「敵よ、こんな言葉を知ってるか!!?Puls Ultra!!」
脳無をドームを突き抜けて吹っ飛ばす。雲まで裂けるデタラメな力、再生も間に合わねぇ程のラッシュ。これがNo. 1トップヒーロー、オールマイト。
「……漫画かよ。ショック吸収をないことにしちまった…究極の脳筋だぜ」
「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに。300発以上も撃ってしまった」
人じゃありえないほどの蒸気が、オールマイトの体から噴き出る。あれ、なに?
「さてと敵、お互い早めに決着つけたいね」
「チートが…!」
首を異常に掻く手の男。煙がオールマイトを中心に立ち込める。
「衰えた?嘘だろ…完全に気圧されたよ。よくも俺の脳無を…チートがぁ…!全っ然弱ってないじゃないか!!あいつ…俺に嘘を教えたのか!?」
「どうした?来ないのかな!?クリアとかなんもな言ってたが…出来るものならしてみろよ!!」
「うぅうぉおおぉおおぉおおぉお…!!」
オールマイトの威圧に、手の男が後退りするほど気圧された。面白くない。あれが、リーダーの器ねぇ…
「口が軽い。ペラペラ情報吐いてくれてるよあなたのリーダー。あの子は?」
「っ何も話しません」
「どうしたの?」
「脳無さえいれば!!奴なら!!何も感じず立ち向かえるのに………!」
「っ…死柄木弔!」
「へぇ…」
自分の命を脅かされてると分かっていながらモヤを広げる。聞きたい情報吐いてくれたし、潮時だったからいいか。ワープからすぐさま離れる。
「死柄木弔…落ち着いてください。よく見れば脳無に受けたダメージは確実に表れている。どうやら子どもらは棒立ちの様子…あと数分もしないうちに増援が来てしまうでしょうが、死柄木と私で連携すればまだヤれるチャンスは充分にあるかと…」
あの子どものせいで勝算は低いが、と内心で黒霧は思う。赤い目が静かにこちらを捉える。佇んでいるだけなのに隙がない。本当にヒーローの卵かと疑ってしまう。
「…….うん…うんうん…そうだな…そうだよ…そうだ…やるっきゃないぜ…目の前にラスボスがいるんだもの…」
どうかオールマイトだけはと切に願う。
ズドン!とパーク内に響き渡る銃声音。死柄木の手に銃弾が当たる。
「「「!!!!」」」
「来たか!!」
「ごめんよみんな、遅くなったね。すぐ動ける者をかき集めて来た」
「1-Aクラス委員長、飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」
手短に、ハキハキと通る声でみんなに知らせる。連絡役の飯田が戻って来た。頼れる雄英教師陣を連れて。
「あーあ来ちゃったな…ゲームオーバーだ。帰って出直すか黒霧…」
ワープゲートで去ろうとする死柄木に銃弾の嵐が襲う。いくつかの銃弾が死柄木の体に当たる。モヤが死柄木を守って去ろうとしたが、それを13号のブラックホールで阻止する。
「今回は失敗だったけど今度は殺すぞ。平和の象徴オールマイト」
モヤと共に脅威が消え去る。人命救助から一転、敵の襲撃。途方もない悪意、プロが戦っていた世界。ヒーローの卵でも早すぎる経験。霊華だけはなんともないように頭から流れる血を拭う。穴の空いたドームから空を見上げ、旋回するカラスに目を細めた。
「ってぇ…両腕両足撃たれた…完敗だ…脳無もやられた。手下どもは瞬殺だ…子共も強かった…平和の象徴は健在だった…!話が違うぞ先生………」
《違わないよ》
液晶テレビから不気味な声が返事をする。
《ただ見通しが甘かったね》
《うむ…なめすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。ところで、ワシと先生の共作脳無は?回収してないのかい?》
「吹き飛ばされました。正確な位置座標を把握できなければ、いくらワープとはいえ探せないのです。そのような時間は取れなかった」
《せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに…》
《まぁ…仕方ないか…残念》
「パワー…そうだ……1人…オールマイト並みの早さを持つ子どもがいたな……それと…渡り合えてた子どももいた……」
「私も1人、危険だと思った子どもがいます。彼女は私達の計画を見透かしたように、幼稚なお遊戯、つまらないと嘲笑されました」
《………へぇ》
「あの邪魔がなければ、オールマイトを殺せたかもしれない…ガキがっ…ガキ……!」
「死柄木、落ち着いて」
その時、黒霧からジリジリと嫌な音が鳴り出す。
「っまさか!」
黒霧は死柄木から離れた瞬間、背中が爆発する。突然の衝撃で床に倒れ、言葉にでない痛みが襲う。
「……!」
《なんだ?いきなり爆発したぞ》
「っっ……あの、子ども……初めっから、これが狙いだったのか…………」
こういったで浮かぶのはあの女の子。
『爆破したい所だけどちょうど切らしてて。一瞬だけ止めるのが精一杯。 』
脳無の動きを止めたあの言葉。1回目は起爆札付きのナイフなどを投擲し、大規模な爆破をしたせいでなくなっていたんだと思い込ませられた。2回目は一瞬でも脳無動きを止めることしかできなかったのは黒霧の背中に起爆札を忍ばるため。黒霧を、アジトに戻ると予測して爆破するように。できれば周りの人間を巻き込んで大怪我を負わせるために。言葉選び、誘導、貼られたと気づかせない手先の器用さ。どれも完璧すぎて気持ち悪い。
《してやられたね。悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかったハズだ。先鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!我々は自由に動けない!だから、君のようなシンボルが必要なんだ死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!》
黒霧の脳内にニヤリと笑う子どもが容易に想像できた。
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