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切ない‥‥‥😢
【長編小説/アオトナツ~番外編~】
ある日、僕が音楽室でピアノを弾いていると、先日吹奏楽部を覗きに来ていた男の子と目が合った。
僕は笑顔で招き入れ、僕のピアノの音が綺麗だと言う彼にもう一度弾いて聴かせると、キラキラした笑顔を向けてくれた。
人の純粋な笑顔を見たのは本当に久しぶりで、前に見た時も可愛らしい子だとは思っていたけど、彼のその笑顔だけで僕の心は完全に掴まれてしまった。
「元貴、泣いてるの?」
それでも、彼に好きな人が居る事に気付いたのは直ぐに気が付いた。
だって、僕の隣に座っていても彼が見ているのは僕じゃなくていつも窓の外だったから。
ある日、何かあったのか泣き出してしまった彼に、『僕にしたら?』と喉まででかかった。
昼休み中に、彼を見付けた時、一緒に居る男の子を見る目で彼の想い人が誰なのか分かった。
それにその男の子が彼を見る目で二人は本当は両想いな事も。
…悔しくて少しマウント取るような事言っちゃったけど、それぐらいは許して?
家に招いたところで、純粋な目で僕を見てくる彼に、 僕は彼が幸せになる手伝いをするしかな出来なかった。
でも最後に彼への恋の区切り…いや、彼の想い人に対する嫉妬でキスマークを付けた。
僕から彼等への最後の意地悪。
•*¨*•.¸¸♬
「涼ちゃん、なんかあった…?」
「ん?どうして?」
「涼ちゃんのピアノ、なんか悲しそうだから。」
「本当〜?なんでだろ?」
無事に想いが実った後も、彼はここに来て僕の隣で僕のピアノを聴きながら、窓の外を眺めていた。
心配そうに聞いてくる彼は、僕が失恋をしたなんて思いもよらないだろう。
僕は相変わらず、ふわふわと本性を見せることなく、いい先輩、いい友達を演じている。
当たり前のように彼への想いに区切りを付けることなんて出来ず、そっと彼への想いをピアノの音に乗せながら。
「…ん?なんだろ?若井が手招きしてる。」
ちょっと行って来るね!と言って、彼は音楽室を出て行った。
彼が出て行った後も、届く事のない想いをピアノに乗せて鍵盤を叩く。
確かに、悲しい音だと苦笑しながら。
-fin-