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「酒買ってきたから飲むぞ!」

 と家に入るなり美濃里さんは入ってきた。子供たちもわーっと家に入りドタドタと謙太に向かっていく。


「家に入るの久しぶりじゃないか。ゆっくりして」

「うんうん。カレー甘口買ったから」

と美濃里さんは子供達を追いかける。すると謙太が私の横に来た。


「梨花ちゃん、大丈夫? ……僕お酒飲まないようにするから姉ちゃん泊まらせないようにするよ」


 と気を遣ってくれた。確か最後にここの家に来たとき私はすごく不機嫌になった。泥酔した美濃里さんを見て。

 謙太はもう呼ぶのやめようか、と帰した後に私に話してくれたけど今回はどうして迎え入れてくれたのだろうか。


 あのあと美濃里さんに何か言ったのかな。何か言ったとしたら気安く弟夫婦の家に入ることはないだろうけども。


 でも今は今後の謙太の運命がかかっている。嫌な思いしてでも彼女に付き合わなきゃいけない。


「姉ちゃん、辛いの苦手なんだよ。下の子はまだ普通のカレー無理。僕らは普通の中辛で」

 ああ、そうなんだ。甘口カレーは主に美濃里さんのためなのか。さすがきょうだい、好みはわかっている。そういうものなのね。


「あ、下の子の離乳食温められる?」

「うん。容器移し替えればいい?」

「そうそー。ラップしないと爆発するからね」


 謙太はニコニコと対応する。本当に誰に対してもその顔だ。鷲見さんに対してもそんな顔で接していたと思うと……。


「やっぱ嫌かな?」

 美濃里さんがあっちに行ったタイミングでそう声をかけてきた。いけない、嫌な顔してたかな。私は首を横に振った。


「僕が相手するから梨花ちゃんは明日仕事もあるし、ね」

「謙太さんだってあるじゃない。たまにはお姉さんとも話したいわ」


 と予想外なことを私がいうものだから謙太はびっくりしたがニコッと表情を変えた。

「あ、カレーかき混ぜなきゃ」


 私はずっと避けていた。謙太のお姉さんと話す、ということを。

 上の姉である美濃里さんが一番謙太を可愛がっていたみたいでその延長線上で謙太の妻として気を遣ってくれたけどやはり性格が合わなくて少しずつ避けていた。


 乗り越えなくては、乗り越えないと……。


 そしてカレーを食べ終え、子供たちは謙太がお風呂に入れるとのことだった。大丈夫なのかと思ったが美濃里さんが大丈夫よー、と言った。

「前もウチに来た時に入れてもらったし。きっといい父親になるよ。手際いいし」

……。


 でも彼が父親になれる確率はかなり低い。美濃里さんは知っているのだろうか。


 だって高熱出したのは絶対知ってるだろうし。


 美濃里さんはフーっとため息をついてお酒を少し飲んだ。

「どう、謙太とは」

 ……始まった。なにがどう、と言われても。


 ここで聞いてみるか、謙太さんのこと。


 でもストレートに聞けないからなぁ。


「仲良くやってますよ」

「謙太も自分からやってたからちゃんと分担してる感じだったわね」

「はい、助かってます」

「分担するものよ、一人に重くのしかかってはダメなのよ」


 少しまた説教くさくなるのではと思ってしまうと身が引けてしまう。


「あとは謙太との子供が欲しいなぁって」

それをいうと美濃里さんはハッとした顔をした。

「二人で病院行った?」

「まだです」

「私は一人で治療してなんとか授かって……元旦那はただ腰振ればいいだけだとか、嫌になっちゃう。本当はあいつも精子足らなかったんだから、運動量。片方だけの問題じゃないんだから」


 思いっきりうちの場合、謙太が原因なんだけども。美濃里さんは知らないのかな。


 でも私自身病院行ってないし。私にも原因があるかもしれない。そもそも私はセックスが嫌いだし。

 前の時にタイミング法でもうまくいかなかったからもっともっと調べなくてはいけないのだろう。でもまだ先でいいし、病院も行かなくてもいいよって謙太は私に種無しがバレたくなかったからなのだろう。


 私一人で病院に行ったほうがいいのか。でも1人の問題じゃないって……。

すると美濃里さんが私の顔を覗き込む。目が合った。

 そして彼女はさっきとは違った真剣な顔つきだった。


「まさかだけど。謙太言ってなかったのかしら」

「……」

「あの子、子供できない体なのに」

 知ってる。


「梨花ちゃん、知らなかった?」

 ここでは知らない、ということにしなきゃと私は頷いた。

 美濃里さんは頭を抱えた。


「梨花ちゃんには言ったって……病院も自分だけ行って検査して治療すれば治るよって……嘘だったのか」

 少し強張った顔。今までに見たことのない顔だ。てか嘘をついてた?! 美濃里さんにも?!


「ねぇちゃーん! お風呂出るよ!」

 風呂場から謙太の声。美濃里さんはハーイと答えた後。


「ねぇ、近いうちに2人きりで話したい。日程調整できる?」

……。

 どことなく美濃里さんの顔は青ざめていた。

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