「元貴ー、次元貴の番…」
今日は雑誌の撮影で、スタジオに来ている。
今は個別撮影中で、おれが撮り終わり、次が涼ちゃんの番、そして涼ちゃんの次は元貴な為、おれは控え室に元貴を呼びに来たけど、ソファーで静かに寝息をたてている元貴が目に入り、口を閉じた。
10周年yearの今年、3人それぞれ有難いことに個人の仕事が増え、忙しくしているけど、元貴に至っては、文字通り寝る暇もないくらい忙しい毎日を過ごしているように思う。
なので、こうして少しでも休んでくれている姿に心配ながらもホッとする。
おれは寝息をたてている元貴の横にしゃがみ、その寝顔をジッと見つめた。
本当に同性かと思うほど。白くて綺麗な肌に、長くてくるんとした睫毛。
そして、ぷっくりした涙袋の下にはコンシーラーで隠してはいるけど、やはりあまり眠れていないのか、うっすらクマが見えている。
でも、おれはそれよりもほんの少しだけ開いているリップが塗られ血色が良くなり、ぷるんとした元貴の唇から目が離せなくなっていた。
〝今なら、元貴も寝てるし、周りには誰も居ない…〟
邪な考えが頭に浮かぶ。
なんで自分でもそんな考えが生まれたのか分からないけど、あの唇にくちづけたら気持ち良さそう…そんな考えが頭の中でグルグルしている。
寝ている人間に、同性に、メンバーに、親友に、そんな事してはいけない事は分かっているし、そんな事を考える事すらどうかしている事も分かっているのに、おれは気が付いたら、まるで花の蜜に吸い寄せられる蝶のように、吸い寄せられるように顔を近付けていた。
ふに。
元貴の唇に自分の唇が軽く触れる。
想像していたよりも柔らかいその唇に、おれの心臓は驚くほどドキドキしていて、想像していた以上の気持ち良さに、止められなくなりそうになった自分をなけなしの理性で止めると、我に返ったおれは勢いよく立ち上がり、元貴を起こすことなく慌てて控え室を後にした。
ガチャッ
「元貴、居る〜?…あれ?居るじゃん!」
「え、あ、涼ちゃん、、」
「スタッフさん待ってるよ。若井、呼びに来なかった?」
「わ、若井?や…どうだ、ろ?」
「あれ?てか、顔赤くない?!もしかして体調悪い?!」
涼ちゃんは心配そうに、ソファーに寝たままで顔を赤くしているぼくの近くまで来ると、ぼくのおでこに手を当てた。
「う〜ん。熱は無さそうだけど…」
「や、あの!大丈夫!なんでもないから!」
ぼくはそう言って、ソファーから勢いよく起き上がり、さっきの若井と同様に慌てて控え室を後にした。
-fin-
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おっ腐( ˆᴘˆ )