「ねぇママ!あの怖いお兄ちゃんすっごく優しかった!!」
子どもの声が街に響く。
視線が一斉にヴァンに突き刺さる。
“ヴァンが優しい” なんて噂が立ったら一瞬で広まる。
ケンカ無敗の威厳が崩れる。
つまりーー
乙女がバレる。
ヴァンのこめかみに汗ッ。
レノの背中に冷や汗ダラァ。
(お、おい……ここで誤魔化さなきゃ終わりだってヴァン!!)
レノが恐怖のあまり心の中で絶叫。
一方ヴァンは、怖いほど落ち着いた目で呟いた。
「俺が優しい?……笑わせんな」
鋭い目がギラっと光る。
ーー周囲が息を呑む。
ヴァンはゆっくり、子どもが走り去った方へ顔を向けーー
「ガキが泣きながらぬいぐるみ無くしてたら……俺がイライラすんだよ。うるせぇから拾っただけだ。」
街中:「「あぁ〜なるほどね!!」」
一斉に納得が起きた。
怖いほど自然な “最強ヤンキーの理屈” に全員が飲まれる。
レノは顔を覆って震える。
(待って、演技レベル高すぎんだろこいつ……!!本当の動機は“かわいかったから”なのに……!!)
しかもヴァンはそれだけで終わらなかった。
「あと、花屋の前のガキども。道塞いで騒いでんなら、どけ。……通れねぇだろうが」
街中を歩きながら、花屋の前に群がっていた子どもたちを軽くどかしつつ進む。
通行人の反応:「あぁ〜確かに道塞がってたもんな」
まさかの “花の前に行きたかっただけ” が完全に別の意味で解釈されていった。
色んな意味でレノは泣きそうになっていた。
(いやこれ、バレてないんだよ……?
だけど……バレててもおかしくない瞬間が秒で来るんだよ……?
心臓が保たねぇ……!!)
ヴァンは街の中央広場に到着。
そこには巨大モニター、そしてトレンド情報が表示されていた。
《今週のフェングラウンド人気スポットランキング! 第1位・花と小動物のパラダイス♡》
ヴァンの筋肉がビクッ。
視線が勝手にモニターへ向く。
綺麗な色とりどりの花、ふわふわの小動物の天使のような写真の連打。
ヴァンの目が輝く寸前。
(ダメだってぇぇぇぇ!!!)
レノはとっさにヴァンの肩を引っ張って方向転換させた。
「お、おいヴァン!今日はアレ行くだろ!?ほら、毎週恒例の“ストリート喧嘩トーナメント”!!」
(……花とウサギ……天国……行きたい……
いや違う。俺は最強。そんなとこ行かねぇ……)
ギュッと拳が震える。
だが声は低く、完全なるヤンキー。
「……当然だ。花なんざより喧嘩の方が気分いいに決まってんだろ」
市民たち:「「か、かっけぇ〜!!」」
ヴァンの乙女はギリギリの地点で踏みとどまった。
今日もギリギリ勝利。
レノはため息をつく。
「お前……バレてないけど……心臓に悪すぎるんだよ……」
ヴァンはそっけなく歩きながら一言。
「……俺の中身がバレるわけねぇだろ。絶対に」
しかし──街のポスターに向けて視線が一瞬だけ吸い寄せられた。
《今週末限定♡花と小動物イベント開催!》
ヴァンの足が0.2秒止まった。
レノの目が見開かれた。
“戦いはまだ始まったばかり” という空気が街に満ちていた。
(今週……行きてぇ……)
「もう……やだぁ…(泣)」
「…?レノどうした……」
「お前のせいじゃ!!!」
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