼がここにはいない・・・鈴子は孤独になればなるほど、二人一緒の時の幸せな時間が懐かしくなった




自分を抱きしめてくれる、あの温かい腕と胸が恋しい・・・彼はこんな風に私の事を思わないのかしら



温かい浩二の腕の中が頭から離れない、鈴子は自分が人をこんなに深く愛せるとは、今の今まで思ってもみなかった



地方街宣中も、彼は毎日のように連絡をくれるが、それがかえって鈴子を寂しくさせた




「今はどこなの?」


『まだ東京なんだ』


「公演はうまくいってる?」


『みんな僕の話をよく聞いてくれるよ、君がいなくて寂しいよ』


「私も寂しいわ・・・」




あなたがいないのがどんなに寂しいか・・・それを言い出すと自分が崩れそうなので、鈴子はそれ以上は言わなかった




『明日は静岡だけど、その後は・・・』



「ねぇ・・・ちょっとだけこっちに帰ってこれない?私は神戸を離れられないから・・・」




そう言った途端、鈴子はそれは言うべきではなかったと後悔した




『ダ~メ!無理を言わないでくれ』




鈴子は返答に窮して、黙り込んでしまった




「だってあなたは遅くまで支援者達に囲まれているでしょうけど、私はこのコンドミニアムで一人ぼっちなのよ・・・」




こうした会話を三十分も続け、通話を切った時の鈴子は前にも増して孤独になっていた




分かっている・・・自分の方が彼に夢中なのだ、何も手に付かないほどだ、地方に出れば綺麗な女性政治関係者とも仲良くしなければいけない、今頃彼はどうしてるかと考えるとなかなか眠りに着けず・・・気持ちはよけい乱される



鈴子は寂しさに睡眠不足が重なって、気分がなかなか上向かなかった






・:.。.・:.。.







「姫野候補とはその後うまく行ってますか?」



二人の事を唯一話している秘書の榊原がここの所、浮かない顔をしている鈴子に尋ねた、彼はもうすぐ受付嬢の花田と結婚する




「ええ・・・上手くいってるけど・・・あの人、どうしてああなのかしら・・・」



「どうしてああって?何のことですか?」



榊原が尋ねた




「彼の政治講演会の事なんだけど・・・お金はいくらでも私が支援するって言ってるのに・・・そんなあくせく他の支援者に会いに行く必要はないと思わない?」




う~ん・・・と榊原は考え込む




「それはちょっと違うんじゃないですかね? 彼は自分の金儲けのために政治をやっているのではありませんよ、この土地を良くしたいと彼は純粋に人生をかけて政治をやっているんですよ?」



「私は金儲けのためにこの仕事をやっているわ」




同じ言葉を、浩二から何度も聞かされている鈴子は、頭では理解できたが、心では受け止められなかった




「でも・・・もし今度の選挙で落選したら、ウチの会社の専属弁護士になればいいっていったのに彼は嫌がったわ」



「信じられないな、本当にそんな事を言ったんですか?彼は企業弁護士なんてやれないと思いますが・・・」




鈴子はイジイジと俯いて言った




「もし・・・落選したらの話よ・・・」



「今の会長の言い方だと、落選するのを望んでいるような言い方ですよ」



「そっ・・・そんなことないわ!」





榊原は信じられないとばかりに鈴子をマジマジと見た、あれほどのビジネス手腕を振るって周りの起業家を震え上がらせているこの女性が・・・今はまるで頭の悪い少女の様な事を言ってるのだ




榊原は呆れて言った



「恋人だからって相手を自分の自由にする訳にはいきませんよ?」



「別に自由にするつもりはないわ・・・ただ・・・政治と私のどっちが大切なのか、彼に・・・」




信じられないという顔で榊原が首をかしげている、ハッと鈴子は言うのを途中でやめた






「もういいの!私がバカなんだわ」









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